新たなPPARδアゴニストによるフレイル対策
~糖尿病治療薬メトホルミンの運動能力向上効果に基づく創薬~
小椋 利彦(東北大学・名誉教授、京都大学)
発明のポイント
【PPARδ活性化の新しいメカニズムの発見】
- ●メトホルミン(経口糖尿病治療薬)がPPARδのアゴニスト*であることを見出した
- ●安全性の高い、PPARδアゴニスト活性を有する新規化合物の合成に成功

アゴニスト
↓結合

- PPARδの機能が活性化
- →運動機能向上
- →心筋症の発症抑制
- →肝保護効果・抗繊維化効果
高齢化問題の1つである虚弱(フレイル)対策としてExercise pillの創薬へ
*アゴニスト
受容体に結合し、細胞内シグナル伝達を活性化する、生体内に存在しない物質。
リガンドは生体内に存在する同様の働きをする物質。
発明の概要
- PPARδ
- Peroxisome proliferator-activated receptor δ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ)
- ・様々な組織において広く発現。
- ・脂質異化、輸送、蓄積等の制御において重要な転写調節因子。
- ・既存のPPARδアゴニストは複数あるが、一部は発がん性を持つため開発中止。
【新規PPARδアゴニストの探索】

メトホルミン投与+トレーニング
→運動能力が向上
参考:研究ネット
(https://www.wdb.com/kenq/illust/mouse)


メトロホルミン/PPARδ複合体のX線結晶構造のデータからSBDD**を実施
**SBDD:Structure Based Drug Design

PPARδに対するアゴニスト活性を有すると予測される構造を持つ新規化合物を合成

従来技術との比較・優位性
【PPARδにより発現誘導される遺伝子の発現量への影響】

- 赤矢印:新規化合物
- 緑矢印:対象薬GW0742
(メトホルミンの同効薬)
脂質代謝、運動耐性に関わる遺伝子の発現量が増加
↑
PPARδによりその標的遺伝子の発現誘導
↑
新規化合物によりPPARδ転写活性が活性化
新規化合物はPPARδアゴニスト活性をもつ。
ある濃度以上になると、メトホルミン同効薬よりも、高い効果を示す。
想定される用途
- ◎ 運動耐性改善剤、代謝異常等の治療または予防のための医薬用組成物
- ◎ PPARδアゴニスト創薬に向けた分子設計(SBDD)用データの提供
- ◎ PPARα,γ ,δアゴニスト創薬に向けたビグアニド化合物に関する情報提供
ライセンス可能な特許
発明の名称:PPARδ活性化剤
国際公開番号:WO2020/085393
登録番号:特許第7397491号(3.81MB)