
グローバル・イノベーション・エコシステム2007
-躍動する世界を目指して-
グローバル化の進展に伴い、国境を越えたイノベーションの創出がより活発化している。Web 2.0に代表されるように、情報通信技術の飛躍的進化が世界的規模での経済活動を急速に革新している。同時に、環境・エネルギー問題、感染症対策等地球規模での課題がますます顕在化している。このような潮流の中で、各国は経済成長と国際競争力の強化のみならず、地球規模での課題解決に向けて具体的行動を起こすことが求められている。
イノベーションの創出のため、欧米を中心とした各国では、科学技術投資など狭い範囲ではなく、教育改革や地域レベルにおけるイノベーションシステムの構築など「社会システム全体」を変革することによって、イノベーションを推進しようとする「ナショナル・イノベーション・エコシステム(NIES)」の構築への取り組みが顕著である。NIESとは、国のイノベーションが実現する様子を生態系(エコシステム)になぞらえて表現したものである。そこでは科学技術イノベーションは、ビジネスマン、学術研究者、行政官、消費者等のプレーヤーが、その国の制度や社会的環境の中で生態系におけるように自律的に活動し、かつ相互に作用することを通じて達成される。
日本では、安倍総理のスローガンとする「オープン」、「イノベーション」を実現するために、2006年6月、長期戦略指針「イノベーション25」が策定された。しかし、社会システム全体の変革こそ継続的にイノベーションを続けていく最大の要件であるという認識とそれに基づく実際の行動もまだ緒についたばかりである。
各国のNIESにおける活動を世界規模で展開するには、「グローバル・イノベーション・エコシステム(GIES)」の概念が重要である。昨年京都で開かれた国際会議GIES2006では、様々な国家、地域、都市が競争かつ協力しながら共生し、様々なプレーヤーが相補い合って課題を解決していく社会システムであるGIESの重要性が提唱された。
GIES2007シンポジウムでは、我が国のイノベーションに関する最新の政策や諸外国の取り組みを踏まえ、躍動する世界と持続的社会の構築を目指したイノベーションのグローバルな展開には何が必要か、日本はどのように役割を果たすのかを議論し、解決策を求めることを目指す。企業の競争力の向上を実現しつつ環境・エネルギー、感染症など地球規模の課題の解決を図るため、持続可能な地球社会の実現に向けて、経済的価値とともに大きな社会的価値を生み出すグローバルなイノベーションに有効なシステムとはどうあるべきか、議論する。そして、日本をはじめとする各国が課題解決に向けて、どのようにして独自の強みを活用していくのか、実際の活動に結びつくシステムについて検討する。
2007年6月