細胞壁のない国産温泉藻類とその利用
宮城島 進也(国立遺伝学研究所)
廣岡 俊亮(国立遺伝学研究所)
本技術のポイント
- ● 使用する藻類:酸性温泉に生息する微細紅藻イデユコゴメ類(シアニジウム属、ガルデリア属など)
- ● 細胞壁強度の制御:利用目的に応じて細胞内容物の溶出性を調節(腸管免疫飼料など)
- ● 遺伝子組み換えでない遺伝的改変(セルフクローニング)による機能性向上
- ● 遺伝子導入によるワクチン等の発現:防疫飼料
- ● 弱酸性化海水を用いた安価な大量培養方法を開発:コンタミネーション防止、生物学的封じ込め
発明の概要
<日本産の新種イデユコゴメの単離・培養株の樹立、細胞壁のない1倍体の作出・培養に成功>



- ● 草津や箱根などの高温・強酸性下(35~58℃、pH0.05~5.0)で生息
- ● シアニジウムとガルデリア(2倍体)は球状で強固な細胞壁に包まれる
- ● 今回発見した1倍体は楕円形で細胞壁を持たない
- ● 細胞壁を持たない1倍体を遺伝的改変、1倍体と2倍体の相互変換に成功
- ⇒2倍体の細胞壁強度の調節が可能に
- ● 天然海水を用いた安価な屋外開放培養を開発
<遺伝的改変による代謝改善、機能性改善>
- ● 相同組換えによるゲノム任意箇所の編集・導入遺伝子の発現が可能
- ● セルフクローニングによる有用物質増量が可能

従来技術・競合技術との比較・優位性
1. 藻類の培養が容易


- ● 海水培養が可能で、海水培地では細菌の混入を防止できる。
- ⇒開放培養が可能
- ● 高温耐性のある藻類のため、冷却が不要
- ● 高密度に増える
- ⇒製造コストが低減
2. 使用する藻類はもともと高栄養価・高安全性


組成(シゾン100g乾燥重量中)
急性経口毒性試験(ラット) | LD50 >2000mg/kg |
変異原性試験 | 陰性 |
Amesテスト | 陰性 |
Rec-Assay | 陰性 |
食品アレルゲン検査 | 陰性 |
食品安全性試験(日本産シアニジウム)
想定される用途
<特有の性質>
- ・酸性耐性のマイクロカプセル化
- ・形質転換技術
- ・セルフクローニングによる増量
- ・高い栄養価

<用途>
- ● 機能性飼料、食品+防疫飼料、医薬品のDDS
- ● 有用物製造のツールとして
- ● 健康食品、化粧品、ペットフードとして
ライセンス可能な特許
発明の名称:新規微細藻類、及びその使用
国際公開番号:WO2019/107385
登録番号:特許第6852190号(3.07MB)