水の循環系モデリングと利用システム

 

第2回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

砂田憲吾研究チーム


P072 人口急増地域の持続的な流域水政策シナリオ
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P072 人口急増地域の持続的な流域水政策シナリオ
窶買c塔Xーン・アジア地域等における地球規模水循環変動への対応戦略窶・/td>
砂田憲吾
山梨大学大学院 医学工学総合研究部 教授

【研究目的】
 急激な人口増加と開発に伴う深刻な水問題が顕在化しているモンスーン・アジア地域アジア途上国の水問題解決をめざす.そのために,湿潤地帯から乾燥地帯にわたるアジア地域を対象に異なる典型的な水問題を抱える8河川流域を選び,それぞれの流域での水問題の実態を構造的に把握・分析して,問題解決のための政策シナリオを提言する.また,統合的水資源管理を実現するためのアジア版総合的ツールボックスを提示する.

【研究項目】
A.外力変動の評価
 (A-1)人口変動に起因する外力変動の評価
 (A-2)気候モデルによる気候変動外力の評価
B.水政策シナリオの作成
 (B-1)洪水問題が主な河川流域での水政策シナリオの作成
 (B-2)水不足問題が主な河川流域での水政策シナリオの作成
 (B-3)水質問題が主な河川流域での水政策シナリオの作成
C.アジア地域における水管理のためのツールボックスの開発
 (C-1)わが国河川流域の水政策の歴史的経緯およびその評価と対比
 (C-2)ツールボックスの開発と水管理の支援手法

