e-ASIA共同研究プログラム(e-ASIA Joint Research Program; "e-ASIA JRP") 令和6年度採択「代替エネルギー」分野、「農業(食料)」分野 共同研究課題募集のお知らせ

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、「e-ASIA共同研究プログラム(e-ASIA Joint Research Program; "e-ASIA JRP")」に参加し、3ヵ国以上の多国間国際共同研究課題を支援しています。
e-ASIA JRPは、東南アジアを中心とした地域における科学技術分野の研究開発力強化と地域共通課題の解決を目指し、3ヵ国以上の多国間共同研究・研究交流を推進するプログラムです。
第13回となる本公募では、e-ASIA JRPに参加する各国の公的研究費配分機関と協力し、英文公募要領の通り募集します。また、以下要点を日本語でも示します。

共同研究の募集対象分野

①「代替エネルギー」分野
 2015年に採択されたパリ協定の実現に向けて世界が取り組みを進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、あらゆる技術的な選択肢を追求している。しかしUNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)が2022年10月に発表したNDC(自国が決定する貢献)統合報告書では「各国は世界的な温室効果ガス排出量を減少に向かわせつつあるが、今世紀末までの世界の気温上昇を1.5℃に抑えるには、こうした取り組みでは依然として不十分」と評価しており、温室効果ガス削減に向けた更なる取り組みが求められている。中でも温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが重要である。
 2022年4月に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書WG3報告書では、気候変動の緩和について「エネルギー部門全体を通して温室効果ガス排出量を削減するには、化石燃料使用全般の大幅削減、低排出エネルギー源の導入、代替エネルギーキャリアへの転換、及びエネルギー効率と省エネルギーなどの大規模な転換を必要とする」とまとめている。
 国連が2023年7月に発表した持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版では「COVID-19のパンデミックやウクライナ戦争などにより、SDGsの進捗は世界的に停滞」していると報告している。ASEANでは「エネルギー協力のためのASEAN行動計画(APAEC)2021-2025」のもとで、2025年までに域内の一次エネルギー供給総量に占める再生可能エネルギーの割合を23%とする目標を設定した。我が国でも2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」にて「再エネについては、主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組む」としており、エネルギー問題への取り組みは喫緊の課題である。

 本公募は、環太平洋諸国およびASEAN諸国のエネルギー問題に取り組む研究課題を募集し、多国間連携による地域の能力強化に貢献することを目的としている。地域共同研究を通じて、地球温暖化防止のためのエネルギー大転換に向けて、革新的な技術や方法論が開発されることが期待される。また、SDGs(目標7番:エネルギーをみんなにそしてクリーンに、目標13番:気候変動に具体的な対策を)等への貢献を目指す。

○想定される研究テーマ
下記の3テーマにより公募を実施する。

テーマ1:「再生可能エネルギー」
 環太平洋諸国およびASEAN諸国は農業生産物や農業廃棄物、藻類といった有機物に恵まれており、それらを活用したバイオエネルギーの生産に関わる提案が期待される。また、バイオエネルギーの航空燃料や船舶燃料への利用に関する提案が期待される。
 また、グリーン水素の実用化に向けた研究や水素エネルギー有効活用に関する課題も歓迎する。
 さらに、海洋に囲まれている環太平洋諸国およびASEAN諸国では浮体式洋上風力発電が効果的であり、発電設備開発に関する提案が期待される。

テーマ2:「蓄エネルギー」
 再生可能エネルギーなどの代替エネルギーを展開するにあたり、電力の需給調整のためにエネルギー貯蔵に関する科学技術がより一層求められる。燃料電池や充電池、電池リサイクルなどに関する提案が期待される。
 また、マテリアルズ・インフォマティクスを活用した省エネルギーに向けた材料の設計開発に関する提案が期待される。

テーマ3:「エネルギーマネジメントシステム」
 地域や産業をまたがって効率的にエネルギーを管理するためのシステム開発が求められている。特に自家発電を行う事業体内および事業体間での電力需給調整システムの構築、電力網の信頼性と耐久性の向上、オフィスや家庭での電力使用量削減に関する提案が期待される。

