水の循環系モデリングと利用システム

 

第3回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

鈴木雅一研究チーム


P071 インドシナ半島の転倒升雨量計網展開
P072 東南アジア降水量の日周・季節・年々変動
P073 タイ北部の落葉性チーク人工林の着葉期間・蒸散期間の年々変動
P074 タイ北部の丘陵性常緑林における樹冠遮断量(その1)
タイの丘陵性常緑林における霧が水収支の及ぼす影響の検討(その2)
P075 サラワク熱帯雨林における樹冠遮断量(その1)
熱帯林の林分構造パラメーターの推定(その2)


 
P071 インドシナ半島の転倒升雨量計網展開
松本淳(首都大)、木口雅司(東京大)、横井覚(東京大)、里村雄彦(京都大)

・タイ
 3-4月にかけてMae Sariang,Chaing Mai, Uttaradit,Loeiの4地点に転倒升雨量計を設置した。
・ミャンマー
 5月に気象水文局に依頼して3地点分の転倒升雨量計のデータを回収したが、電池切れなどのトラブルにより、一部欠測を含むデータとなっている。降水のピーク時刻の季節変化については興味深い結果が得られる見込み。
・ラオス
 昨年8月ほぼ北緯18度上のVientiane,Paksane,Lak20の3地点に転倒枡雨量計を展開し,Vientiane,Paksaneにおいて観測を開始した.Lak20においては,12月から観測を開始した.Paksaneについては,Vientianeからリモートアクセスできるシステムを構築した.データは順次取得されているが,Lak20では,一部欠測が発生している.また,8月12日夜に発生した落雷により,Paksaneのシステムに被害が出たという報告をラオス気象水文局から受けており,今後測器の修理・交換を早急に行う必要がある.
・ベトナム
 昨年度までに設置した4地点においてデ-タの回収した。現地現業機関で計測している月平均雨量との比較では、Hiep Ducではほぼ一致しており、順調にデ-タが記録されていると考えられる。欠測、異常データが含まれている他の地点のデータチェックを今後おこなっていく。

 
P072 東南アジア降水量の日周・季節・年々変動
蔵治光一郎(東京大)・五名美江(東京大)・
Kowit Punyatrong(タイ天然資源環境省国立公園野生動植物保全局)

1)サラワク州ランビル国立公園周辺における海岸からの距離と降水特性の関係
 ランビルと最寄りの海岸を結ぶ線上に3つの雨量計を配置して1年間の観測を行い、降水量の日周変動が把握された。
2)北ボルネオ・サラワク州における降水量季節変動の空間分布と季節区分
 マレーシア・サラワク州を対象とし,灌漑排水局により17地点において41年間にわたり観測された日降水量データセットを用いて降水量の季節変動パターンとその空間分布特性を把握した。
3)北ボルネオ・サラワク州における季節降水量年々変動とエルニーニョとの関係マレーシア・サラワク州を対象とし,灌漑排水局により17地点において41 年間にわたり観測された日降水量データセットと東西太平洋のSSTを用いて、季節降水量の年々変動とエルニーニョとの関係を把握した。
4)タイ・メーチャム流域における降水量標高依存性の長期変動
 タイ・メーチャム流域は,Kog-Ma流域の西約50kmに位置し,タイ最高峰(標高2,650m)を含む山岳流域であり,雨季と乾季が明瞭な熱帯モンスーン気候下にある。1998〜2006年の9年間のデータが得られ,山岳地域の降水量日周・季節・年々変動の特性が明らかになった。

 
P073 タイ北部の落葉性チーク人工林の着葉期間・蒸散期間の年々変動
吉藤奈津子(JST)、田中延亮(JST)、鈴木雅一(東京大)、
Chatchai Tantasirin(カセツァート大)

 落葉林では、着葉期と落葉期で熱・水・炭素収支バランスが大きく変動する。本研究では、フィールド観測で得られた日射の樹冠透過率と樹液流の時系列データと、衛星NDVIデータを用いて、タイ北部の落葉性チーク人工林における8年間の着葉期間・蒸散期間の年々変動を調べた。その結果、着葉期間の長さは50 日以上、蒸散期間の長さは約60日も変動していることが分かった。降雨に伴う土壌水分変化の違いがこのような大きな年々変動をもたらす主要な要因であると考えられる。この年々変動は温帯落葉林での既往の報告に比べて大きく、蒸散量や光合成量が大きく年々変動している可能性が考えられる。

