

○戦略目標「異分野融合による自然光エネルギー変換材料及び利用基盤技術の創出」の下の研究領域
「光エネルギーと物質変換」
研究総括:井上 晴夫(首都大学東京大学院都市環境科学研究科 研究科長)
研究領域の概要
本研究領域では、人類にとって理想的なエネルギー源である太陽光による広義の物質変換を介して、光エネルギーを
化学エネルギーに変換・貯蔵・有効利用し得る高効率システムの構築を目指した、独創的で挑戦的な研究を対象とします。
具体的には、半導体触媒や有機金属錯体による光水素発生、二酸化炭素の光還元、高効率な光捕集・電子移動・電荷分離・電子リレー系、
光化学反応場の制御、水分子を組み込んだ酸化還元系、ナノテクノロジーを駆使した光電変換材料、高効率光合成能を有する植物、藻類、菌類
などの利用技術、光を利用したバイオマスからのエネルギー生産、光合成メカニズムの解明などが含まれます。
光化学、有機化学、材料科学、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなど幅広い分野から、将来のエネルギーシステムへの展開を
目指した革新的技術に新しい発想で挑戦する研究を対象とします。
研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針
人類が利用し得るエネルギー源として短期的には化石資源や原子力に焦点を絞らざるを得ない状況の一方で、数十年以上の長期的視点からは、
太陽光がエネルギー源の本命となることが強く期待されながら、その実現のためには多くの課題が残されています。科学者には、人類・社会からの
極めて大きい期待があります。科学者がその解決策を提示できなければ人類は危機に陥ることになってしまいます。「さきがけ」に応募される
研究者には人類の危機を救う気概をもってこの課題に挑戦していただきたいと思います。
本研究領域では、これまでに蓄積された科学技術やその組み合わせを超えて、現時点では実現性が判断しがたいアプローチや提案に見えても、
将来のエネルギー問題を解決するブレークスルーとなる可能性を秘めた独創的で挑戦的な研究提案に注目します。社会が期待する極めて優れた
若手研究者が、現在エネルギー分野での研究実績がなくとも、自身が持つ異分野の卓越した科学方法論を武器に柔軟な発想力、独創性をもって
人類のエネルギー問題の解決を目指して挑戦、参入することを期待します。
ブレークスルーは一般には予測しないところから出てくることが多いことは科学の歴史が示しています。本研究領域では、植物学、生化学、
生物物理、構造生物科学、光化学、有機合成化学、触媒化学、界面化学、物理化学、高速計測化学、錯体化学、ナノ材料化学、電気化学など
様々な研究分野での方法論を駆使して、将来の社会システムに組み入れられるような光エネルギー変換技術を材料、原理、構造等の観点から探求する
独創的な研究提案に注目します。
また、見かけの研究実績以上に、独創性、課題を発見しようとする挑戦的研究姿勢など研究者の個性、「ひと」を重視します。
研究領域の運営においては、国際連携を重視し、異分野の卓越した研究者間での様々な方法論、異なる発想、アプローチに触発された
自由な研究を推進していきます。