無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現

技術紹介

不揮発性をベースとする最先端のスピントロニクスを駆使し、情報を低消費電力で高速に記録

現在のコンピューターを構成している電子デバイスは、CPUから、メモリ、ストレージまで、消費電力が大きいという根本的な問題を抱えている。たとえば、DRAMやSRAMのような揮発メモリは、データを記録・保持するために常に電力供給が必要となる。一方、不揮発性メモリならば電源を切っても記録は消えない。これだけでも待機電力は低減できる。ただし、動作中は不揮発性メモリでも、電流による書き込みを行うため、やはり電力を消費することになる。

そこで本プログラムでは、不揮発性をベースとする最先端のスピントロニクスを駆使し、情報を記録させるスピンメモリなどのデバイスの開発に挑戦する。スピントロニクスとは、電子が持つ電荷に加え、磁石の元となる電子スピン(電子の自転)を制御することで、情報の記録や伝達などの工学分野への応用を対象とする科学技術分野である。スピントロニクスデバイスを使えば、電気が途絶えても情報が保持され、データの書き込みと読み出しの時だけ電気を使えばよい。また集積回路全体ではなく、使う部分だけに電気を使えばよいため、使用電力は大幅に減る。

プログラムの革新的重要技術

SOT-MRAM

スピン軌道トルク(SOT)により情報を記録するスピンを制御する。
超高速・超低消費電力を実現するMRAM(磁気メモリ)。

電圧駆動MRAM

電圧により磁気異方性を制御することにより情報を記録するスピンを制御する。超高集積・超低消費電力を実現するMRAM(磁気メモリ)。

本プログラムでは、このようなスピントロニクスを活用した新たな集積回路を開発していく。さらに画期的な点は、従来の研究では、電流による制御が中心だったのに対し、今回の研究では“電圧”(電界)による制御を行うことである。これによるデバイスには、ほとんど電流が流れないため発熱が抑えられる。最終的には、電源がオフの状態でも記録が保持され、動作時の消費電力も従来の100分の1まで低減することを目指す。

この「電流から電圧」への開発の経緯は、いわば従来の電子の電荷のみを使うエレクトロニクスが、真空管から始まり、電流駆動型のバイポーラトランジスタ、電圧駆動型の電界効果型トランジスタ(FET)へと進化の変遷をたとってきたのと同様の流れになる。スピントロニクスの世界でも電流駆動型から従来不可能とされていた電圧駆動型への非連続イノベーションが実現されれば、大きなゲームチェンジを引き起こすことになる。

無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現

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