III．戦略目標医療応用等に資するＲＮＡ分子活用技術（ＲＮＡテクノロジー）の確立

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	「医療応用等に資するＲＮＡ分子活用技術（ＲＮＡテクノロジー）の確立」（平成１８年度設定）
	１．名称　医療応用等に資するＲＮＡ分子活用技術（ＲＮＡテクノロジー）の確立

	２．具体的な達成目標　ＲＮＡ分子の多様な機能を、医療応用、工業利用、環境問題等に活用する技術の確立をめざす。ＲＮＡは従来のタンパクにないさまざまな特徴を有し、実用化が強く期待されている。そのために次の技術の確立を目標とする。（１）有用な機能をもつＲＮＡをデザインする技術、（２）ＲＮＡの機能を高める技術、（３）ＲＮＡを利用し細胞の機能を制御する技術、（４）ＲＮＡを検出する技術、あるいはＲＮＡを利用した検出技術、（５）ＲＮＡ薬剤の送達システム技術等、ＲＮＡを利用する先端医療技術

	３．目標設定の背景及び社会経済上の要請　我が国は、急速に高齢化社会を迎えつつあり、医療費の増大はきわめて重要な問題である。また現代社会は、常にエマージング感染症の脅威にさらされている。したがって疾患の予防・治療技術の向上は経済的にもまた社会的にも急務の課題である。従来からの医療技術の開発に、飛躍的な進歩をもたらす新たな試みが求められる。最近、続々と発見がされているRNA分子の多様性とその多彩な機能は、これまでの低分子化合物やタンパクを中心に展開されてきた医療技術に、革新的な発展をもたらすと期待される。また、生命の40億年の進化が生み出したRNA分子は動植物すべての生命現象に重要な役割を果たしていることから、RNA分子の機能応用は環境・エネルギー問題、さらに生体分子を活用する工業における波及効果が期待される。　RNA分子を利用する画期的な技術であるRNA干渉では、基本特許を海外に押さえられている現状があるが、RNA分子のポテンシャルを生かした新技術の開発では我が国がプライオリティを確保するべきであり、蓄積されつつあるRNA基礎研究知見の産業への迅速な応用と知的財産の確保が急務である。　諮問第５号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申（平成１７年１２月２７日、総合科学技術会議本会議）においては、「国民を悩ます病を克服」及び「誰もが元気に暮らせる社会の実現」が科学技術政策目標に位置付けられている。また、平成17年度科学技術・学術審議会・研究計画・評価分科会・ライフサイエンス委員会においても、RNA新機能の研究・実用化の重要性が指摘されている。

	４．目標設定の科学的裏付け　RNA研究が一躍活気を帯びるようになったのは1998年以降、RNA分子によるさまざまな遺伝子機能の調節機構が新たに発見されてきてからである。本年9月の米国科学雑誌Science誌ではRNAの形態と機能の特集号が出されている。　たとえば、miRNA（タンパクをコードしない21～23塩基対のRNA分子）が20%以上のヒト遺伝子を制御していること、miRNAが心発生において分化と増殖のバランスをとっていることは、しかるべき技術が開発されれば、RNA分子による遺伝子機能や細胞の人為的な制御が可能であることを示唆している。しかもRNA分子の機能は、塩基配列の変更により自由度高く改良することできる。　RNA分子はタンパクと同様に多様な高次構造をとることができ、タンパクに結合したり（ヒストンに結合するXist）、酵素活性を発揮する（RNAのスプライシングを起こすリボザイム）ことは、適切な設計技術により、RNA分子を抗体に代わる検出ツールとして利用したり、工業的に利用できることを示唆している。　RNA分子の実用化に必要なRNA分子の計測技術には、開発が進められている一分子の計測技術が応用できる。　また、すでにごく一部の疾患（たとえば米国における網膜性変性症に対するRNA医薬）に対するRNA医薬が認可され医薬素材としてのRNA分子が注目されていることから、有効なDDS技術が開発されれば対象疾患が大きく拡大されることが期待される。　我が国のRNA研究は長い歴史を有し、実績や人材が豊富であることに加え、ゲノム科学分野における多数のRNA分子の発見の実績や優れた核酸化学の実力を有しており、RNA分子活用技術（RNAテクノロジー）を推進できる素地に恵まれている。