水の循環系モデリングと利用システム

 

第2回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

神田学研究チーム


P040 都市-大気間の水・エネルギー輸送把握のための首都圏フラックスネット
P041 スケールモデル実験による都市-大気間の水・エネルギー輸送過程の解明
P042 都市-大気間の水・エネルギー輸送把握のための建築微気象学的アプローチ
P043 都市-水圏間の水・エネルギー輸送把握のための水文学的アプローチ


 
P040 都市窶泊蜍C間の水・エネルギー輸送把握のための首都圏フラックスネット
森脇亮○,小田僚子,神田学(東京工業大学 理工学研究科)

 都市生態圏が大気圏へ及ぼす水・エネルギーフラックスの実態を解明するため,首都圏を対象としたフラックス観測ネットワークを構築した.観測ネットワークは1)東京の住宅街における長期連続観測,2)同地域における多点同時フラックス計測,3)東京湾における長期連続観測に大別される.
1)東京の典型的低層住宅街に30mタワーによるフラックス・ステーション(通称:久が原タワー)を構築し,継続して熱・水・CO2フラックスおよび関連水文気象量・乱流統計量を継続的に観測している.都市接地層内におけるモニン・オブコフ相似則や熱・水収支,水蒸気・乱流の鉛直分布などが明らかになってきている.
2)久が原タワー周辺において,フラックスや各種水文気象量の空間分散を調べる目的で,半年間の多点同時観測を行った.具体的には久が原タワーを含む6カ所の既設・新設のタワーを利用して熱・運動量フラックス・気温分布の比較を行った.
3)大都市に隣接する水圏の機能を定量的に把握することを目的として,東京湾上にの海上タワーを利用してフラックス・ステーションを構築し,熱・水・CO2フラックスを継続的に観測している.
 ポスター発表では上記観測ネットワークから得られた様々な知見について報告する..

 
P041 スケールモデル実験による都市窶泊蜍C間の水・エネルギー輸送過程の解明
河合徹○,稲垣厚至,神田学(東京工業大学 理工学研究科)

 旧来の現地観測と室内実験の制約を克服すべく,世界初の試みとして,屋外に大規模なスケールモデル実験施設を構築した.これにより,現実的な放射・大気安定度条件のもとで,都市幾何構造と水・熱・運動量フラックスの因果関係をシステマティックに解析し,モデル構築・検証に必要な貴重なデータセットを取得することが可能となる.得られた主要な結果は以下の通りである.(1)実験データから放射・流れ・熱慣性の物理相似則に検討を行った.熱慣性相似が満足されていないことは,想定通りであり,体積熱容量のスケールアップによりモデルで対応可能である.(2)風向・風速に対する熱・スカラーの交換係数の依存性を明らかにした.(3)熱収支インバランスと呼ばれる渦相関法によるフラックスの過小評価を確認した.インバランス量は風速の増大に比して減少する.(4) 都市模型の純放射量に対する熱貯留量の比は,風速の増大=乱流輸送の促進と共に減少する.(5)都市模型キャノピー内では周辺より高温だが,境界層上部(建物高さの4倍程度)では逆に周辺より低温となるクロスオーバー現象を発見した.(6)超小型高サンプリング超音波風速計の多点同時計測結果から,フラックス輸送に支配的に関与する大規模な乱流組織構造(ストリーク)の時空間構造を抽出した.
 
P042 都市窶泊蜍C間の水・エネルギー輸送把握のための建築微気象学的アプローチ
萩島理○,成田健一,谷本潤
(九州大学大学院 総合理工学研究院,日本工業大学 建築学科)

 建築微気象グループでは,建物・街区スケールの熱・水収支に関する実験,実測及び数値解析を行っている.
 まず,都市緑地のオアシス効果定量化を目的としてサザンカの鉢植えを用いた屋外実験を行い,単木の蒸散量が高密度群落中央部の樹木に比べ約1.6倍大きくなる事を明らかにした.
 次に,都市キャノピーの伝達率分布について,屋外と中立風洞内にて立方体粗度群を用いた実験,4階建て集合住宅団地にて微気象観測を行った.これにより次の3点,1)熱・物質伝達に関するアナロジーが屋上では概ね成立,2)鉛直壁面のバルク係数の風向依存性は屋外非等温場と中立風洞内でほぼ同様,3)建物の対流熱伝達率分布が既往の風洞実験結果と概ね類似,を確認した.加えて,都市の人工排熱及び水使用量予測モデルの構築を行った.これは,統計データから多数のエージェントの多様な生活行為スケジュールを発生させ,各行為毎にエネルギー及び水の消費原単位を貼り付けるという手法である.
 最後に,九州大学でこれまで開発してきた1次元多層都市キャノピーモデルの汎用化及び感度解析を行うとともに,モデルの入力条件である都市表面日射反射率及び建物占有面積率についての調査を行った.

 
P043 都市窶柏・頼ヤの水・エネルギー輸送把握のための水文学的アプローチ
木内豪○,宮本守,中山有
(福島大学 共生システム理工学類,東京工業大学 理工学研究科)

 ヒートアイランド現象をはじめとして都市の大気熱環境に関する研究は数多く行われている一方,水圏への影響に着目した研究は少ない.しかし,都市の巨大化によって人工系水循環が自然の水循環系を変え,河川・沿岸域等の水圏への水・熱インパクトとなって水質,生物相,生態系に影響を及ぼすとともに,水空間の多様な価値を損なうことが危惧される.そこで,本研究では大都市における水・熱輸送の実態,河川における水温長期変化の実態とその要因について,実態調査,モデリングによる分析を行った.その結果,東京都区部と埼玉県南部を対象として過去40年間における都市の成長に伴う水・エネルギー循環の長期変化が明らかになり,水圏インパクトの増大が示された.これについては,都市集水域,下水処理区スケールにおける実態解明によっても年間を通じた下水温度,流量,地温などの挙動把握が進められた.また,水・エネルギー循環の長期的変化によって,荒川下流部においては河川水温の顕著な上昇が冬期から春先に見られることがわかった.さらには,数値解析や現地観測の結果,河川のネットワークによって荒川下流部の広域的水温変化が生じていることもわかった.




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