ポイント
- 超流動ヘリウムという量子的性質を持つ流体中の渦(=量子渦)を、光技術によって半導体シリコンナノ粒子を用いて可視化することに成功。
- 自然界にある「渦」を理解するために、量子渦が注目されている。しかし、これまでは限られた手法でしか量子渦の実験ができなかった。
- 従来用いられてきた固体水素などの特殊な材料ではなく、半導体シリコンを含む多様な材料からなるナノ粒子による量子渦の可視化の可能性を示した。
- 半導体シリコンナノ粒子は光との相互作用が強いため、量子渦・ナノ粒子複合系の光による操作など全く新しい研究展開への道を開いた。
大阪大学 大学院基礎工学研究科の蓑輪 陽介 助教、大学院生の青柳 翔太さん(博士前期課程)、芦田 昌明 教授らの研究グループは、大阪公立大学 大学院理学研究科・南部 陽一郎 物理学研究所の坪田 誠 教授、大阪市立大学 大学院理学研究科の大学院生の乾 聡介さん(博士後期課程)らと共同で、超流動ヘリウム中の量子渦を、半導体シリコンナノ粒子を用いて可視化することに成功しました。これまで、超流動ヘリウム中の量子渦を可視化するためには、固体水素などの特殊な材料が必要とされてきました。
今回、蓑輪 陽介 助教らの研究グループは、光技術を極低温物理学研究へ導入することで、世界で初めて、半導体シリコンナノ粒子が量子渦の中心軸に捕捉されることを実証しました。また、この捕捉された粒子群を観察することで、量子渦の様子を可視化できるということが示されました。本研究手法は半導体シリコンに限らない多様な材料に適用可能であり、量子渦の研究に新たな展開をもたらすものです。
本研究成果は、米国科学誌「Science Advances」に、2022年5月5日(木)(日本時間)に公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「革新的光科学技術を駆使した最先端科学の創出」研究領域(研究総括:田中 耕一郎)における研究課題「光トラップ技術による量子流体力学の開拓」(課題番号:JPMJPR1909、研究者:蓑輪 陽介)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Visualisation of quantised vortex reconnection enabled by laser ablation”
- DOI:10.1126/sciadv.abn1143
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
蓑輪 陽介(ミノワ ヨウスケ)
大阪大学 大学院基礎工学研究科 助教
Tel:06-6850-6508
E-mail:minowamp.es.osaka-u.ac.jp
坪田 誠(ツボタ マコト)
大阪公立大学 大学院理学研究科 教授
Tel:06-6605-3073
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〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
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Tel:06-6850-6131
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大阪公立大学 広報課
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