昨年3月の東日本大震災そして大津波により、東日本太平洋沿岸の「水産加工」→「加工残滓処理(魚粉化)」→「配合飼料製造、養殖・栽培漁業」→「水産加工」のサプライチェーンは壊滅的に寸断してしまいました。漁港、魚市場、水産加工場、製氷業、冷凍・保管業、船舶・船用機関製造修理業、魚網製造修理業、配合飼料・餌料製造業、運送業など、どれ一つ欠けても夫々の最適な稼働状態は得られません。
震災から1年を経た今、これまで従事していた人々は、復旧に懸命の努力を注いでいます。しかしながら、「旧」に復するだけなら、右肩下がりの時代を再び甘受しなければならないことは明白であります。被災した東日本太平洋岸沿岸地域が未来型産業のモデル地域として生まれ変わるためには、復しつつ「新」を興すことが不可欠であります。復しつつ「新」を興すことはまさしく「挑戦」であります。
そこで、本技術テーマでは、水産加工サプライチェーンを我が国が誇れる産業として蘇生すべく、サプライチェーンの各ステージにイノベーションを導入することで、時代と社会の潮流に見合った産業と雇用を創出していくことを目的とします。そのため、大学・公的研究機関等における構想力溢れる基盤的な技術開発・研究を推進し、東日本太平洋沿岸復興に止まらず、我が国の産業競争力の創生と社会基盤の強化に資する成果を得ることを目指します。
また、運営期間中、「産学共創の場」というプラットホームを設置し、各研究課題の進捗状況や成果創出状況、産業界の要望等を議論し、研究の推進方針に積極的に反映していきます。
たとえば、かに風味かまぼこに代表される練り製品開発、見事なまでに効率的なフィッシュミール製造プロセスの開発など、水産加工に係る我が国の技術は、爾来、世界的に見て最先端を走ってきていました。これらの技術は雇用、経済を含め、絶えず我が国の社会基盤に大きく貢献してきていましたが、昨年の大震災、大津波で一転してしまいました。片や海外諸国の追い上げも極めて急速です。もし、水産加工技術全般における我が国の優位性が失われることとなれば、その影響は水産加工分野を越えて我が国の産業全体に広がり、特に東アジア貿易を含め我が国の食関連産業の国際競争力の低下へと繋がることにもなりかねません。
かに風味かまぼこの場合、製造技術が提案されてから40年が経過しました。この間、水産加工に係る研究は、細分化された学問体系の下でそれなりに深化してきていますが、我が国の産業、経済に影響をもたらす如きブレークスルーを生み出しているかと言えば、必ずしも是認しかねるのが現状であります。食品科学・栄養科学(タンパク質、脂質、糖質、酵素)、健康機能、栄養機能、生活習慣病、生理活性物質、機能性評価、鮮度保持、食品衛生などにカテゴライズされ、加工利用に関する諸問題を産業として取り上げて研究や技術開発を進化させるような土壌が育ち難かったのかもしれません。
このような状況に対応するためには、加工利用の原点に戻って革新的な実学としての水産加工の未来創生に向け、我が国の産学の英知を結集し戦略的に取り組むことが急務です。今、東日本太平洋沿岸復興だけではなく、日本創生の構想力が問われているのです。
上記背景のもと、革新的な実学としての水産加工の未来創生の基盤技術形成のための技術開発・研究を募集します。
水産加工業界等のリアルニーズに基づく技術課題としては、
等が挙げられますが、今混迷している我が国水産加工の関連業界にブレークスルーを生みだすような横断的な新技術を広く想定します。数年後にはこれらに繋げるために、大学・公的研究機関等から下記の例のような提案を求めます。
応募いただく提案は例示に限定するものではありませんが、審査に際しては、研究目的、独創性、計画の妥当性、実現性等に加えて、本技術テーマとの関連性および復興への情熱を重視します。若手研究者を含め、工学、農学、薬学等、広範囲な研究領域の研究者からの応募を期待します。
本プログラムで対象とする研究は、大学・公的研究機関等の研究者による基盤研究であり,将来的には研究成果が必ずや我が国の水産加工関連産業の未来を創生し、被災地がそのモデルとして復興するという視点に立脚して取り組んでいただくことを目指しています。この目的の達成を促進するために、「産学共創の場」というプラットホームを設けます。この場において、各研究課題の進捗状況や成果創出状況、産業界の要望等を議論して頂きます。各研究者には、そこで、産業界からのリアルな要望も取り入れながら研究を進めていいただくことになります。
採択時のプレスリリースは、こちら
(氏名五十音順)
鈴木 康夫 (宮城大学 地域連携センター 教授)
(氏名五十音順・敬称略)
稲井 幹男 (石巻魚糧工業株式会社 代表取締役社長)
大島 忠俊 (株式会社二印大島水産 代表取締役社長)
岡部 敏弘 (地方独立行政法人青森県産業技術センター 理事/同センター工業総合研究所 所長)
北川 尚美 (東北大学 大学院工学研究科 准教授)
木村 郁夫 (鹿児島大学 水産学部 教授)
坂本 義信 (株式会社極洋 塩釜研究所 所長)
藤井 智幸 (東北大学 大学院農学研究科 教授)
山内 晧平 (愛媛大学 社会連携推進機構 教授/同大学 南予水産研究センター センター長)
脇屋 和紀 (株式会社大川原製作所 取締役 開発本部長)