ポイント
- 目的に応じて量子光のパルス波形を自在に制御する手法を、量子もつれを利用して開発しました。
- 本手法により、大規模光量子コンピューターの作動に必要な特殊なパルス波形を持つ量子光を生成しました。
- この成果は汎用性の高い「究極の量子光源」の開発につながり、光量子コンピューターを始めとするさまざまな量子技術の実現に貢献すると考えられます。
レーザーの発明が科学技術の発展に大きく貢献したように、優れた光源の開発は知的フロンティアを開拓する原動力になります。レーザー光を任意のパルス波形で出力する「任意波形発生器(AWG:Arbitrary Waveform Generator)」は現時点で最も汎用性の高い光源の1つですが、古典光であるレーザー光のみを扱うという性質上、量子技術への応用には限界があります。量子技術の開発という現代科学の重要な課題に挑むには、量子光を自在に出力する新しい光源が必要となるでしょう。
今回、東京大学の高瀬 寛 助教と古澤 明 教授らは、日本電信電話株式会社、情報通信研究機構、理化学研究所の研究チームと共に、あらゆる量子光を所望のパルス波形で出力する光源である「量子任意波形発生器(Q-AWG:Quantum Arbitrary Waveform Generator)」を提唱し、その核心となる技術である量子光のパルス波形を自在に制御する手法を実現しました。これにより、現在開発が進んでいる大規模光量子コンピューターの作動に必要な、特殊なパルス波形を持つ量子光の生成に初めて成功しました。今回実現したシステムの拡張により量子任意波形発生器を開発すれば、光量子コンピューターを始めとするさまざまな量子技術の実現に貢献する「究極の量子光源」になると期待されます。
本研究成果は、2022年10月28日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」(プログラムディレクター:北川 勝浩 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)研究開発プロジェクト「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発(JPMJMS2064)」(プロジェクトマネージャー(PM):古澤 明 東京大学 大学院工学系研究科 教授)、「ネットワーク型量子コンピュータによる量子サイバースペース(JPMJMS2066)」(PM:山本 俊 大阪大学 大学院基礎工学研究科/量子情報・量子生命研究センター 教授)による支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(567KB)
<論文タイトル>
- “Quantum arbitrary waveform generator”
- DOI:10.1126/sciadv.add4019
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