JST数学関連3領域連携WS「情報科学と拓く新しい数理科学」

JST数学関連3領域連携WS「情報科学と拓く新しい数理科学」

 2019年に文部科学省が選定した戦略目標「数理科学と情報科学の連携・融合による情報活用基盤の創出と社会への展開」のもとに、情報科学研究と数理科学研究の連携と融合を目指した数学関連の3領域が発足しました。2021年にこれら3領域すべてで採択者が決定し、情報科学と数理科学の研究者が戦略目標の達成に向けて日々活発に研究を進めています。
 この度、日本応用数理学会年会(9月8日〜10日)および日本数学会秋季総合分科会(9月13日〜16日)が北海道大学で開催されることとなり、そこに多くの数理科学や情報科学関係の研究者が集まると思われます。この機会を活かし、本3領域による連携研究集会を開催し、各研究領域の研究者から情報科学と数理科学の連携・融合で生まれつつある新しい数理科学研究の姿をご紹介したいと思います。開催方式はハイブリッド形式で準備しています。学会参加のため北海道にいらしている多くの研究者だけでなく、数理科学や情報科学に関係した多くの研究者の参加を心よりお待ちしています。


オーガナイザー:
坂上 貴之(さきがけ「数理構造活用」領域研究総括)
國府 寛司・佐伯 修(CREST「数理的情報活用基盤」領域アドバイザー)
伊藤 哲史・太田 慎一(ACT−X「数理・情報」領域アドバイザー)

ご協力:
長山 雅晴(北海道大学 電子科学研究所 教授)

開催概要

日 時
2022年9月12日(月) 13:00~17:00
場 所
北海道大学大学院理学部3号館3-309室
https://www.sci.hokudai.ac.jp/~hogawa/access/access-1.html
主 催
JSTさきがけ「数理構造活用」領域(研究総括 坂上 貴之)
共 催
JST CREST「数理的情報活用基盤」領域(研究総括 上田 修功)
JST ACT−X「数理・情報」領域(研究総括 河原林 健一)
後 援
日本数学会、日本応用数理学会

プログラム

13:00

オープニング 坂上 貴之(京都大学)

13:15

小林 徹也
(東京大学)
(講演30分)

グラフ・ハイパーグラフ上の
ダイナミクスの情報幾何学

13:45

早瀬 友裕
(Cluster Metaverse Lab)
(講演30分)

ランダム行列から深層学習へ

14:15

休憩

14:30

平井 広志
(東京大学)
(講演30分)

行列スケーリングから非正曲率空間上の
測地的凸最適化へ

15:00

相川 勇輔
(三菱電機(株))
(講演30分)

整数論で守るポスト量子社会のセキュリティ

15:30

休憩

15:45

大林 一平
(岡山大学)
(講演30分)

パーシステントホモロジーによるデータ解析
- 理論,応用,ソフトウェア

16:15


梶原 健司
(九州大学)
(講演30分)


設計の新パラダイムを拓く
新しい離散的な曲面の幾何学
~美的性・力学的合理性・施工性を備えた
幾何学的形状生成への挑戦~

16:50

クロージング 國府 寛司(京都大学)

参加登録

参加希望の方は申込フォーム(準備中:8月中旬公開予定)からお申し込みください。なお、JSTのイベント開催規程に基づき、対面での参加人数に制限がございます。現地での参加希望者が多数の場合は視聴部屋を準備して、Zoomで視聴できるようにする予定です。また、現地参加の方が研究集会の前後で講演者と議論できるよう配慮したいと思っています。

申込〆切:2022年9月8日(木)


**注意**

本ワークショップはハイブリッド形式で開催を予定しておりますが、感染症が拡大して現地開催が困難になった場合は完全オンライン形式に切り替えることがありますので、現地対面参加予定の方も事前登録に協力を御願いいたします。

講演者紹介

  • 小林 徹也 写真

    「グラフ・ハイパーグラフ上のダイナミクスの情報幾何学」

    小林 徹也(東京大学)

    講演概要

    グラフやハイパーグラフ上の線形・非線形ダイナミクスは、マルコフ連鎖からネットワーク上の集団・感染ダイナミクス、化学反応、そしてグラフNNの学習など多岐に現れる。本発表は、これらのダイナミクスの幾何学的側面が情報幾何学で扱えることを示す。
    この構造は、コチェイン複体上に導入される2対の双対平坦空間がグラフやハイパーグラフが定める境界作用素で接続された構造を持ち、情報幾何学的にも離散解析的にも興味深い。また本構造が、リーマン多様体上の勾配流やWasserstein幾何から誘導されるリーマン幾何構造のある種の拡張になっていることにも言及する。

    講演者略歴

    東大計数工学出身。神戸理研での学振PDを経て、2008年より東大生産技術研究所にて、定量生物学研究室を主催。
    東大情報理工学系研究科数理情報学専攻を兼任。
    定量的なデータに基づく生命科学研究と生体情報処理の理論研究に従事。
    最近は、化学反応力学系の持つ代数構造・幾何学構造の研究とその広い意味での応用に取り組んでいる。

