水の循環系モデリングと利用システム

 

第3回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

神田学研究チーム


P041 屋外模型都市を用いた気象実験と都市エネルギー収支モデル(SUMM)の構築
P042 屋外準実スケールモデルで観測された乱流構造に関する研究
P043 建築微気象グループ報告
窶舶欄エ模型実験による複雑形状都市の抗力係数の測定および都市域の
人工排熱及び水使用量の予測モデルに関する検討窶・/a>
P044 下水道による水輸送過程を考慮した分布型水循環モデルの構築と
都市流域への適用
P045 夏季晴天時東京都心における対流雲発生のメカニズム


 
P041 屋外模型都市を用いた気象実験と都市エネルギー収支モデル(SUMM)の構築
河合 徹・神田 学(東京工業大学)

 都市熱収支は都市独特の気象形成を理解する上で重要である。しかし、都市における熱収支観測は少数であることに加え、非均一な幾何構造、構成要素の多様性等の問題により、得られた結果の解釈が難しい。屋外模型都市実験は均質な領域で詳細な熱収支データを取得でき、有効な手段である。本研究では通年の熱収支測定よりえられた結果を用い、都市のエネルギー分配が風速、及び太陽高度(季節)に依存する点を明らかにした。
 実験と平行して都市エネルギーバランスモデルSUMMの構築を行っている。気象モデルにおいて従来都市は凸凹を持たない平板として取り扱われてきたが、近年都市の幾何構造を陽的に組み込んだ都市キャノピーモデルの構築が進められている。SUMMは都市の3次元的な幾何構造を考慮した都市キャノピーモデルである。都市キャノピーモデルでは陸面パラメーターの設定が極めて重要である。本研究では屋外模型都市実験より、熱粗度に対する検討を行い、得られた結果をSUMMへ適用した。実験より得られた熱収支データベースを用いてSUMMの検証を行い、良好な検証結果が得られている。

 
P042 屋外準実スケールモデルで観測された乱流構造に関する研究
稲垣厚至・神田 学(東京工業大学)

 本研究目的は屋外の都市地表面幾何形状が作り出す乱流組織構造の解明であり、そのため本研究は都市内部で発生した熱・物質輸送過程の解明に直接的な示唆を与えるものと考える。
 研究手法として、屋外準実スケールモデル都市において複数台の超音波風速計を用いた高周波(50Hz)での乱流同期計測を行い、組織乱流の水平・鉛直分布を観測した。
 結果、筋状乱流構造が確認された。これは室内実験で観測されている平板乱流構造に似ているが、空間スケールが幅約10m、流れ方向100m以上あり、室内実験のそれより数オーダー大きく、また屋外の接地層でこのような乱流構造が観測された例はこれまでにない。
 次にスペクトル解析等によって、渦スケールの観点からどのような力学要素がこの乱流構造を規定するのか検討した。この乱流構造の流れ方向スケールは水平風速変動の空間スケールに近いことが分った。このスケールは主に大気境界層高度に依存することから、接地層より外層の流れによって規定されている可能性が示唆される。一方、組織構造の幅は鉛直風速変動あるいは正味の乱流輸送の空間スケール等の接地境界層スケールに相当することから、壁法則によって規定されている可能性が示唆される。

 
P043 建築微気象グループ報告
窶舶欄エ模型実験による複雑形状都市の抗力係数の測定および都市域の
人工排熱及び水使用量の予測モデルに関する検討窶・/td>
谷本 潤・萩島 理(九州大学)

 都市気候シミュレーションにおいて建物群の凹凸が地表面の運動量交換に与える影響を表現する抵抗係数は、精度の高い測定例が少ないため、建物配列状況にかかわらず一定値扱いされる事が一般的である。そこで筆者らは、風洞装置内で幾何形状の異なる様々な直方体模型群の抵抗係数の測定を行った。実験は平面配列、粗度占有面積率λp(4.3%〜39.1%の5条件)、模型アスペクト比、模型の高さ分布を因子として合計40の配列条件にて行った。その結果、次の3つの知見が得られた。1)低密条件では整形に比べ千鳥配列、高密条件では千鳥に比べ整形配列の方が抵抗係数が大きい,2)平均模型高さ一定の条件では高さ分布が大きいほど抵抗係数は大きく、その影響は高密条件で顕著となる,3)模型高さにバラツキがある場合、高層模型の配列条件が抵抗係数に与える影響が支配的であり、低層模型の配列の影響は小さい。
 都市における人為起源の熱,水負荷の基礎予測モデルとして,公刊統計データを入力条件とする人間生活行為スケジュール生成アルゴリズムを開発した.同手法はノンパラメトリックなgenerate & kill法を適用し,高精度時間分解能を有する可塑性の高いモデルである.同モデルによる水熱負荷予測結果と実データとの比較検証を,@ある住棟群の電気,給湯時系列,A広域エリアの水需要時間積算値について行った.

 
P044 下水道による水輸送過程を考慮した分布型水循環モデルの構築と
都市流域への適用
宮本 守・木内 豪(福島大学)

 河川流域における都市域の拡大に伴い、水循環過程は大きく変化している。特に東京のような大都市を流れる河川流域では、下水道整備に代表される人工系の水輸送が大きな影響を及ぼす。そこで、本研究では下水道による水輸送過程を考慮した分布型水・熱循環モデルを構築した。この分布型水・熱循環モデルは複雑な土地利用を有する都市河川流域での水・熱循環系を対象として賈らによって開発されたWEPモデルを基礎とし、下水道システムにおける雨水と汚水の流れの追跡計算モデルを新たに組み込んだものである。本モデルは下水管路網内の流れを直接解くのではなく、下水処理区内のDEMから落水線網を作成し、表面流として扱い追跡計算をする点に特徴がある。
 本モデルを神田川流域に適用し、計算された下水処理場への流入量と河川流量を実測値と比較してモデルの検証を行った。また、モデルによる通年(2004年)の解析を行い、年間の水収支と降雨イベント時の水収支を明らかにした。
 さらに今後の展望としては、流出過程における熱輸送をモデルに取り込むことにより地下水との相互的な熱影響を定量的に明らかにし、水圏における熱環境変化の将来予測を予定している。

 
P045 夏季晴天時東京都心における対流雲発生のメカニズム
小林文明(防衛大学校)

 夏季晴天時,都心で発生・発達する積乱雲(熱雷)は時として局地的な降水を首都圏にもたらす.このような降水は夏季の比較的高温な地表面を冷却すると同時に,水系に対しては熱負荷を与える.この積乱雲の形成過程を2004年夏季に行った集中観測によりとらえた.この集中観測では計7台のドップラーソーダ(音波レーダ)を埼玉県南部から東京湾沿岸にかけて配置し,大気下層の風系を計測した.またドップラーレーダにより積乱雲の発生およびその動きをとらえた.
 本発表でとりあげる2004年8月10日の事例では,関東平野はほぼ全域が晴天であったにもかかわらず練馬付近で孤立した積乱雲が発生した.新宿に設置したドップラーソーダでは当日の午前中から最大1m/s程度の上昇流が観測されており,都心部の大気下層は強い対流状態にあったと考えられる.積乱雲の発生時刻には東京23区北部から埼玉県南部に低圧部および風の収束がみられた.これは熱的低気圧と思われる.練馬付近に発生した積乱雲は,この熱的低気圧による収束がトリガーとなって発生し,海風前線上で発達したと考えられる.


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