②農業(食料)分野:「Climate-Smart Food Production」
 農業は、アジア地域にとって重要な経済活動であり、食品安全保障を確保し地域経済の発展を促進するための基盤となっている。しかし、これらの国には昨今の気候変動による環境の変化、農業や食料システムの持続可能性、環境負荷を低減しながらの食料生産性の向上、技術格差など解決すべき共通した課題が存在する。食料供給に多大なる影響を及ぼす気候変動への対策は、世界の食料生産システム維持の面からも喫緊の課題となっている。一方、環境の変化や気候変動は農業への負のインパクトをもたらすと同時に、農業自身が環境劣化と気候変動の主要な原因の一つとなっていることにも注視しなければならない。
 2009年国連食糧農業機関(FAO)により提唱された気候変動対応型スマート農業(CSA)は、農業開発と気候変動対応の統合を通じ、持続的な農業生産の改善、強靭性の強化、環境への負荷削減を同時に目指すアプローチである。CSAはこれら3つの主要課題を同時に満たすことのできるトリプルウィン(Triple-Wins)潜在性を秘めており、CSAの想定しうる技術は地域や状況に応じ多種多様である。さらにCSAのスマート農業は耐候性のある品種の開発や有機農業の普及などを通じた持続的な食料生産システムの構築を目指し、長期的な環境の持続可能性を改善することにより農家やアグリビジネスの収益性を高めることが期待できる。
 また、近年わが国でも農業人口減少や農業労働力の高齢化といった問題が深刻化し、耕作放棄地の増加やTPPによる競争激化や地政学的リスクなどによる食料安全保障のような課題が数多く存在する。これらの解決と持続可能な農業の促進のためにスマート農業を活用した新しい形の農業を取り込むことも必要となっている。現在多様な形での研究が進められているスマート農業は、ICT技術や自動化の導入により農業プロセスを効率化し、労働力の持続可能性や効率的な活用が可能となり、生産性を向上させることが期待される。農業におけるデータ収集、分析、モニタリング、自動制御の導入によりリアルタイムでの状況把握やデータと予測に基づく意思決定が可能となることで、環境負荷の軽減、安定した農作物の生産などの課題解決が期待される。
 今後も人工知能(AI)やIoT、ロボット技術の活用により、生産性の飛躍的な向上などイノベーションを推進するために、優先的に取り組むべき課題の特定、研究開発や現地実証、新技術を普及させるための支援や研究が必要とされる。

 本公募は、環太平洋諸国およびASEAN諸国の気候変動に対応し先端技術を用いた食料生産に取り組む研究課題を募集し、多国間連携による地域の能力強化と利益向上に貢献し新しいイノベーションを創出することを目的としている。多国間共同研究を通じて、食料生産性の持続的向上、気候変動への適応とレジリエンスの強化を目的とした革新的な技術や方法論が開発されることにより持続可能な食料生産システムの構築に寄与することが期待される。
 これらの研究は、持続可能な開発目標(SDGs 目標2番: 飢餓をゼロに、目標12番:つくる責任つかう責任、目標13番:気候変動に具体的な対策を、目標14番:海の豊かさを守ろう、目標15番:陸の豊かさも守ろう)への貢献に資することができる。

○想定される研究テーマ

  • 農業に関する革新的なセンシング手法、データ収集手法、分析手法の開発
  • AIを利用した画像解析等による病害虫発生警報システムおよび植物病害診断アプリケーションの設計
  • AIとGPS、無人航空機(UAV)およびその他の自動化技術による、圃場管理、収穫、輸送および包装等における統合された持続可能な管理に関する研究
  • 圃場管理状況を含む作物・食品のリアルタイムモニタリングのためのトラック&トレースシステム(検査・認証システム)の開発
  • 新規就農者支援や経験伝達のためのICTを用いたマニュアルの作成
  • 農場から食卓までの情報を含む統合型のデータプラットフォームの開発
  • 新技術への投資を含む、気候変動対応型スマート農業に関する社会科学的な分析

共同研究コンソーシアムの構成と公募参加機関

共同研究課題は、公募参加国のうち3ヵ国以上の多国間共同研究であることが必要です。参加国の組み合わせは、公募参加国の中から応募者側で自由に提案することが可能です。
採択された共同研究課題には、日本側研究機関にはJSTから、相手国研究チームに対しては相手国側の公募参加機関により支援が実施されます。

e-ASIA JRPの仕組み

支援には、新規予算の配賦による支援の他、予算配賦によらない支援(in-kind)があります。
in-kindの場合、公募参加機関からの研究費支援はありません。当該国側の研究チームの課題実施に必要な経費は、当該国側研究チームの所属機関の運営費等、自国の公募参加機関以外の予算により研究者側で確保する必要があります。
各公募参加機関の詳しい支援内容は公募要領をご覧ください。

公募参加機関と支援タイプ(各国政府の方針により変わることがあります)

 A:新規予算による支援(new)
 B:新規予算または予算配賦によらない支援(new or in-kind)
 C:予算配賦によらない支援(in-kind)

