Functional Organoids 技術を確立し、
ヒトの健康長寿や疾患発症の理解に寄与することを目指します。
我々のからだは様々な臓器や器官を構成する細胞から成り立ち、それぞれの細胞は通常からだの恒常性の維持や環境変化に対する適応・修復などの複数の機能に寄与しています。しかし生体内細胞の複雑な機能を試験管内で十分に再現ができているとはいえません。これは、細胞が生体内と同様の細胞内および細胞どうしのネットワークを構成できる生物モデルが不十分なためでした。
こうした現状を打破するために、遺伝学レベルからの創発を包含し、かつ、複雑な個体・臓器システムからのサブシステムに切り出すことのできる多細胞組織レベルの研究手法として、単一の細胞から組織を擬似した構造体「Organoids(オルガノイド)」を作る技術が確立されました。この技術は組織幹細胞の自己組織化に依拠し、生体内細胞が有する微小環境因子を試験管内で再構築することによってその能力を引き出すモデルシステムといえます。
過去10年で、オルガノイド技術はさまざまな組織への応用が進み、多くの組織細胞モデルが確立されました。しかし、幹細胞の増殖性が注目される一方で未だに機能的な成熟が不十分であるという課題が残っています。
このプロジェクトでは、成体組織細胞の「Functional Organoids(機能的オルガノイド)」技術を確立し、ヒトの健康長寿や疾患発症の理解に寄与することを目指します。具体的には、オルガノイドの機能化因子の同定を通じて基盤技術を構築し、それを利用して組織ごとに構造、エネルギー代謝、情報制御の3つの視点で機能試験を行い、技術基盤を発展させます。
この確立された技術基盤により、体内の複雑なシステムネットワーク機構とその破綻を理解することで、医学生物学研究に新たな機会が生まれるでしょう。これにより、測定検査機器開発、創薬開発、栄養食品研究など、広範な波及効果が期待されます。