  • 早瀬 友裕 写真

    「ランダム行列から深層学習へ」

    早瀬 友裕(Cluster Metaverse Lab)

    講演概要

    深層学習において、ランダム行列や自由確率論がクリティカルに効く場面があります。パラメータ行列のランク削減、初期パラメータ行列のサンプル法、層数の多いニューラルネットワークの学習法、ニューラルタンジェントカーネル、汎化性能の解析等です。この講演では、深層学習にもランダム行列にも詳しくない方でもわかりやすいように概要を解説します。さらに、最近の研究展開についてもお話します。

    講演者略歴

    作用素環論の研究室で博士課程。その最中(株)モルフォと(株)PFNで機械学習の研究インターンをする。自由確率論の研究で博士取得後、富士通人工知能研究所に就職しACT-X(数理・情報領域)でランダム行列・自由確率論による深層学習の研究をする。ソーシャルVRに惹かれ、現在クラスター株式会社メタバース研究所でVR・機械学習・数理科学に取り組んでいる。

  • 平井 広志 写真

    「行列スケーリングから非正曲率空間上の測地的凸最適化へ」

    平井 広志(東京大学)

    講演概要

    行列スケーリング問題とは「与えられた非負行列 A に右と左から正の対角行列をかけて、指定された行和、列和をもつようにできるか」という問題で、様々な応用があり古くから研究されてきた。最近になっても、作用素スケーリングや群軌道閉包ノルム最小化問題に一般化されて、さらなる拡がりをみせている。そこでは非正な曲率をもつ空間(アダマール空間)上の凸最適化問題が重要となる。講演ではこのような新しいタイプの凸最適化やそれに対するアプローチを紹介する。

    講演者略歴

    2004年 東京大学大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻 修士課程修了
    京都大学数理解析研究所 助手・助教、東京大学大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻 講師をへて、現在同専攻准教授。博士(理学)

  • 相川 勇輔 写真

    「整数論で守るポスト量子社会のセキュリティ」

    相川 勇輔(三菱電機(株))

    講演概要

    量子コンピュータの実現は様々な分野での技術的進歩をもたらすと期待されている一方で、現在私たちが利用している公開鍵暗号の危殆化を招きます。暗号の研究者はそのような状況に対抗するべく量子コンピュータによる解読にも耐えうることが期待される暗号、つまり耐量子計算機暗号の研究および標準化を進めています。今回は、これら背景や最近の動向に加えて、耐量子計算機暗号研究への整数論からのアプローチを講演者らの研究成果も交えながら紹介いたします。

    講演者略歴

    2019年に北海道大学大学院理学院数学専攻の博士後期課程を修了し博士(理学)を取得。同年、三菱電機株式会社に入社し、情報技術総合研究所 情報セキュリティ技術部にて数学的な観点から暗号、特に耐量子計算機暗号の研究開発に従事。2022年より立教大学 兼任講師。

  • 大林 一平 写真

    「パーシステントホモロジーによるデータ解析 - 理論,応用,ソフトウェア」

    大林 一平(岡山大学)

    講演概要

    本講演では、数学のトポロジーを利用したデータ解析手法「パーシステントホモロジー」に関する大林のこれまでの研究について紹介する。トポロジーのような数学的概念、数理最適化や機械学習といった情報科学の道具がどのように融合して材料科学などのデータの解析に役立っているかを紹介します。特にこれらの橋渡しをするソフトウェアの重要性について議論したい。

    講演者略歴

    2010年3月に京都大学理学研究科数学数理解析専攻博士後期課程を修了し、博士(理学)を取得。その後、京都大学特定研究員(2010〜2015)、東北大学AIMR助教、准教授(2015〜2018)、理研AIP研究員(2018〜2021)、2021年から岡山大学Cypher教授。専門は応用数学(力学系、位相的データ解析)。位相的データ解析に基づくデータ解析ソフトウェアHomCloudの中心的開発者。

  • 梶原 健司 写真

    「設計の新パラダイムを拓く新しい離散的な曲面の幾何学」
    ~美的性・力学的合理性・施工性を備えた幾何学的形状生成への挑戦~

    梶原 健司(九州大学)

    講演概要

    性質のよい連続曲面を形状要素とする離散曲面の幾何学を創始し、美とアート性を備えた安心・安全な構造物の、効率的・低コストでの設計を可能にする双方向循環型設計プラットフォームの開発を目指しています。工業意匠設計分野で開発された、車のデザイナーが美しいと感じる平面曲線族の可積分幾何による拡張や、区分的に滑らかな曲面の幾何学、また計算幾何学に基づく、折りを含む可展面による形状設計技術を基盤とし、その上に構造最適化など設計諸分野の技術を有機的に組み合わせています。本講演では全体を概観した後、数学的な側面を重点的にお話しします。

    講演者略歴

    1989年東京大学工学部計数工学科卒。1994年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了。同志社大学工学部専任講師、助教授を経て2001年九州大学大学院数理学研究院助教授、2009年より教授。2011年より九州大学マス・フォア・インダストリ研究所教授。