【目標10】2050年の社会像(イラストレーション)
2050年はこんな社会になっているかも?
ムーンショット目標10が実現した2050年がどんな社会になっているのかを描いたイラストレーションです

フュージョンエネルギーは、社会の持続可能な発展を支える共有性の高いエネルギー源となることが期待されています。
共有性と持続可能性がもたらす世界平和
フュージョンエネルギーの燃料となる資源は、特定の国や地域に偏在することなく、世界中で利用可能なエネルギー源となる可能性があります。そのため、石油や石炭など化石燃料に見られるエネルギー資源の独占や国際的な対立や紛争が回避され、全世界の平和的な発展に寄与できます。
また、環境負荷が少ない、カーボンニュートラルなエネルギーとして、今後一層発展しようとする人類の活動を持続可能なものにする鍵の技術として期待されています。自然災害の増加や気候変動の深刻化を踏まえると、こうした持続可能かつ強力なエネルギーの確保は急務となっています。

求められる技術革新がさらなる発展を牽引する
フュージョンエネルギーを生み出す核融合とは、二つの軽い原子核が衝突して融合する反応です。融合してできた新しい原子核では、原子核内にある素粒子(クォーク)の結合状態がより安定(低いエネルギー状態)になることから、余ったエネルギーが放出されます。この反応エネルギーは莫大で、化石燃料の燃焼(酸化反応)で得られるエネルギーの約10万倍に相当し、実に1gの燃料で石油8トン分の熱エネルギーが発生できる計算になります。
この核融合を安定的かつ安全に起こしてフュージョンエネルギーを利用するには、多岐にわたる高度な新技術が必要です。超高熱に耐えられる新しい材料、大電流ビーム技術、超伝導技術、さらに複雑な装置を制御するAIなどです。こうした極限技術への挑戦は、フュージョンエネルギーだけでなく、宇宙開発や医療、さらには水素技術など、幅広い産業にも新たな可能性を生み出します。こうした観点から、広い分野を巻き込んだ人類の大きな挑戦として、様々な科学者・技術者が協力するプロジェクトとして推進されています。

未来のデジタル社会を支え、人間の活動圏を広げる
急速に発展するDX(デジタルトランスフォーメーション)が目指す高度なサイバー空間の構築には、膨大なサーバーを保有するデータセンターが必要です。そのエネルギー需要は今後急増し、IT産業におけるエネルギー確保が激化すると予想されています。これがDXとGX(グリーントランスフォーメーション)のジレンマです。
この問題を解決する決め手としてフュージョンエネルギーが期待されています。環境負荷が少ないフュージョンエネルギーが実用化されると、サイバー空間における仕事や遊び、スポーツによる交流、旅行や買い物など、人間のデジタル活動圏の拡大が、リアルな自然界と両立する未来が実現できます。

未来志向の社会構築と生活圏の拡大
フュージョンエネルギーは、単なるエネルギー供給の枠を超え、人類の積極的な未来開拓を牽引する技術として、次のような役割を期待されています。
ひとつは、安心・安全な未来を築くことです。世界各地で気候変動が引き起こしている様々な災害、地震や津波、さらには戦争や紛争による自然や都市の破壊などに対して、レジリエントな社会構築を支える基盤となることです。安定的で強力かつコンパクトなエネルギー源によって、様々な機械と情報システムが駆動できれば、被害が少ない街や産業を作ることができ、仮に被害があっても早く細やかな復興が実現できるようになります。また、エネルギー供給が偏在化せず、地産地消型のエコシステムが実現できれば、高い公平性のもとで多様な地域社会の発展につながります。
もうひとつは、新たな空間の開拓です。フュージョンエネルギーは、人類の活動圏を宇宙空間や深海などの未踏の領域へ拡大する駆動力となります。人間はハビタブルゾーン(生命居住可能領域)が狭く、暑さ寒さに弱く、一定の気圧、空気の環境、身体を維持するために多様な食料と水分の循環を必要とする生き物です。ありのままの自然にあらがって生きねばならない人間は、必然的に大きなエネルギーを消費する必要があります。フュージョンエネルギーという強力なエネルギーがあれば、人間の活動領域をより過酷な未踏の地へと拡大し、新たな価値を創造することができるのです。

お問い合わせ
国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部 目標10 担当
e-mail moonshot-goal10jst.go.jp