ポイント
- 液晶中のトポロジカルな「ひも」である線欠陥の3次元運動を、欠陥の直接蛍光イメージングにより初めて観測した。
- 「ひも」同士がつなぎ替わる再結合という現象に着目し、3次元トポロジカル欠陥に特徴的な運動の様子を明らかにし、そのメカニズムを議論した。
- トポロジカル欠陥は、宇宙論や超流動、生物などさまざまな科学分野に現れ重要な役割を果たしているため、その普遍的な性質を明らかにすることは液晶だけにとどまらない意義がある。
指紋を眺めてみよう。おおよそ同じ方向に筋が走っているが、ところどころ渦巻や枝分かれ、馬てい形など向きがそろわない場所がある。そのような場所は、トポロジーに起源を持つため、トポロジカル欠陥と呼ばれる。同じように、細長い分子同士が互いに向きをそろえようとする液晶中でもトポロジカル欠陥が見られる。液晶で見られる「ひも」状のトポロジカル欠陥は、ジェットコースターのレールのように3次元的に曲がりくねったり、相互作用して動き回ったりする。このようトポロジカル欠陥のふるまいは、理学・工学両面から興味を持たれてきたが、その3次元構造を直接観測することは容易ではなかった。
東京大学 大学院理学系研究科の図司 陽平 大学院生と竹内 一将 准教授は、静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用できることを見いだし、トポロジカル欠陥の動きを3次元で捉えることに成功した。特に、トポロジカル欠陥同士がぶつかってつなぎ替わる再結合と呼ばれる現象に着目し、運動の様子を解析した。トポロジカル欠陥は液晶以外の研究領域にも広く現れる概念であり、今回の研究は分野を超えてトポロジカル欠陥の理解を深めることにつながると期待される。
本研究成果は、2022年10月3日(現地時間)に、「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載された。
本研究は、科学技術振興機構(JST) さきがけ「トポロジカル材料科学と革新的機能創出(研究総括:村上 修一)」研究領域における「液晶トポロジカル乱流の構造決定と負粘性材料科学の開拓(課題番号JPMJPR18L6)」のほか、日本学術振興会による科研費(課題番号JP19H05800、JP19H05144、JP20H01826、JP22J12144)、東京大学におけるJSRフェローシップおよびFoPM WINGSプログラムの支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Scaling and Spontaneous Symmetry Restoring of Topological Defect Dynamics in Liquid Crystal”
- DOI:10.1073/pnas.2207349119
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