水の循環系モデリングと利用システム

 

第2回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

鈴木雅一研究チーム


P067 熱帯モンスーンアジアにおける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える
影響:研究の概要
降水現象の季節性と年々変動研究の成果(解析班1)
P068 降水現象の季節性と年々変動研究の成果(解析班2)
降水現象の季節性と年々変動研究の成果(モデル班)
P069 東南アジア気象の季節変動
タイ北部の落葉性チーク林における着葉期間の長さの年々変動
-降雨のタイミングとリーフフェノロジーの関係-
P070 タイの丘陵性常緑林の水循環
熱帯林の樹冠遮断
P071 冠濡れ時間の鉛直分布と樹冠遮断のモデル化
個葉生理特性と葉面積密度の空間変動を考慮したボルネオ熱帯雨林の
CO2交換モデリング


 
P067 熱帯モンスーンアジアにおける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える
影響:研究の概要
 a)降水現象の季節性と年々変動、b)森林流域での水循環、物質循環研究、c)モンスーンアジアの熱帯における水循環変動の影響予測、からなる研究計画の概要を説明。また、主要観測設備であるタイKog-Ma試験地のタワー、サラワク・ランビル国立公園の林冠クレーン、タイMaeMohのチーク林に 2004年度に新規設置した40mタワーを紹介。

降水現象の季節性と年々変動研究の成果

解析班1

1)タイで降るモンスーン前の雨は何によるのか? 木口雅司(京都大)・松本淳(東京大)
 インドシナ半島におけるプレモンスーン期の降水現象を,NCEP/NCAR再解析による等圧面高度・風・水蒸気場およびOLR,降水量,GPSの観測データを用いて,GAME-IOPが行なわれた1998年について解析。
2)雨量計とゾンデからさまざまな時間スケールの変動を測る! 里村雄彦(京都大)・松本淳(東京大)・木口雅司(京都大)・井上知栄(東京大)・藤縄龍治(東京大)・藤原正智(北大)
気候・気象学の視点から降水の様々な時間スケールでの変動を明らかにするために高精度の雨量計をラオス,ヴェトナム,ミャンマー,カンボジアに設置した。ミャンマーに設置した雨量計で、海岸からの距離で降水日変化が変わっていくなどの新知見が得られている。

 
P068 降水現象の季節性と年々変動研究の成果(解析班2)
解析班2

1)インドシナ半島における降水量変動  井上知栄・藤縄龍治・松本 淳(東京大)
 インドシナ半島全域における1912年以来の約90年間における夏のモンスーン期(5〜9月)の降水量データを作成し,その長期間にわたる変化の解析。
2)インドシナ半島におけるモンスーンオンセット期の大気加熱  石崎紀子・植田宏昭(筑波大)
 プレモンスーン期におけるインドシナ半島上の加熱とベンガル湾の下降流,インドシナ半島周辺の地形が急激なオンセットに関連していることが推測された。
3)インドシナ半島における降水量の季節内変動  横井 覚・里村雄彦(京都大)
 1998年にタイで観測された降水量の領域平均値をウェーブレット解析。
4)Split Windowデータを用いた夏季ベンガル湾における雲分布  井上智亜 ・植田宏昭(筑波大)
 2つの波長帯における水と氷による放射の吸収特性の違いを利用してベンガル湾上の雲型を判別し,これまで対流活動の指標とされてきたOLR(外向き長波放射量)との比較を行った。

降水現象の季節性と年々変動研究の成果(モデル班)

モデル班

1)アジア域熱帯林変動に関する数値実験  馬淵和雄(気象研)
 陸面炭素フラックスまで再現する精密な植生モデルBAIMを全球大気大循環モデルに実装し、アジア域熱帯林の変化が広範囲の気候に及ぼす影響についての研究成果。
2)非静力学モデルへの植生モデルの組み込み  里村雄彦・中田淳子(京都大)
 モンスーン降水と植生との相互作用を精度良く再現できる非静水圧気候モデルを開発するため、群落微気候モデルと陸面モデルMATSIROが組み合わさった群落多層モデルを非静水圧大気モデルへ実装する作業がなされた。
3)ENSO-Monsoon関係の数値実験  川村隆一(富山大)
 ENSO forcingがアジア大陸の陸面水文過程を通して、夏季のアジアモンスーンの強弱に有意な影響を与えることを検証するための、CSIROで開発された大気海洋結合気候モデル(Mark3 CGCM)を用いたENSO-モンスーン関係の解析。

 
P069 東南アジア気象の季節変動
蔵治光一郎・五名美江(東京大)・
Kowit Punyatrong・Issara Sirisaiyard(タイ天然資源環境省国立公園野生動植物保全局)

