戦略的創造研究推進事業

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募集要項

IV.戦略目標

「運動・判断の脳内情報を利用するための革新的要素技術の創出」
(平成20年度設定)

1.戦略目標名

 運動・判断の脳内情報を利用するための革新的要素技術の創出

2.本戦略目標の具体的な内容

 運動や判断を行っている際の脳内情報を解読し、外部機器や身体補助具等を制御するブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)は、障害等により制限されている人間の身体機能を回復・補完するためのイノベーション創出に貢献する研究分野である。
 そのため、本戦略目標では、BMIの開発に必要となる脳の活動から情報を読み出す脳情報解読技術、得られた脳内情報をもとに外部機器等を制御する機器制御技術、外部情報の脳へのフィードバック技術等を実現するための従来にない革新的な要素技術の創出を目標とする。

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3.政策上の位置付け

 第3期科学技術基本計画におけるライフサイエンス分野の「生命プログラム再現科学技術」、「臨床研究・臨床への橋渡し研究」、及び情報通信分野の「世界に先駆けた家庭や街で生活に役立つロボット中核技術」と密接に関連する。
 基礎的な脳の動作原理に迫る基礎研究への展開と理解を背景とした重要技術の開発の両面から、本戦略目標は、脳高次機能の統合的理解(生命プログラム再現科学技術)や神経義肢の開発等を通して、人の医療技術開発(臨床研究・臨床への橋渡し研究)に直接関わるものである。また、人の判断を取り入れた制御技術の開発(世界に先駆けた家庭や街で生活に役立つロボット中核技術)として重要であり、こうした戦略重点科学技術と深く関連がある。
 長期戦略指針「イノベーション25」及び「新健康フロンティア」等の報告書においても、失われた身体機能の補完・拡張技術として、本戦略目標と同様の技術開発が必要とされている。

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4.当該研究分野における研究振興方策の中での本研究事業の位置づけ、他の関連施策との切り分け、政策効果の違い

 脳科学関連の施策としては、平成19年度戦略目標「精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出」、平成20年度新規事業「脳科学研究戦略推進プログラム」が挙げられる。
 平成19年度戦略目標「精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出」は、精神・神経疾患の予防、診断、治療法開発に資する研究を推進するものである。そのため、運動・判断の脳内情報を利用した外部機器制御等に資する革新的要素技術の研究を推進する本戦略目標とは異なる。
 また、平成20年度新規事業「脳科学研究戦略推進プログラム」は、脳内情報の解読と機器接続等に関する応用技術、計算論的神経科学、脳型情報システム等の開発を行う「脳に学ぶ」領域等において、優れた実績や他機関を支援する能力を有する大学、独立行政法人、民間企業等から公募により研究拠点(中核機関と参画機関で構成)を整備し、戦略的に研究開発を推進することにより、これまでに得られた研究成果を確実に医療・福祉・教育・産業等につなげ、社会ニーズへの還元を加速させることを目的としている。そのため、従来にない革新的要素技術の創出を目的としている本戦略目標とは異なる。
 なお、本戦略目標の研究実施に当たっては、科学技術・学術審議会脳科学委員会における議論を踏まえ、上記の考え方を基に他の研究事業との役割分担を明確にしつつ推進体制を構築する。

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5.この目標の下、将来実現しうる成果等のイメージ、他の戦略重点科学技術等に比して優先して実施しなければならない理由、緊急性、専門家や産業界のニーズ

 ヒトの体から得られる生体信号を活用して外部機器を制御する技術、例えば個人を特定する生体認証技術や筋電信号に基づくロボットスーツ等が社会に認知されつつある。このような状況の中で、脳内情報を解読し外部機器等を制御するBMIの開発が、近年、米国を中心に急速に発展してきている。
 高齢化社会が進む我が国において、BMIは身体機能の低下を補助あるいは回復する技術として優先して実施すべき課題であり、また、計算論やロボティクスの強みを生かし、我が国が世界をリードできる研究分野である。
 本戦略目標の研究開発で創出される革新的要素技術により、考えたとおりに動作する義手・義足等の高機能福祉機器が開発され、例えば、脊髄損傷患者の歩行を可能にし、脳卒中等による半身麻痺からの神経リハビリテーションによる回復が望めるなど、現在の技術では回復できない疾患等による身体的な障害の克服に寄与するものと考えられる。現在、脊髄損傷に限っても、日本国内には約10万人に及ぶ対象者がおり、そして毎年約5千人の受傷者が新たに生じている(「日本せきずい基金」資料)。
 また、こうした身体機能を補完・強化する技術は、加齢に伴う自然な身体機能の低下を補助する技術にもつながるものであり、社会的な負担が大きい介護を軽減することに貢献する。さらに、手足の運動のみではなく、明瞭な会話の支援、全身麻痺患者の意思の伝達などのコミュニケーションを実現する手段としても期待されるものである。

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6.本研究事業実施期間中に達成を目指す研究対象の科学的裏付け

 脳活動から信号を読み出す技術については、非侵襲型の読み出し技術として脳波計測以外に近赤外線計測技術を組み合わせた技術開発の進展が著しい。
 得られた信号から必要な情報を解読(デコーディング)する技術については、ベイズ推定を用いたデコーディング技術が機能的MRIからの信号について実現されつつあり、他の計測可能な脳からの信号にもこのような推定手法が適応できることが期待され始めている。
 得られた脳内情報をもとに外部機器等を制御する技術については、特に手の運動や歩行を代替するロボットの制御技術の発展が本戦略目標の達成に寄与できるものと考えられる。さらに、運動生理学や機能的電気刺激に関する基礎的研究成果が活用されるものと期待される。
 外部情報を脳へフィードバックする技術については、脳の可塑的変化に関する計測技術の発展と基礎的知見の蓄積が進んでおり、また、聴覚、視覚、触覚などの感覚情報を高感度に計測し、必要な情報に加工する技術に関する研究が進展してきている。
 本戦略目標により従来にないアイデアを引き出す研究開発が形成されれば、既存技術の単なる改良ではない独創的技術開発が伸展することが期待される。また、個々の要素研究に関する研究者は我が国に多く存在しており、そうした研究者の中から従来にない発想による革新的な研究開発提案が数多くなされることが想定される。

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7.この目標の下での研究実施にあたり、特に研究開発目標を達成するための留意点

 本戦略目標を達成するためには、臨床医学、基礎医学、生物学、工学、情報学など多方面の研究者の協力が不可欠であり、学問分野を超えた連携が必要となる。また、研究の実施に当たっては、倫理的側面など社会との調和に配慮しつつ推進していく必要がある。さらに、本戦略目標を効果的に運営していくため、研究総括は「脳科学研究戦略推進プログラム」と連携し研究管理運営を行う必要がある。

(参考)本研究事業実施期間中に達成を目指す政策的な目標

 本戦略目標の下に、障害等により制限されている人間の身体機能を回復・補完するためのイノベーションを創出するために必要な技術としては、脳の活動から情報を読み出す脳情報解読技術、得られた脳内情報をもとに外部機器等を制御する機器制御技術、外部情報の脳へのフィードバック技術等がある。本戦略目標の研究実施期間中の研究開発目標としては、BMIの実用化に向けて必要となる上記技術等を実現するための革新的な要素技術の創出を目指す。

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