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2025/10/06
ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標10 プロジェクトマネージャー(PM)採択者一覧
ムーンショット目標10「2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現」
プロジェクトマネージャー(PM) | 研究開発プロジェクト名 |
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岡田 信二(中部大学 理工学部 教授) | 革新的ミュオン触媒フュージョン技術の社会実装 |
小澤 徹(早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 教授) | 核融合研究のパラダイムを刷新する数理モデルの定式化と解決法のイノベーション |
齋藤 晴彦(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授) | 超伝導ダイポールによる先進核融合と反物質科学の学際展開 |
田中 秀樹(信州大学 アクア・リジェネレーション機構 教授) | 核融合燃料サイクルの実現に向けた革新的同位体分離システムの開発 |
谷川 博康(量子科学技術研究開発機構 六ヶ所フュージョンエネルギー研究所 ブランケット研究開発部 次長) | コンパクト核融合炉を実現する自律型先進炉内機器の開発 |
藤岡 慎介(大阪大学 レーザー科学研究所 高エネルギー密度科学研究部門 教授/Blue Laser Fusionエネルギー協働研究所 所長) | 空間光蓄積型レーザーフュージョン発電炉 |
森 芳孝(株式会社EX-Fusion 取締役ファウンダー) | 青紫色半導体レーザーによる慣性核融合モジュールの構築 |
※研究開発プロジェクト名は、採択後の作り込み(提案した研究開発プロジェクトの見直しおよび具体化)を経て変更される場合があります。
<総評> PD:吉田 善章(東京大学大学院 特任教授)
2050年という私たちの未来が、地球環境と調和しながら活力ある社会となるために、フュージョンエネルギーという新しい技術を手に入れる——このことを目指して、ムーンショット目標10(以下、「MS10」)が2023年度に策定されました。フュージョンエネルギーの実用化は、70年余りにわたって世界中の研究者が挑戦してきた大きな夢です。その早期実現が求められる中、MS10は、研究開発を加速できる破壊的イノベーションを生み出す役割を担っています。この重要な任務を遂行するために、幅広い分野に協力を呼びかけ、これまでにない視点から研究開発に挑戦しています。
昨年から開始された3件のプロジェクトは、フュージョンエネルギーの実用化のために必須の共通的課題について、ゲームチェンジャーとなる革新的技術の開発を目指すものであり、様々な分野から優秀な研究者を巻き込んで強力なチームを編成しています。しかし、フュージョンエネルギーの実用化には、多数の未踏技術を束ねた複合的な技術体系を創りあげることが必要であり、現行3プロジェクトではカバーしきれない重要課題があります。それらをポートフォリオに加えてMS10を強化するために、今回新たにプロジェクトマネージャー(PM)の公募を実施しました。
今回の公募において強調した点は、プロジェクトの十全性よりも挑戦性です。プロジェクトの開始時点では必ずしも全ての課題を網羅して取り組むことは求めず、最も中核的かつ困難な課題に集中して取り組み、その解決によって新しい展望を開く「一点突破・全面展開」の戦略を推奨しました。また、異分野からの参画においては、核融合分野において良い意味での「アマチュア」すなわち専門分野を覆う常識にとらわれず斬新な発想をもつ挑戦者と、高い研究技術と豊富な経験をもつ「プロ」が協働するチームを作ること、研究施設の面でも我が国が共同研究機関等に整備してきた世界屈指の装置を有効利用することにより、効率的かつ合理的な研究推進を構想することを推奨しました。こうした「マッチング」を促進するため、本年4月に2日間にわたり研究交流会を開催しました。
今回も様々な分野から29件の応募がありました。選考にあたっては、プラズマ・核融合学、物理学、レーザー科学、化学、数理科学、天文学など幅広い学術分野と産業界から11名の有識者にアドバイザー(選考委員)として協力していただきました。審査においては、上記の公募趣旨に合致した計画になっているか、独創的かつ挑戦的な提案であるか、しっかりした科学技術的な「勝ち筋」が描けているか、目指す研究成果が確実に研究開発機関あるいは産業界へバトンタッチされ2050年の未来像へ繋がるビジョンが描けているか、コストおよび安全性の面で十分な社会受容性を有する技術に育つか、これらの多角的な観点から厳密な評価を行いました。書類審査、1次面接審査、2次面接審査を経て、最終的に7件のPMおよび研究開発プロジェクトを採択しました。
新たに採択された7件のプロジェクトは、いずれもMS10の趣旨に合致した革新的な研究開発計画であり、マイルストーンの挑戦性と具体性が高く評価されました。他方、今回採択に至らなかったプロジェクト提案の中にも、独創的で魅力的な要素研究が多くありました。これらの優れた要素研究については、必要に応じて、採択されたプロジェクトの傘下で参画していただく可能性があります。
なお、今回採択された7件のプロジェクトについては「一点突破・全面展開」のシナリオが実現するよう、研究開始から2年間の成果に基づきステージゲート評価を実施します。この評価に際しては、幅広い分野の専門家が参加する国際ワークショップをPDが主催し、その時点で確立した客観的な知見と将来展望を取りまとめて公開します。ステージゲート評価を通過したプロジェクトについては、全面展開を期した総合的な研究開発段階へと移行させる計画です。このステージゲート評価は、同時に、フュージョン研究の現在の到達点と未来を俯瞰できる、最新かつ最善の科学知を整理するものとなることを目指します。
フュージョンエネルギーの多面的な応用を目指し、MS10は革新的な技術の開発に挑戦します。本事業は、研究・開発を担う研究者・開発者とともに、ユーザー、すなわちプロジェクトが生み出す新しい知識や技術あるいは交流の場を利用する人たちが一体となって発展すべきだと考えています。今後も、様々なステークホルダーの積極的な参加を期待します。