低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2021-SR-01

[調査報告書] 鉄リサイクルを利用した将来低炭素社会のための課題検討にむけて
―2020年東京五輪施設のリサイクル鋼材利用とCO2排出実績―

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概要

 近年の五輪は、環境に配慮した運営が行われるようになり、温暖化防止のためにCO2排出削減の取組が行われている。鉄鋼は建設に必須な材料であるが、製造時のCO2排出量が多い材料でもある。そこで我々は東京大会やその他の五輪の施設建設に使用された鉄鋼量、CO2排出量の少ないリサイクル鋼材割合、CO2排出量を比較することにした。東京都で策定したチェックリストの有効性を調べた。

 東京大会の全競技施設の鉄鋼使用量は124,000t、CO2排出量は162,000t、ロンドン大会で、35,000t、62,000tであった。東京スタジアムと他のスタジアム(ロンドン、北京、シドニー)を比較した結果、東京スタジアムは北京スタジアム(100,000t)に次いで鉄鋼使用量が多かった。要因には、日本は地震国であるため耐震性を高め、東京スタジアムは大きな屋根をつけ、複雑な構造の建造物としたためであった。
 チェックリストを適用した東京都の施設(スタジアムは入っていない)の鉄鋼量は55,000t、CO2排出量は59,000tで、リサイクル鋼材の使用割合が62%と高く、単位鉄鋼量当たりの排出は1.08tCO2/tとなり、ロンドン大会の1.77tCO2/tに比べて低かった。
 「東京都 環境物品等使用予定(実績)チェックリスト」はリサイクル鋼材の利用を促し、排出を削減するために有効であることが分かった。将来の五輪のホスト都市がこのような「チェックリスト」を大会の全施設に適用することが望ましい。今後、国内の大規模建設現場での「チェックリスト」の利用は、CO2排出を削減するために有用であることが分かった。

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