2020年国際化学オリンピック(第52回トルコ・イスタンブール大会)の準備問題として発表された実験課題から選んだテーマについて作成した演示動画です。
3通りの有機・高分子合成化学、錯体の生成定数を吸光スペクトル測定から求める無機・分析化学、反応温度を変えて脱色に要する時間から反応速度係数、さらに活性化エネルギーを決定する物理化学の各実験では、操作を行うための要点だけでなく、操作の原理の理解と客観性のあるデータの処理方法の解説に工夫をしています。



  • 高分子ヒドロゲルによる薬物輸送
    (薬物を含んだヒドロゲルの合成と薬物放出挙動の追跡)


    「高分子ヒドロゲル」を「合成」し「薬品の溶出」を追跡します。高分子材料の製造では溶媒蒸発除去など厄介な操作は避け「反応後の塊がそのまま製品」です。しかし溶媒の無い反応は制御が大変です。今回どんな工夫をしたでしょう。また高分子材料内に残った物質が生態系へ漏れ出す懸念もあります。ここではそれを逆手に取り、薬効成分を徐々に放出する材料を思い描いて、生体に見立てた水溶液の吸光度測定で濃度変化を調べます。



  • 錯体の精製にともなう
    吸収スペクトルの変化


    塩基性有機化合物のピリジンとハロゲン分子のヨウ素を溶媒中で混ぜると錯体という会合体が形成され、元のピリジンとヨウ素との平衡状態となります。この実験ではピリジンとヨウ素の濃度の積と錯体の濃度の比例定数である「錯体の生成定数」を求めます。その際、濃度の代わりに吸光度を利用します。実験前半では精確な吸収スペクトルの測定を可能にする、試料溶液の作成、吸収スペクトルの測定の手順の要点を演示説明します。



  • 分光光学的な手法による
    錯体の生成定数の決定


    いくつかの混合割合のピリジンとヨウ素の溶液の吸光度を用いてピリジン―ヨウ素錯体の生成定数を決定する方法について、吸収スペクトルの活用に必要な知識、生成定数を得るための数式の変換や数値の近似の考え方などを解説します。 登場する物理量の関係の整理を通して、実験結果がどのような既知および未知の数値から構成されているかの理解をめざし、具体的に測定値のプロットとそこからの未知数字の算出を行います。



  • 1-プロモブタン酸性条件下での
    SN2反応


    1-ブタノールと臭化ナトリウムの酸性条件下での二分子型求核置換(SN2)反応による1-ブロモブタンの合成実験です。濃硫酸という強酸をまとまった量で扱うので、添加速度調整、温度の確認と制御方法など危険回避の注意が重要です。この実験の生成物は液体であり、その場合の反応後処理方法として、反応終了後の混合液からの抽出・分液操作と単蒸留による分離、そして分別蒸留による精製操作の要点などを演示します。



  • 2,3ージヒドロ-5,6-ジフェニルピラジンイミン形成反応

    芳香族ジケトンのカルボニル化合物とアミノ基を二つ有するジアミノエタンとの二重の脱水イミン形成反応による、炭素以外の元素を環内に持つ環状化合物の合成実験です。反応が2回続いて起きることが必要で、確認のため薄層クロマトグラフィー(TLC)を利用します。この実験では目的生成物が固体であり、その分離と精製に分別結晶と再結晶を行います。固体物質の融点の測定を精度よく行うための実験作法の要点も演示します。



  • 臭化物/臭素酸塩の反応の
    活性化エネルギー


    臭化カリウムと臭素酸カリウムの反応で生成する臭素分子の生成速度を調べる物理化学実験です。臭素と速やかに反応するフェノールが予め一定量存在する溶液中では、反応が一定量まで進むと余った臭素が指示薬と反応して脱色します。何点かの温度で脱色に要する時間を測って温度ごとの反応速度定数を求め、そこから活性化エネルギーを決定します。実験の後半では、精確なデータ処理に必須のデータのプロットの作法を解説演示します。