戦略的創造研究推進事業

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募集要項

III.「研究領域の概要」、および「研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針」

【CREST】
○戦略目標「精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出」の下の研究領域

「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」

研究総括:樋口 輝彦(国立精神・神経センター 総長)

研究領域の概要

 本研究領域は、少子化・高齢化・ストレス社会を迎えたわが国において社会的要請の強い認知・情動などをはじめとする高次脳機能の障害による精神・神経疾患に対して、脳科学の基礎的な知見を活用し予防・診断・治療法等における新技術の創出を目指すものです。
 具体的には、高次脳機能障害を呈する精神・神経疾患の分子病態理解を基盤として、その知見に基づく客観的な診断及び根本治療に向けた研究を対象とします。例えば、生化学的もしくは分子遺伝学的観点から客観的な指標として利用可能な分子マーカーあるいは非侵襲的イメージング技術など機能マーカーを用いた診断法の開発、遺伝子変異や環境変化などを再現した疾患モデル動物の解析、根本治療を実現するための創薬に向けた標的分子の探索・同定などが研究対象となります。
 なおこれらの研究を進めていく上では、疾患を対象とした臨床研究と脳科学などの基礎研究、精神疾患研究と神経疾患研究、脳画像などの中間表現型解析研究と遺伝子解析研究など、異なる研究分野や研究手法の有機的な融合をはかる研究を重視するものです。

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研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針

 高度なストレス社会・高齢化社会である現代日本では生涯を通じて5人に1人が何らかの精神・神経疾患に罹患していると言われ、大きな社会問題にもなっている。本研究領域の目的は、高次脳機能障害を呈する精神・神経疾患の病因・病態を明らかにし、科学的根拠に基づく診断、治療法開発に向けて新技術の創出を行うことにある。
 精神疾患の場合は、一部に有力な遺伝子が発見されているものの、単一遺伝子で規定されている可能性は低く、多因子が関与すること、疾患自体を遺伝子が規定する可能性よりも脆弱性を規定する遺伝子が存在し、その遺伝子と環境の相互作用によって発症が規定される可能性が高いことなどがあり、単純ではない。そこで、アプローチの方法を変則的なやり方、すなわち、例えば遺伝子解析の結果を得る前に、診断技術を確立する、その成果により異種性の問題をとりあえず整理し、病態研究を行う、あるいは対象を絞りこんだ上で遺伝子解析を行うなど、変則的なアプローチを行いながら、本質に迫らざるを得ないと思われる。
 一方、神経疾患の場合は精神疾患と様相が異なる。多くの神経難病では、すでに単一遺伝子が特定され、機能、行動、代謝の異常のもとになる病因が同定された。これからは、本格的な治療法の研究が主体になるものと思われる。したがって、神経疾患の場合は、病因、病態、分子プロセスを基盤としてモデル動物を使ってトランスレーショナル・リサーチの段階に持って行くことが中心になる。原因分子の同定、神経変性のメカニズムの解明、この変性過程をブロックする根本治療法の開発などが具体的なテーマになる。
 そこで、本研究領域においては、例えば遺伝子解析と中間表現型の両者を同一個体において検索し、その関連を検討するなどの手法を歓迎し、すでに行われている単独の方法論のみで従来の方法を越えていない手法はあまり評価しない方針である。また、本研究領域で行う研究の終局的な目的が病態解明、診断技術の開発、新たな治療法の発見にあるので、正常の脳機能の解明は一義的目標にはならない。あくまでも病気の脳の研究であること、さらに基礎的な研究から出発する場合には、診断法や治療法の開発に結びつけるロードマップを明示してほしい。また、疾患研究なので、どの疾患を想定して行う研究かも明示されたい。
 戦略目標にあるように、対象とする疾患分野は精神疾患と神経疾患の2分野である。この2分野は臨床的には性質を異にするところが大であり、基礎・臨床研究の到達レベルにも開きがあるが、高次脳機能解明という観点からみると共通する部分も多い。2つの分野がそれぞれの分野のみで研究を進めることは勿論だが、加えて両分野間の交流や共同作業を行うことが重要である。可能であれば、両者が共通の課題を計画し、両面からアプローチして新たな研究領域を開拓してほしい。
 なお平成20年度においては、平成19年度に採択された疾患分野以外の疾患分野を中心に採択したが、平成21年度は採択の最終年度であり、特に疾患分野を限定せずに採択する予定である。

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