水の循環系モデリングと利用システム

 

第2回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

木本昌秀研究チーム


P006 階層的モデリングによる広域水循環予測
P007 春季シベリア域の地表面気温変動の要因と影響
P008 高解像度CCSR/NIES/FRCGC大気海洋結合モデルを用いた
大気海洋結合効果
P009 東シベリアの積雪は北半球環状モードを励起するか?


 
P006 階層的モデリングによる広域水循環予測
木本昌秀(東京大学気候システム研究センター)

 本研究は、大気窶矧C洋窶迫、面過程を総合して表現する気候の数値モデルを用いて、東アジア域を中心とした広域水循環変動の長期予測可能性を探求することを目的としている。
 モデルの高分解能化、および、それに伴う物理過程の再調整等により、モンスーンや梅雨前線活動の年々や季節内の変動の再現性が向上した。格子点以下のスケールの物理過程の高度化をより組織的に行うためには、領域・雲解像モデルをより有機的に併用する方策を探る必要がある。また、広域水循環変動のメカニズム解析に有力なツールとなる湿潤線型モデルを実用化した。
 モデルの高度化と平行して、過去の事例の予測実験や主要な変動モードの同定とそのメカニズム解析を通じて広域水循環変動について予測可能性の評価を行っている。これまで、夏季アジアモンスーン水循環の主変動モードとしてPacific-Indo Dipoleモード、夏季東アジアの天候の支配要因としてのシベリア陸面条件の重要性、東アジアの冬季天候を支配する北極振動モードの予測可能性等について研究を進めてきた。

 
P007 春季シベリア域の地表面気温変動の要因と影響
荒井(野中)美紀・木本昌秀(東京大学気候システム研究センター)・
沈学順(中国気象科学研究院)

 春季におけるユーラシア大陸上の地表面気温は,2ヶ月窶狽Rヶ月先とのラグ相関が高く,他の季節と比較して長い間高温/低温アノマリが保たれる傾向にある.この理由としては,春季がこの場所の融雪期にあたり,陸面水文学的過程を通してその温度メモリが残りやすいことなどが指摘されている.本研究では,まず,102年間の地表面気温の観測データに対してEOF解析を行い,ユーラシア大陸上の気温偏差場において春季に卓越するパターンを調べた.その結果,ユーラシア大陸上の広い範囲で,北緯45度を境に逆符号となる南北シーソー型であることが確認された.次に,この春季の気温パターンに先行する晩冬季の海面気圧場を調べたところ,それが北大西洋振動(NAO)と関連すること,また,今世紀後半から急激にNAOと春季の地表面気温の主変動パターンとの相関が高くなっていることが明らかになった.さらに,この春季の地表面気温の主変動パターンは5,6月のオホーツク海高気圧の変動に影響を与えていることがわかった.この両者の関係も,強い正相関をもつ時期(1925年-1954年,1975年-2001年)と相関が弱い時期(1901年-1924 年,1955年-1974年)とが存在していた.

 
P008 高解像度CCSR/NIES/FRCGC大気海洋結合モデルを用いた
大気海洋結合効果
稲津 將・木本昌秀(東京大学気候システム研究センター)

 大気海洋間の結合過程は、全球的な循環や降水といった気候の形成や変動に大きな影響を及ぼす。その効果を調べるため、高解像度大気海洋結合モデルを用いて、大気海洋結合実験とその実験で得られた海面の情報を与えた大気単独モデルの実験を行った。様々な気候条件での大気海洋結合効果を検証するため、実験は現在気候と温暖化気候の2つについてそれぞれ行った。大気モデルの方が結合モデルに比べ、大気海洋間の熱フラックスを系統的に大きくする傾向にある。その汎球的な影響として、両気候条件共に、大気モデルの方が大陸上の地表面気温を高めに見積もった。これは前者のほうが、大気中に水蒸気を多く供給するため、温室効果がより働くものと考えられる。また、局所的な影響として、日本付近の降水に着目した。
 大気海洋結合効果が水蒸気量の見積もりにのみ影響する温暖化気候の場合には、大気モデルで日本付近の降水量を多めに見積もった。
 一方、現在気候下では、その効果を打ち消すような気圧配置になったため、両モデル間の降水量の差は顕著ではなかった。

 
P009 東シベリアの積雪は北半球環状モードを励起するか?
車 恩貞・木本昌秀(東京大学気候システム研究センター)

  2000年10月中旬にユーラシア大陸東部で地表面温度が低かったことが引き続く冬の北半球の大気循環にどのような影響を及ぼしたかを、観測データの解析と大気大循環モデル実験によって調べた。東アジアでは2000/01年の冬は非常に寒く、降雪が多かった。観測データの解析から、循環偏差を半球規模でみたときに2000/01年の冬には極域と中緯度域の間で気圧偏差が環状に変動する、北半球環状モード(Northern Annular Mode;NAM)と呼ばれる偏差パターンが現れていた。観測データの解析から北半球冬の大気環状モードの出現に先立って、降雪がおよそ2ヶ月先行することが示された。環状偏差は北半球全域に広がり、時間とともに増幅される。数値実験結果から、秋にユーラシア大陸東部の地表面が平年より低温であることが引き続く冬にNAMの概形を形成するのに影響を及ぼすということが示された。本研究におけるこのような発見によって、中高緯度域の冬季の大気循環を予測する際の秋のユーラシア大陸東部で地表面条件の重要性が示された。




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