 
P074 タイ北部の丘陵性常緑林における樹冠遮断量(その1)
田中延亮(JST),蔵治光一郎(東京大),鈴木雅一(東京大)

 インドシナ半島の多様な熱帯モンスーン林のうち,標高1,000m以上に分布するもんは丘陵性常緑林と呼ばれる.本研究では,タイ北部の丘陵性常緑林において,4年間の降水量,林内雨量,樹幹流下量を日単位で測定し,同森林の樹冠遮断蒸発量を求め,蒸発散モデルの出力値の検証に用いた.また,同森林における年降水量に対する樹冠遮断量の割合(樹冠遮断率)は,4年間において7-12%の間で年々変動した.同地域の低地熱帯モンスーン林の樹冠遮断率の多くは 20%を超えることを考えると,丘陵性常緑林は比較的樹冠遮断率の小さい森林タイプであることがわかる.また,日単位の樹冠遮断量が負の値となるケースが存在することがわかり,その原因について考察した.

  タイの丘陵性常緑林における霧が水収支の及ぼす影響の検討(その2)
田中延亮(JST),蔵治光一郎(東京大),瀧沢英樹(日本大),
吉藤奈津子(JST),久米朋宣(九州大/東京大),鈴木雅一(東京大)

 霧が発生する熱帯山地林の水文過程の記述には,霧による樹冠部への水分供給プロセスを考慮することが不可欠である.霧が熱帯山地林の水文過程に及ぼすの研究は,主に貿易風が卓越する中米地域の熱帯山地林における研究によって主導されてきたが,アジアモンスーンの影響下にある熱帯山地林での研究事例は非常に少ない.そこで,タイ北部の丘陵性常緑林において霧が同森林の水収支に及ぼす影響を検討した.観測データの解析に先立って,霧観測に用いた霧ゲージの性能評価をおこなった.ここで評価された霧ゲージは,熱帯山地林での霧モニタリングに用いられるスタンダードなものの一つであるため,ここでの性能評価の結果は今後の熱帯山地林の霧研究に役立つものである.現地観測の結果からは,霧発生の発生時間数は降水発生時間数と同程度であることがわかった.降水と同様に,樹冠面を濡らす要因として,霧が重要な役割を果たしている可能性を示唆するものである.また,これらの霧発生は,主に降雨イベントに前後して発生しており,結果として雨季に卓越する季節性を示した.さらに,霧による樹冠部への水分供給量は,年降水量の9%-12%の範囲であると推定された.また,同試験地において別途行った日単位の樹冠遮断量の観測結果のうち,日単位の林内雨量が降水量を上回る現象の多くが,霧による樹冠部への水分供給によって説明できることがわかった.

 
P075 サラワク熱帯雨林における樹冠遮断量(その1)
Mnfroi Odair Jose、蔵治光一郎(東京大、鈴木雅一(東京大)

 サラワク州ランビル国立公園の低地フタバガキ林の樹冠遮断量が、3年間の560地点の林内雨量計測などから、4haの林分平均値として推定された。3年間の観測に基づく4ha全体での降雨量に対する樹冠通過雨量、樹冠流下量、樹冠遮断量の割合は、それぞれ88%、3.5%、8.5%となり、得られた樹冠遮断量は、210mm/年である。4haの中に設けられた10m×10mの固定調査区及び移動調査区内の樹冠通過雨量は、樹木の配置と樹冠の重なり方で変動し、10m×10m調査区毎に求めた樹冠遮断量は樹木の現存量(バイオマス)が大きい区画ほど大きかった。樹冠遮断量が、固定調査区で年降水量の12%、 295mm/年、4ha全体では8.5%、210mm/年とかなり差があるのは、固定調査区における樹木現存量のためであり、空間代表性を持つ値が4ha 調査区推定値から得られた。

  熱帯林の林分構造パラメーターの推定(その2)
久米朋宣(九州大/東京大),Odair Jose Manfroi,田中延亮(JST)

 樹液流測定から遮断蒸発が生じる時間(樹冠濡れ時間)を特定し,遮断蒸発量推定に必要な林分構造パラメーターの決定法を開発した.本法によって熱帯雨林,常緑熱帯季節林,チーク人工林の3つの森林で適切なモデルパラメータを決定することができ,本法が多様な森林に適用可能な実用性の高い方法であることを明らかにした.




矢印このページの先頭へもどる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Copyright(C)Japan Science and Technology Agency.All Rights Reserved.