低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2022-SR-01

[調査報告書] 廃プラスチックのガス化処理の価値と課題
―回収モデルとガス化プロセスの設計と評価―

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 日本の2020年の廃プラスチックは、70%が焼却処理され、16MtのCO2が排出された。原材料へのリサイクルは、24%に留まる。これからの再生可能エネルギーへの移行にあわせて、廃プラスチックの処理も、原材料へのリサイクルに移行すべきである。本報告では、2030年の横浜市を想定した年間52,000tのプラスチック製容器包装を回収して、10,200tの水素を製造するプロセスを設計することで、原材料へリサイクルできない廃プラスチックのサーマルリサイクルに替わり得るガス化処理の価値と課題を検討した。

 最初に、各家庭から排出されるプラスチック製容器包装を無償で回収し、RPF加工してガス化プラントへ輸送するモデルを作った。そのモデルから、RPFコストは10.4円/kg、回収・加工・輸送にともなうCO2排出量は31.5g-CO2/kg-RPFである。次に、ガス化プロセスを設計した。エネルギー変換率は62%である。CO2捕集していない水素コストは1.5円/MJ-H2であり、IEAによる2030年の水素コスト予想(1.6円/MJ-H2:最善の立地での風力発電および太陽光発電による水の電気分解法)に比べて競争力が低い。CO2排出量は15kg-CO2/kg-H2であり、低炭素水素基準3.4kg-CO2/kg-H2の4倍以上である。
 廃プラスチックのガス化処理は、新たな化石資源を消費せずに水素を生産できるという価値がある。回収熱の再利用率を上げ、プロセス温度を下げることにより、水素コストを改善できる可能性がある。しかし、原料中のCは全量CO2として排出され、低炭素水素基準を大きく超える。

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