配列自由度を向上させるDNA接着末端形成技術
~用途に応じて3つの技術を選択可能~
阿部 洋(名古屋大学 理学研究科)
発明のポイント
遺伝子組み換えベクターを作成する際等に必要な、配列設計の自由度・DNA連結反応の効率を向上させることができる、接着末端形成技術を3通り開発(発明①、②、③)。
化学的手法のため、一端のみ接着末端にしたり、直鎖DNAに連結することができる。
接着端長 | 配列自由度 | コスト | 連結効率 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|---|
従来法(酵素:BsaI) | 4 nt | △ | ◎ | ○ | Golden Gate Assembly |
従来法(化学的手法:5-ethynyl U) | ~50 nt | △ | ○ | ○ | 切断条件が過酷 |
発明①切断プライマー | ~50 nt | ○ | ○ | ○ | in vivoで切断可 |
発明②ストッププライマー | ~150 nt | ◎ | ○ | ◎ | ゲノム合成用の長いDNAの連結も可能 |
発明③銀ナノ粒子処理 | ~50 nt | ○ | △ | ○ | DNAの損傷が少なく、収率が高い |
発明の概要
①切断プライマー
イオウ、セレン基を介した光脱離基で2’位を置換した核酸を含むプライマー(切断プライマー)でPCRし、Fill-in反応、光照射脱保護及び切断することで接着末端を形成する。

②ストッププライマー
リン酸基を介した光脱離基で修飾した核酸を含むプライマー(ストッププライマー)でPCRし、光照射で脱保護することで接着末端を形成する。

長い接着端を作成できるため連結効率が高い
③銀ナノ粒子処理
チオ化オリゴ核酸を含んだプライマーを用いて増幅させたPCR産物を銀ナノ粒子で切断して接着末端を形成する。

従来技術との比較・優位性
①切断プライマー
接着末端の形成

光照射による定量的な切断を確認した。
連結効率

制限酵素と同程度の連結効率を示した。
②ストッププライマー
接着末端の形成

光脱離基核酸を2つにすることで伸長の停止を確認した。
連結効率

制限酵素と比較し高い連結効率を示した。
③銀ナノ粒子処理
接着末端の形成
切断剤 | 切断率 | 回収率 |
---|---|---|
硝酸銀 | 98.7% | 14.4% |
銀ナノ粒子 | 89.6% | 98.4% |

硝酸銀処理と同程度の切断率、高い回収効率を示した。
連結効率

制限酵素と同程度の連結効率を示した。
想定される用途
- ◎ 合成スケール・反応効率に優れた、酵素反応に代わる新規化学的DNA合成ツール
- (遺伝子組換え製品のためのベクター作製、ゲノム合成に使用可能)
ライセンス可能な特許
- 1. 発明の名称:プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
国際公開番号:WO2021/020561
登録番号:特許第7521816号(606KB) - 2. 発明の名称:プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
国際公開番号:WO2021/020562
登録番号:特許第7551134号(612KB) - 3. 発明の名称:核酸鎖切断方法及び核酸鎖切断装置並びに二本鎖DNAの製造方法及び二本鎖DNAの製造装置
国際公開番号:WO2023/054391