水の循環系モデリングと利用システム

 

第2回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

楠田哲也研究チーム


P010 乾燥地農業の水の循環と利用
P011 黄河中流域における土砂輸送モデルの構築と河床変動シミュレーション
P012 都市の水の循環と環境
P013 黄河流域の水資源
P014 流域の総合的水資源管理


 
P010 乾燥地農業の水の循環と利用
渡辺紹裕(総合地球環境学研究所)
小林哲夫(九州大学農学研究院)
赤江剛夫・劉霞(岡山大学環境理工学部)
天谷孝夫・道格通・横山翔悟(岐阜大学農学研究科)
高瀬惠次・大上博基・賀斌(愛媛大学農学部)
長野宇規・久米崇(総合地球環境学研究所)
長裕幸(佐賀大学農学部)
北野雅治(高知大学農学部)
森牧人・安武大輔・金子武将(九州大学農学研究院)
園田裕虎(九州共立大工学部)
王維真(中科院寒区旱区環境工程研究所) 
賀文君(中農科院農業環境可持続発展研究所)

1.研究の目的と課題
 農業・乾燥地グループ研究は、灌漑を中心とする農業における水利用の改善と灌漑に起因する環境問題の解決をめざし、@農地における水・熱・塩分の動態と収支の把握、A灌漑地区における用排水管理と水収支の関係の評価、を目的として調査研究を進めている。具体的には、a.農地における水分・熱・塩分動態の解明とモデリング、b.農地における節水灌漑・塩分管理の技術の開発、c.作付け体系や水管理と流域レベルの水循環・水収支との関係の明確化、d.乾燥農牧交錯地帯における土地・水の管理・保全の効果と対策の明確化、を調査研究の課題としている。
2.研究の進捗と成果の概要
 上記の課題に対して、これまでに以下のような成果が得られている。a-1.秋季灌漑や冬季の土壌凍結融解を含む農地における水・塩分移動の実態とモデル化、a-2.塩害地の塩分分布形成機構の分析、a-3.圃場蒸発散量の実測と推定モデルの開発、b-1.圃場レベルの灌漑水量の決定法と現状評価、b- 2.根域からの塩類リーチングの機構解明、c-1.灌漑区水管理の変化と水利用変化の実態の解明、c-2.灌漑管理実効評価モデルの開発と管理変更が地域水収支に及ぼす影響の定量化、d-1.小支川水系での地下水利用と地下水流動の解明。

 
P011 黄河中流域における土砂輸送モデルの構築と河床変動シミュレーション
橋本晴行(九州大学大学院工学研究院)
池松伸也・高岡広樹(九州大学大学院工学府)
全 炳徳(長崎大学教育学部)上野賢仁(崇城大学工学部)
王 兆印(清華大学水利系)方 紅衛(清華大学水利系教授)

 本研究の目的は、黄河中流支川における高濃度洪水の抵抗則と土砂輸送の特性を解明するとともに、その成果をもとに流出解析、河床変動解析を行い、流出流量や流砂量の評価法について検討することである。
 調査対象河川は黄河中流域北部の右支川の窟野河(Kuye River)、禿尾河(Tuwei River)および佳芦河(Jialu River)である。まず、窟野河の流砂量については、橋本らの統合的流砂量式が実測値と良好に適合することが分かった。また、流れの抵抗則についても、橋本らの流動モデルが適用され、実測の抵抗係数を良好に説明できることが分かった。
 次いで、観測雨量を用いて貯留関数法により流出解析を行い、パラメータ同定を行った。また、窟野河について、流出解析で得られた流量ハイドログラフと流砂量式を用い、流砂量ハイドログラフを求めた。その結果は実測値と概ね一致することが分かった。
 さらに、観測点の流量ハイドログラフを境界条件として河床変動解析を行うことにより、観測点間の任意の地点における流量、流砂量ハイドログラフを予測した。流量、流砂量ハイドログラフの予測値と実測値とはよく一致しており、観測点における流量ハイドログラフが分かれば、それより下流の任意の地点における流量、流砂量が予測できる。
 
