日々の仕事を通じて、人類の幸福に向かって挑戦していることを実感しています。

挑戦的研究開発プログラム部
プログラム推進グループ 主査

川﨑瑞己

理学系研究科(生物化学専攻)修了
2015年入職

PERSON JSTの人

01 最初の部署では開発途上国との共同研究プログラムを担当

 大学、大学院と生物学を学び、線虫をモデル生物に、神経系機能の研究をしていました。同じ研究室に何人もすばらしい研究者がいたことから、就職に際して、自分が研究者になるより、そうした人を支援する機関で働きたいと思うようになりました。たまたま所属していた研究室がJSTの支援を受けていたので、JSTの存在は知っていました。
 入職して最初に配属された国際部では、SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)に携わりました。これはJSTとJICA(国際協力機構)が連携して、開発途上国との共同研究を行うプログラムです。私が抱いていたJSTのイメージは、自国である日本国内の研究支援だったので、海外の研究者との共同研究事業も手がけていることには新鮮な驚きがありました。3年間、国際部で仕事をした後、AMED(日本医療研究開発機構)に出向し、感染症研究課でさまざまな支援の調整業務を行いました。

02 新たな目標検討のためのビジョンを描く

 AMEDでの2年の勤務を終え、設立されたばかりの現部署に異動しました。挑戦的研究開発プログラム部は、日本政府が打ち出した「ムーンショット型」の研究開発を推進するために新しくできた部署です。「ムーンショット」とは、難易度は高いけれど、実現すれば社会に大きな好影響を与える挑戦のこと。アメリカのケネディ大統領がかつて「1960年代までに人類を月に送る」と宣言、実行したことに由来します。
 ムーンショット型研究開発制度は、内閣官房、内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省が管轄し、JSTをはじめとする複数の研究開発法人(*1)が推進を担っています。現在掲げられている目標は7つあり、いずれも2050年までの実現を目標にしています。その中の4つ(*2)をJSTが担当しています。
 現在、私が携わっているのは、この4つのムーンショット目標に共通する業務で、各研究開発プロジェクトの提案とその推進を担うPM(プロジェクトマネージャー)の公募・選考、プロジェクトの進捗管理、国際連携推進などの運営業務全般です。そのほか、様々な分野の有識者で構成された事業全体の統括を行うガバニング委員会の運営もしています。
 ムーンショット型研究開発の大きな特色は、設定した目標からバックキャスト(逆算)で研究開発を進めること。つまり、2050年のあるべき世界を思い描くことが必要になります。その一環として実現したい未来社会のイメージをイラストにする仕事にも携わりました。
 5年間で予算800億円とスケールが大きく、基金として運営されていることも特色で、ある研究が途中でうまくいかなくなってしまったときは中断して別の研究に予算を振り分けるといったことも可能です。失敗を恐れずに将来の成長分野をダイナミックに切り拓いていくための新しい研究開発の制度になっています。
 国外の関心も高く、米国や欧州との連携も始まりつつあるなど、日々新しいことが起き、刺激的です。また社会の関心という点からも従来の研究開発とはかなり違い、ユーチューバーが話題として取り上げるなど、注目度の高さを感じます。

03 部署を越えたノウハウを取り込んで成功をめざす

 大規模な新規事業という点では、どう事業を運営していくかを制度設計から自分で考え、実行できることにやりがいを感じています。さらに長期的には、地球温暖化、少子高齢化などさまざまな課題を解決し、人類の幸福に向けて挑戦していることが日々実感できることにも喜びがあります。
 ムーンショット型事業は分野横断的な要素が多く、目標を達成するには、特定分野の研究だけでは不可能。そこで、各目標にPD(構想ディレクター)を設置し、PDが複数の研究開発を組み合わせ、実現のための「ポートフォリオ」を作成しています。ここは苦労の多い部分です。
 このようにさまざまな特色のある研究開発だけに、JSTの強みが活きる場面も多いと思います。JSTにはさまざまな部署があり、それぞれが優れたノウハウを蓄積しているので、それらをうまく取り込みながら、ムーンショットを成功に導いていきたいですね。

(*1) JST(科学技術振興機構)、AMED(日本医療研究開発機構)、BRAIN(農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の国立研究開発法人4機関

(*2) JSTが担当する目標は4つ

  • ムーンショット目標1:「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」
  • ムーンショット目標2:「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」
  • ムーンショット目標3:「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」
  • ムーンショット目標6:「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」

9:30 出社、メールチェック
10:00 PDとの打ち合わせ(今後のスケジュールやPMが作成した計画書の内容確認など)
12:00 昼食
13:00 部内打ち合わせ(各目標の進捗状況や懸念点などの共有)
15:00 午前中の打ち合わせ内容を踏まえ、次週の会議資料の作成
17:00 他部署との打ち合わせ
※所属部署および掲載内容は取材当時のものです
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