1)北ボルネオにおける一般気象の季節変動
 明瞭な乾季が存在しない北ボルネオを対象として,気温,降水量等の一般気象にどのような季節変動がみられるのか,マレイシア気象サービスによって観測・蓄積された地上長期気象観測データを用いて解析。
2)北ボルネオ・サラワク州における降水量季節変動の空間分布と季節区分
 マレーシア・サラワク州を対象とし,灌漑排水局により17地点において41年間にわたり観測された日降雨量データセットを用いて降雨季節変動パターンとその空間分布特性を把握した。
3)サラワク州ランビル国立公園周辺における海岸からの距離と降水特性の関係
 ランビルと最寄りの海岸を結ぶ線上に3つの雨量計を配置して、降水日周変動が把握された。
4)タイ・メーチャム流域における降水量標高依存性の長期変動
 タイ・メーチャム流域は,Kog-Ma流域の西約50kmに位置し,タイ最高峰(標高2,650m)を含む山岳流域であり,雨季と乾季が明瞭な熱帯モンスーン気候下にある。1998〜2004年の7年間のデータが得られ,山岳地域の降水量季節変動特性が明らかになった。

タイ北部の落葉性チーク林における着葉期間の長さの年々変動
窶剥~雨のタイミングとリーフフェノロジーの関係窶・

吉藤奈津子(JST),鈴木雅一(東京大)

 蒸発散の季節性に大きい影響を与える熱帯落葉林の展葉・落葉のタイミングと蒸散開始・停止のタイミングを調べ、着葉期間と蒸散期間の長さの年々変動を明らかにした。4年間の観測で、展葉・蒸散の開始、蒸散停止、落葉の終了は、それぞれ約1ヶ月年々変動した。その結果、着葉期間は38日間、蒸散期間は62日間年々変動した。この変動は温帯・冷帯の落葉林に比べて大きく、この差をもたらす主要な要因は、降雨に伴う土壌水分変化だと考えられる。

 
P070 タイの丘陵性常緑林の水循環
1)常緑熱帯季節林における乾季後半の蒸発散の水源 
田中克典、徐健青(地球フロンティア),鈴木雅一(東京大)
 乾季後半に最も大きい蒸発散量が観測されているKog-Ma試験地の常緑熱帯季節林について、乾季後半の蒸発散量が維持される条件を、蒸発散量季節変化を解析するために構築されていたフラックス計算のための多層モデルに根からの吸水を計算する土層サブモデルを開発して
検討した。モデル計算で、土層厚により蒸発散量季節変化が変わり、深い土壌層の不飽和貯留水分により乾季後半の蒸発散がなされている可能性が高いことが示された。
2)常緑熱帯季節林の乾季後半の樹木水ストレス
久米朋宣,鈴木雅一(東京大)
 土壌水分が低下する乾季後半に、樹木が受ける水ストレスの程度を計測した。低木でのみ大きい水ストレスが生じ、その理由として水分が残存する深い土層まで根が達していないことがあげられた。土層厚と樹木の根の深さが、蒸散の季節性に影響を与えていることを示すもう一つの観測例である。

熱帯林の樹冠遮断

1)サラワク熱帯雨林における樹冠遮断量  Manfroi Odair Jose,蔵治光一郎,鈴木雅一(東京大)
 サラワク州ランビル国立公園の低地フタバガキ林の樹冠遮断量が、3年間の580地点の林内雨量計測などから、4haの林分平均値として推定された。
2)樹液流測定による樹冠濡れ時間  久米朋宣,蔵治光一郎,鈴木雅一(東京大学),吉藤奈津子(JST)
 根から吸収された水が樹木の幹の中を上昇する樹液流は、葉が濡れて蒸散が行なわれないとき、停止するので、樹冠の濡れセンサーとして利用することができる。ここでは、熱帯季節林の常緑林、落葉林、及び熱帯雨林で行われた樹液流測定から樹冠の濡れ時間が解析された。

 
P071 冠濡れ時間の鉛直分布と樹冠遮断のモデル化
久米朋宣,Manfroi Odair Jose,鈴木雅一(東京大)

1)樹冠濡れ時間の鉛直分布
 様々な樹高の樹木について、樹液流計測を行い、降雨後に蒸散が始まる時刻を求めた。地上50mから30mまでの間の葉はほぼ同時に乾き、20m以下の葉は降雨事例毎に変化する遅れをもって乾くことが調べられた。
2)多層モデルによる樹冠濡れ時間鉛直分布の再現
 降雨後に樹冠が乾く時期を、その鉛直分布まで含めて再現する多層モデルを構築し、年間遮断量が現地観測値と対応する結果となることを示した。

個葉生理特性と葉面積密度の空間変動を考慮したボルネオ熱帯雨林の
CO2交換モデリング

熊谷朝臣(九州大)

 高さ90mのクレーンを用いて、個葉生理特性と葉面積密度の樹冠内における空間変動を特定し、これを考慮する多層モデル(CANVEG)による群落CO2交換速度のシミュレーションを行った。シミュレーション結果は、乱流変動法で得られた群落CO2交換速度と比較された。この比較検討の中で、熱帯雨林においてCANVEGを適用する場合の、入力データ取得のためにどこまで詳細な観測が必要か、どこまで精緻なモデルが必要か、といった指針が得られた。




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