ポイント
- 光の力により、分子認識機構の一種である抗原抗体反応を加速する新原理を発見。
- レーザー光を3分照射するだけで数十アトグラムの極微量たんぱく質を検出可能。
- がん、認知症、感染症などさまざまな病気の超早期診断にも応用可能。
大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長らの研究チームは、生体中の分子認識機構の一種である抗原抗体反応の光誘導加速に関する新原理を発見しました。
本研究は、標的たんぱく質とこれに選択的に結合する抗体を修飾したプローブ粒子を人間の毛髪や細動脈と同程度の幅の流路に導入し、赤外レーザー光をわずか3分間照射することで従来のたんぱく質検査技術の約100倍の高感度の検出を可能とし、数十アトグラム(アトグラム=10-18グラム、100京分の1グラム)レベルでの迅速微量計測に世界で初めて成功しました。今回計測した最小濃度0.31ピコグラム・パー・ミリリットルのたんぱく質分散液の場合、濃度と測定領域を通過した液量(300ナノリットル)から換算して46.5アトグラム(約2600個)、つまり約2京分の1グラムの標的たんぱく質をわずか3分間で計測できたことに相当します。たんぱく質は遺伝子(DNA、RNA)のようにPCR法で増幅できませんが、狭小空間に閉じ込めてレーザー照射するだけの簡単な操作によって濃縮して反応を加速させることで、迅速かつ高感度に検出ができることを実証しました。
本研究成果は、2022年10月6日、「Communications Biology」にオンライン掲載されます。
本研究はJST 未来社会創造事業「低侵襲ハイスループット光濃縮システムの開発(JPMJMI18GA、JPMJMI21G1)」(研究開発代表者:飯田 琢也)、JST 創発的研究支援事業「バイオミメティック電極による外場誘導型エコシステムの創成(JPMJFR201O)」(研究代表者:床波 志保)、科研費基盤研究(A)(17H00856、21H04964)(研究代表者:飯田 琢也)、大阪府立大学 キープロジェクト(「LAC-SYSプロジェクト―次世代バイオフォトニクスが拓く未来―」)などの支援の下で実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(547KB)
<論文タイトル>
- “Attogram-level Light-induced Antigen-antibody Binding Confined in Microflow”
- DOI:10.1038/s42003-022-03946-0
<お問い合わせ先>
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大阪公立大学 大学院理学研究科/LAC-SYS研究所 教授/所長
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大阪公立大学大学院工学研究科/LAC-SYS研究所 准教授/副所長
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