戦略的創造研究推進事業

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募集要項

IV.戦略目標

「生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出」
(平成18年度設定)

1.名称

 生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出

2.具体的な達成目標

 本戦略目標は複雑な生命システムの動作原理を検証可能な程度に理解し、検証過程で創出されるツールやソフトウエアなどが医療、バイオエンジニアリングなどの分野で活用される基盤技術となることを目標とする。
 具体的な達成目標としては、以下のような研究開発例が挙げられる。
(ア)生命システムを制御する動作原理を明らかにするためのモデル系。
(イ)生命システムの分子機構の動特性を把握するためのイメージング、網羅的解析などの計測・測定技術。
(ウ)生命システムの時空間動態の計算機シミュレーション技術。
(エ)これらの基盤技術を活用した薬剤、ワクチンや生物生産技術、疾患の予防、診断、治療技術や生体機能の解明に資する技術。

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3.目標設定の背景及び社会経済上の要請

 ヒト・ゲノム計画が終了した後、世界的にその成果を医療やバイオテクノロジーなどに向けたイノベーションにつなげていくことが喫緊の課題となっている。一方、医療の分野では一つの遺伝子が原因となって発症する疾病について、血友病など主要なものはその原因遺伝子の解明がなされつつあるが、例えば、がんや生活習慣病といった複数の遺伝子や環境要因が関与する疾患については、複雑に関係する機能分子からなる生命システムのどのような振る舞いが疾病の原因につながるのかを研究する方法論が充分ではなく、その開発と効果的な治療法への応用に対する要請は高まっている。
 本戦略目標は生命システムを構成する機能分子の時空間動態の解析により動作原理を明らかにして、その成果を疾患の予防、診断、治療やバイオエンジニアリングなどにおいてイノベーションの創出につなげることを狙いとするものである。例えば、作用メカニズムがある程度判っている複数の薬剤の時間的特性変化の解析から複数の薬剤投与シミュレーションや診断や治療に有効な新規なバイオマーカーの探索などが期待され、代謝機能の制御メカニズムの解明により生物生産に利用する微生物や植物等を利用した効率的な生産法の開発などが期待される。既に、例えば、心臓に対する複数の薬剤の反応性のシミュレーション技術が英国ケンブリッジ大学で開発され、米国FDAにおいて安全性試験への使用が許可されている。しかしながら、このような生命システムの動作原理の解明と活用を可能とする技術はまだ少なく、その開発が望まれている。

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4.目標設定の科学的裏付け

 21世紀における生物・医学研究においては、ゲノムからスタートして細胞や器官、個体や個体間など様々なレベルで生命現象を統合的に理解する研究の方向性が重要となっている。このため、数理モデル、生命機能の再構築、シミュレーションなどの様々な研究アプローチが試みられており、それらの中でも、今回の目標に係る生命システムの研究はモデル化、イメージング、シミュレーション、網羅的解析などの研究アプローチが組み合わさった手法であり、生体機能を理解し、制御するための定量性と予測性を実現することを狙いとする研究領域である。このような研究領域は従来のライフサイエンス研究の手法に加えて、理論生物学、計算科学、数学、物理学などの知識を必要とし、また、新たな計測・測定技術、微細加工技術、コンピュータなどの新しいツールを必要とする。特に後者はライフサイエンスエンジニアリングのイノベーションにつながる技術やソフトウエアを創成するものと期待されている。
 生命システムの研究の歴史は比較的浅いが、日欧米でほぼ同時期に研究が始まっている。米国では政府、民間レベルでの研究が急速に進展しており、欧州でもEU及び独、スイス、英国で研究プロジェクトが推進されている。日本は米国についで優位な状況にあるが、政府レベルの研究推進施策が欧米に比べて十分でない状況が伺われる。本分野の研究を推進し、かつ、分野全体の研究人材の育成や研究推進のための活動(国際会議の主催など)を同時に推進することにより、我が国の科学・技術の国際的地位の向上にもつながるものと期待される。

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