みなさんは「数学」についてどんなイメージをもっているでしょうか?日々学校で勉強している様々な数学の問題を思い起こす人は多いでしょう。インターネットで試しに調べてみると、数学とは「数・図形・数量の変化などの背後にある法則を明らかにすることを目指す学問」とあります。因数分解や面積の計算といった、皆さんが習っている数学という科目の内容は含まれていますので確かにそうだという気もします。しかし、実は数学という学問では「数」「図形」「数量の変化」というものは、皆さんの思っていることよりもはるかに深い対象や広い領域に及んでいるのです。その広さと深さのおかげで、多くの研究者が毎日のように新しい数学の理論を創造し、それを使ってこれまでに解けなかった問題を解決できるのです。
皆さんが授業で学んでいる数学という「科目」が、どのようにして最先端の「数学研究」へとダイナミックに変化していくのでしょうか? そもそも、数学を研究するとはどういうことなのでしょうか?その可能性や限界はあるのでしょうか?また、研究者の方は高校生の頃、何を考え、どのようなことをしていたのでしょうか。こうした疑問に答えられるよう、多彩で多様な講演を用意しました。さらに、キャラバンの最後には皆さんと講演者の交流の時間を設けています。講演者の先生に自分の普段感じている数学や、聞いた話から感じたことを率直に話してみましょう。数学は、考えられることは何でも考えられる自由な学問です。きっと、学校の授業とはまたひと味違う、研究者の皆さんが感じている生き生きとした数学の姿を感じられると思います。
オーガナイザー(プログラム計画):坂上 貴之(京都大学 教授)
開催概要
- 日 時
- 2023年9月10日(日) 13:00〜17:00
- 場 所
- 京都府立嵯峨野高等学校
- 対 象
-
高校生・一般(内容は高校生向け)
- 参加費
-
無料
- 主 催
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構
- 共 催
- 京都府立嵯峨野高等学校
プログラム
- 12:45
開場(受付)
- 13:00
開会、挨拶 (坂上 貴之:京都大学 教授)
- 13:05
京都大学 高等研究院
井元 佑介 准教授
(講演40分)不可視の可視化
- 13:45
休憩
- 13:50
東京都立大学 理学研究科
高津 飛鳥 准教授
(講演40分)To infinity and beyond!
- 14:30
休憩
- 14:35
Arithmer 研究開発本部
高沢 光彦 AIエンジニア
(講演40分)社会においても役に立つ数学
- 15:15
休憩
- 15:25
研究者を囲んで(意見交換会)
各ブースにて講演者と参加者が自由に意見交換・質問を行って頂きます
- 16:55
閉会
講演者紹介
-
「不可視の可視化」
井元 佑介(京都大学 高等研究院 准教授)
講演概要
見えないもの(不可視)を理解することは数学の主な研究目的のひとつです。例えば、宇宙空間、分子構造、複素空間、高次元空間のような、直接見ることができない世界を数学者は様々な数学道具を使って観よう(理解しよう)とします。
本講演では遺伝子発現データのような高次元データの「かたち」を観ることを目的として、「かたち」の研究分野であるトポロジーの理論を用いて高次元データを可視化する方法(トポロジカルデータ解析)を紹介します。講演者略歴
福岡県糸島市出身。2016年九州大学数理学府博士後期課程修了(博士(数理学))。東北大学知の創出センター 特任助教、京都大学ヒト生物学高等研究拠点 特定助教を経て2022年より現職。
参加者への一言
目の前に広がる今だけの世界を全力で楽しもう!
-
「To infinity and beyond!※」
出典:ディズニー映画、トイストーリーより
高津 飛鳥(東京都立大学 理学研究科 准教授)
講演概要
日本の数詞では、不可思議を超えたところに無量大数が現れます。
この講演では、有限を超えた摩訶不思議の世界を、形(幾何学)を通して眺めてみます。
そうは言っても私には4次元以上を直接みて感じとることはできないので(3次元も結構怪しいです)、数式を使って考えます。
まずは4次元以上の空間の長さや体積を定義して、高次元の立方体と球体を比べてみます。その後、無限を次元にしてみます。講演者略歴
2010年 東北大学大学院 理学研究科 数学専攻 博士後期課程修了博士(理学)。
日本学術振興会 IHÉS-JSPS fellow、名古屋大学大学院 多元数理科学研究科 特任助教・助教を経て現職(ただし改組および名称変更による所属名の違い、首都大学東京大学院 理工学研究科 数理情報科学専攻または理学研究科 数理科学専攻も含む)へ。
参加者への一言
講演題目は某映画の名台詞です。「無限の彼方へさあ行くぞ!」
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「社会においても役に立つ数学」
高沢 光彦(Arithmer 研究開発本部 AIエンジニア)
講演概要
ニュースなどで「三角関数みたいな役に立たないものを教えないで、代わりに◯◯を...」のような発言を耳にする事があり、その度に数学を学んだ者として心を痛めています。講演では、現代社会において大きなトピックとなっている AI が数学と深い関係を持つことや、企業の業務の中で高度な数学を用いる事例などを紹介し、数学と社会の関わりの一端に触れていただければと思っています。
講演者略歴
東京工業大学 理学部第1類入学、在学中、日本学術振興会特別研究員(DC1)、東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 博士課程修了(博士(理学))、東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系 数理・計算科学コース 助教を経て、Arithmer 株式会社 研究開発本部 AI エンジニア
参加者への一言
高校の時は化学が好きでしたが、成績が一番よかったのは現代文です。大学2年生の時に情報科学科に進むことを決め、数学の研究者を経て、今は AI エンジニアです。人生何がどうなるかわからないものですが、思いのほか、過去の経験が役に立つことがあります。皆さんも自分らしい高校生活を送ってください。