【研究の現況・成果】
●気候モデルによる気候変動外力の評価(A-2関連)
 本研究では,気象研究所で開発中である高解像度の気候モデルを用いて詳細な気候変動外力の評価し、水政策シナリオ作成のための基礎データを提供することを目的としている。
 本年度は、様々な研究機関で開発された19個の大気海洋結合モデルを用いて、将来のモンスーン・アジア地域の気候及び河川流量の予測を行った。将来の気温は現在より約2.5〜3.5度高くなる。降水量は南から東アジアで増加する一方、西アジアでは減少すると予測されている。
●長江洞庭湖地区における治水政策の変遷とその評価(B-1関連)
 本研究では,長江中下流域を対象とした治水政策の歴史的変遷とリアルタイムな政策変化を検討することを通じて,治水のあり方を事例的に検討することを目的とする.
 本研究では湖南省洞庭湖地区において1998年に発生した大洪水を契機にした新たな流域政策を実施することによって改善した点,および新たに生じてくる問題を検討することを通じて,治水政策が成功する秘訣を事例的に研究している.
●メコン河下流域における洪水特性と洪水対策の方針(B-1関連)
 本研究では,国際的大河川であるメコン河の流域特性および洪水特性について理解し,メコン流域の持続可能な水政策シナリオ窶舶法論を提案することを目的としている.
 まず,1ヶ月以上の現地調査および既存の資料の収集と分析に基づき,セグメント区分の概念による流域特性およびクラチェより下流の洪水特性について理解された.
 また,メコン流域の持続可能な水政策シナリオ窶舶法論として,メコン河流域の人口統計的トレンドと流域の自然資源との複雑な関係を投影するために段階的,統合的影響評価枠組みを適用している.これによって開発プロジェクト/プログラムの個別的,および累加的影響が評価されている.
●バンコク首都圏の治水対策(B-1関連)
 本研究ではアジアを代表する氾濫原であるチャオプラヤ川流域と中川・綾瀬川流域において策定された総合治水対策の効果について比較・検討し、今後急激な都市化を迎えるアジアの国々に資することを目的とする。
 本研究の結果,タイのバンコク首都圏域においては、1983年の洪水被害からの洪水対策時系列を詳細に理解し,さらにその拡張として流域対策と河川対策とを総合的に講じる治水対策が、ある程度有効であることが知られた。そしてその総合的な治水対策は、本質的に今後市街化が進む地域においても有効であることが示された。
●ブランタス川における水政策シナリオの作成(B-1関連)
 本研究では、土砂流出が流域管理上大きな問題となっているインドネシア・ブランタス流域を対象に、持続可能な土砂管理政策シナリオを提言することを目的としている。
 本年度には,過去から現在までの社会状況・河川管理政策の変遷、現況の流域管理上の問題点とその原因を構造的に把握、解決に向けての必要事項を整理のために資料整理、現地踏査、関係者を集めたワークショップの開催を行った。さらに、土砂トレーサーを用いた手法で土砂生産源の特定する試みを実施している。
●シルダリア川の広域水管理および水政策シナリオの提案(B-2関連)
 本研究では,国際河川であるシルダリア川流域全般の水需給,流域関係国の水政策,水環境の現状掌握・将来動向の評価を行い,水・環境問題解決のための将来像と改善対策を明らかにし,同流域の水政策シナリオを提案することを目的とする。
 今年度はソ連崩壊後の上下流間の利水競合の経緯と問題点について分析を行った。その結果,ソ連の統合計画経済の下で構築された水利システムは,独立後,各共和国におけるその運用・管理方針の大幅な変更に伴い上下流間に大きな水問題,環境問題を生じたことが理解された.また,水利調整の状況とその解決策の有効性についても理解できた.
●チグリス・ユーフラテス川における水資源管理 窶剥総ロ流域の視点から窶煤iB-2関連)
 本研究では,水資源が逼迫している上に人口急増が起こっている地域について,水環境の推定を互いに非難するという構図が継続している現状を,科学的な知見の提示により改善する.
 これまでに,流域国からの専門家および国際機関などから専門家を東京に招聘し,3回の「ユーフラテス/チグリス川流域専門家会合」を開催した.それによって,イラク国内の水需要の本質が理解された.さらに流域全体を対象とした援助パッケージによって流域国間の争いを低減できる可能性を見出した.今後は,流域自体の研究から見出される行政提言の中身について考察するとともに,イラク下流域の水量・水質モデルを構築してエンジニアリングによる係争の軽減/解消の可能性を追求する.
●サンゴン・ドンナイ川流域の水利用と水質問題(B-3関連)
 本研究では,塩水の浸入を契機にして,1970-80年代にダムの開発により塩水を押し戻す農業用水と都市用水の確保を行ったところ,新たな問題群の発生をみた.ここではそれらを定量的に記述して,その対策の基礎資料とする.
 本年度は,Dau Tieng貯水池の水質把握,漁民の健康リスクの判定,養殖漁業による汚濁負荷の増大の把握,政府による養殖漁業の禁止の影響のインタビューによる調査を行った.これらの基礎データをGISデータとして,相互関係の解明・問題の抽出をおこない,モデル化を通して将来のシナリオを描いていく.
●ガンジス川流域における水質保全対策の評価(B-3関連)
 本研究では,水質悪化が進むガンジス川を対象として,水系伝染病の蔓延と生活習慣の関連について理解し,病原微生物のリスクを低下させる水質保全対策・政策シナリオを提示することを目的とする.
 本年度は、デリー上下流における水質調査,原単位調査について実測し,実態を把握した.
●大河川デルタ地域の水利用と地下水問題(C-1関連)
アジアの地域特性を抽出し,人口急増地帯の動態,大河川下流域洪水氾濫原平野における水需要と地下水資源の管理の枠組みと方向性についての検討を目的としている.
 これまでに,アジアの人口急増地域は、中東から西・中央アジアの乾燥〜半乾燥地帯のイスラム圏に属する国において顕著なこと,経済成長期にある東南〜東アジアでは人口増加率よりも国土経済政策による水需要増が問題となり,水資源開発から水需給管理へパラダイムを政策的にシフトさせてく必要性があること,などが得られている.
●日本の首都圏河川流域における水政策の分析(A-1 C-1関連)
 本研究では,首都圏河川流域を対象に,人口増加等の外力と応答の関係にも何らかの「システム」があると仮定し,水政策の歴史的な構造的分析を通じて「応答システム」の解明を試みている.
 本研究では,人口増加にともなう水道用水確保の変遷,同時期の水施策の整理,利根川の流況変化について把握した.その後,シナリオを設定して,施策のシナリオ分析を行った.このような分析を通じて,応答システムの構造分析を試みている.
●新ツールボックスの開発(C-2関連)
 ツールボックスとは,持続可能性,公平性,地域性に基づく水資源の開発とマネジメント政策の立案を可能にするための措置をとるための総合的な政策指針であり,ツール・経験・参照情報からなる体系化された知識である.
 アジア・モンスーン地域においては,自然条件,社会経済に由来する特徴があり,これらを踏まえた水マネジメント政策を立案することが重要である.この政策立案を支援するため,アジア・モンスーン地域に適合するツールボックスの開発を進めている.




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