ポイント
- 自動運転車の意図を周囲の道路利用者に伝えるために、モーター駆動で視線を提示できる「目」を付与した実験車両を製作しました。
- 当該実験車両を撮影した映像を使用したバーチャルリアリティー環境下の実験で、視線を使った意図提示によって歩行者による危険な道路横断を低減できる可能性を示しました。
- 本手法を自動運転車に対して適用することにより、事故のない安全な車社会の実現に貢献することが期待されます。
自動運転車の社会実装に向けては多くの研究開発が行われていますが、課題の1つに、周囲の道路利用者との意思疎通の難しさが挙げられます。人間の運転する車両であれば運転者とのアイコンタクトによってある程度、運転者の意思を推測できるのに対し、自動運転者ではそのようなコミュニケーションが取れず、道路利用者が自動運転車の意図を推測することが難しいからです。
東京大学 大学院情報理工学系研究科のチャン チアミン 特任講師、五十嵐 健夫 教授を中心とした研究グループは、自動運転車に付けた「目」による視線の提示によって自動運転車の意図を周囲の道路利用者に伝えることで、安全性を向上できる可能性があることを実験によって示しました。実験では、まず実物の自動車にモーター駆動で視線を提示できる「目」を付けた実験車両を製作しました。次に、その実験車両の走行を道路横断しようとしている歩行者の視点から撮影し、それをバーチャルリアリティー環境で実験参加者に提示しました。実験の結果、車両の視線によって自動運転車の停止・非停止の意図を歩行者に伝えることで、歩行者による適切な判断を助け危険な道路横断を低減できる可能性を示しました。
この研究成果は2022年9月17日から20日まで韓国ソウル市で開催される自動車とのインタラクション技術を扱う国際会議、ACM AutomotiveUI 2022(14th International ACM Conference on Automotive User Interfaces and Interactive Vehicular Applications)で発表されます。
本研究は、以下の事業・研究領域・研究課題の支援を受けて行われました。
科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域 | 「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開」 (研究総括:間瀬 健二 (名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター 特任教授)) |
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研究課題 | 「データ駆動型知的情報システムの理解・制御のためのインタラクション」 (JPMJCR17A1) |
研究代表者 | 五十嵐 健夫 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授) |
実験車両は、株式会社ティアフォーから貸与された車両です
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(529KB)
<論文タイトル>
- “Can Eyes on a Car Reduce Traffic Accidents?”
- DOI:10.1145/3543174.3546841
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
五十嵐 健夫(イガラシ タケオ)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 五十嵐研究室 教授
E-mail:takeois.s.u-tokyo.ac.jp -
<JST事業に関すること>
前田 さち子(マエダ サチコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:prestojst.go.jp -
<報道担当>
東京大学 大学院情報理工学系研究科 広報室(担当:土方)
E-mail:ist_pradm.i.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
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