P012 都市の水の循環と環境
楠田哲也(九州大学大学院工学研究院) 東修(科学技術振興機構)

 黄河の支流である渭河流域では、西部大開発の進展に伴い、近年都市部を中心に発展が著しい。しかし、供給水量不足を補う地下水利用に伴う地盤沈下、水処理施設等の不足による水質汚染の深刻化が、今後の経済発展の足枷となる可能性は非常に高い。こうした問題を解決することが、渭河流域を含む黄河流域全体、さらには中国全体の持続可能な発展を確保するために非常に重要である。これより、本研究では、渭河流域を対象に水量水質統合モデルを構築し、セクター別水利用形態及び汚濁物質負荷過程を把握した上で、流域の水質汚濁状況を解明する。次に、確率的降雨予測モデル、及び蒸発散量予測モデルを構築し、これらを水量水質統合モデルに組み込むことで、渇水期、平水期、豊水期における流域内供給可能水量の将来予測を可能とする。
 また、今後の予定として、流域内における水資源供給制約下での持続可能な成長を確保するため、食糧安全保障、経済成長、生態系保全、社会の安定化等の経済社会活動に係るシナリオを設定し、経済-水量水質統合モデルの構築を目指す。更に、本モデルを活用し、各種節水方策、及びGDP成長方策に係る費用便益分析を通じ、あるべき流域発展形態をデザインする。

 
P013 黄河流域の水資源
竹内邦良(山梨大学大学院)周買春(科学技術振興機構)
石平博(山梨大学大学院)平林由希子(山梨大学大学院)
馬籠純(山梨大学)P. Hapuarachchi (山梨大学)

 流出・水資源モデルグループ(山梨大学グループ)では、分布型流出モデルをベースに黄河流域の流域水・物質循環モデルの開発及びこれを用いた流域水資源量の評価に取り組んでいる。これまでの検討により水循環過程のモデル化はほぼ完成し、上流域Guide地点における計算値と実測値との比較によりモデルの妥当性が検証されている。水循環過程モデルの開発においては、モデルの流出発生に関する課題を解決するため、Shuttleworth-Waleseモデルを用いた可能蒸発散量および積雪過程モデルの導入と、凍土による浸透抑制の3つの過程を組み込んだ点が大きな特徴である。これらの過程を導入した結果、乾季から雨季にかけての流出量や融雪期においてモデルによる河川流量推定精度の大幅な改善を達成することができた。現在は、モデルから得られる時系列の河川流量の解析、各サブ流域ならびに流域全体の水資源量とその変動の把握、ダム貯水池情報のデータベース化、土砂や汚濁物質循環などの流域情報の抽出・整理を進めており、今後は、将来シナリオにもとづくモデルシミュレーションとその持続的総合流域管理への応用も行う予定である。

 
P014 流域の総合的水資源管理
井村秀文(名古屋大学大学院環境学研究科)
金子慎治(広島大学大学院国際協力研究科)

 水資源需給将来予測グループでは、厳しい水資源制約下に置かれた黄河流域の社会・経済の発展のあり方を探るため、流域全体の水資源需給バランスを県市別・セクター別データによって分析・再現することに取り組んでいる。そこで、月単位で、流域全体の県市別・セクター別水資源需給バランスを分析し、年間変化のシミュレーションを行った。その結果、1997年の断流現象をモデル上である程度再現することができた。さらに、将来の社会・経済の発展フレームを都市の成長パターンに応じてシナリオ別に設定し、セクター別(農業・工業・生活)水需要量を推計し、水資源量とのバランスをみた。
 今後は、水資源と社会・経済の関係性をさらに詳細に分析し、モデルの精度向上を進めていく方針である。また、他班との協力のもと水循環を考慮した水資源量の算定を行っていくつもりである。




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