空欄:不参加

参加国名公募参加機関募集分野
代替エネルギー分野
テーマ1
再生可能エネルギー
代替エネルギー分野
テーマ2
蓄エネルギー
代替エネルギー分野
テーマ3
エネルギーマネジメントシステム
農業(食料)
日本 科学技術振興機構(JST) A A A A
カンボジア Ministry of Industry, Science, Technology and Innovation (MISTI) C
インドネシア National Research and Innovation Agency (BRIN) B B B
ミャンマー Ministry of Science and Technology (MOST) C
ニュージーランド Ministry of Business, Innovation and Employment(MBIE) A A A
フィリピン Department of Science and Technology The Philippine Council for Industry, Energy, and Emerging Technology Research and Development (DOST-PCIEERD) A A A
Department of Science and Technology The Philippine Council for Agriculture, Aquatic and Natural Resources Research and Development (DOST-PCAARRD) A
タイ National Research Council of Thailand (NRCT) A
Program Management Unit for Human Resources & Institutional Development, Research and Innovation (PMU-B) A A

※今後参加国が追加される場合は適宜本HPにて公表します。
※JSTではミャンマーを含む応募は受け付けていません。

JSTの支援の内容

採択された日本側研究者は、3年間で直接経費2,700万円を上限として委託研究費をJSTより受け取ることができます。委託研究費には、直接経費の30%に当たる間接経費が別途支給されます。

本研究領域の日本側研究主幹

① 代替エネルギー分野:國分 牧衛(東北大学 名誉教授)
② 農業(食料)分野 :國分 牧衛(東北大学 名誉教授)

募集期間

Lead PIからe-ASIA事務局への応募書類の提出:令和5年12月15日(金)~令和6年3月29日(金)午後7時(日本時間)
日本側研究代表者によるe-Rad登録:令和5年12月15日(金)~令和6年3月29日(金)午後2時(日本時間)
採択決定時期:令和6年11月下旬(予定)
支援開始時期:令和7年4月1日(予定)

応募方法

  • 応募にあたっては、e-ASIA JRP事務局に対する手続きの他、各国公募参加機関ごとに別途必要な手続きが設けられている場合があります。
    共同研究提案の共同研究コンソーシアムを構成する日本側、相手国側、すべての関係国の研究代表者において、自国の公募参加機関が求める応募手続きを期限内に完了してください。 各国公募参加機関が定める手続きが全て完了していない場合、不受理となります。
  • 各国公募参加機関ごとの必要な手続きやルールについては、公募要領のAppendixに記載されています(必要に応じ各国機関へ直接お問い合わせください)。
  • 日本側応募者に関係するルールおよび手続きについては、公募要領のAppendixおよび「日本側応募者への応募にあたっての注意事項」をご確認下さい。
  • 日本側研究代表者が共同研究課題全体のLead PIの場合は、下記の(1)および(2)、Lead PIではない場合は(2)のみが必要になります。

(1)e-ASIA JRP事務局への共同研究課題提案書(英語様式)のeメールによる提出
提出先:e-ASIA JRP 事務局(担当:剱持 由起夫(けんもち ゆきお))
Email:easia_secretariat(at)jst.go.jp (at)を@にしてください。

※郵送、FAXなど、eメール以外の方法で提出された場合、受付できません。
※e-ASIA JRP事務局へ提案書が送付されたら、送信者宛てに1週間以内にメールで受取の確認の連絡を行います。このメールが届かない場合は速やかにe-ASIA JRP事務局へ連絡してください。なお、e-ASIA JRP事務局はメール不達による一切の責任を負いません。

(2)府省共通研究開発管理システム:e-Radへ申請登録
(1)で提出した「共同研究課題提案書(英語様式) Form1E-9E」、「日本側応募様式 Form 1J 及び 2J」をe-Rad上で提出する必要があります。
e-Radへ申請登録がなされなかった場合は審査の対象になりませんのでご注意下さい。
※e-Radの詳しい操作方法については「e-Radによる応募方法」をご覧ください。

必要書類のダウンロード

書類リンク
公募要領 (代替エネルギー分野)(英語のみ) PDF
公募要領 (農業(食料)分野) (英語のみ) PDF
日本側応募者への応募にあたっての注意事項 PDF
e-Radによる応募方法 PDF
共同研究課題提案書(英語様式):代替エネルギー分野 Form1E-9E Word
共同研究課題提案書(英語様式):農業(食料)分野 Form1E-9E Word
日本側応募様式 Form 1J 及び 2J(代替エネルギー分野) Word
日本側応募様式 Form 1J 及び 2J(農業(食料)分野) Word

問い合わせ

国立研究開発法人科学技術振興機構
国際部 事業実施グループ
e-ASIA JRP担当 代替エネルギー:大塚(おおつか)、農業(食料):山中(やまなか)、勝又(かつまた)
TEL:03-5214-7375 FAX:03-5214-7379
E-mail:easiajrp(at)jst.go.jp (at)を@にしてください。