音響誘起電磁法による体内線維の非侵襲センシング
生嶋 健司(東京農工大学)
発明のポイント
物体内部の電気的・磁気的情報を空間分解能をもって測定するためには、観測したい深部に“波”を使って電気・磁気量にリモート変調をほどこし、復調技術をもって高感度に測定することが基本だろう。
もっとも容易に電気・磁気量に変調を施すことができる“波”は、光や電波である。
しかし、光はコンクリートや人体を透過しない。電波は波長が長いため、空間分解能がでない。
そこで、我々は“音波”に着目。音波は、人体においても比較的深部まで到達し、しかも1mm以下の空間分解能を出せる。
この音波を利用した電気・磁気測定法が、我々が提案・実施してきた音響誘起電磁(ASEM)法である。
発明の概要
組織に超音波を照射し線維化度合を、断面において可視化できる。
本発明が提供できる技術:非侵襲で、線維化組織(コラーゲンなど)からの信号を、直接観測できる。信号強度を解析し、線維化度合を、定量的かつ、視覚的に画像評価できる手段を提供できる。

(コラーゲン・エラスチン)

- ただし、
- ・生体に近い湿潤環境では?
- ・画像化は?

- ・生体環境でも測定可能
- ・超音波走査で画像化可能

従来技術との比較・優位性
方法/機器 | 生検 | MRI | X線, CT | エラストグフィ | ASEM法(本技術) |
---|---|---|---|---|---|
線維化診断 | 〇 現状の主流 | △ (心臓の一部疾患) | △ (肺) | △ (肝臓) | 〇 (臓器を問わず) |
測定量 | 光学顕微鏡像 | 造影剤の滞留 | すりガラス陰影 | 加圧等によるエコー変化やせん断波の音速 | コラーゲンの圧電分極 (超音波誘起分極) |
評価対象 | コラーゲン分布 | 血液の漏れ | 線維による散乱・吸収 | 組織の硬さ弾性率/質量密度 | コラーゲン分布 |
侵襲 | 有り | 造影剤の副作用有り | 被爆あり | 無し | 無し |
繰り返し検査 | × | △ | △ | ◎ | ◎ |
軽量化・ユーザビリティ | - | × | × | モバイル可 | モバイル可 |
コスト | - | × | △ | ◎ | ◎ |
通常の超音波測定
- ・音響インピーダンス
- ・音速

- ・質量密度
- ◎弾性率

(ASEM法)
(Acoustically Stimulated EM Method)

想定される用途
想定される用途(医療・介護分野)
- 臓器の線維化診断
- コラーゲン蓄積の有無
- 慢性疾患・がん
- 腱・靭帯・大動脈の診断
- 膝関節症
- 凍結肩
- 大動脈解離
- 治癒評価:骨折,腱・靭帯断裂
- 介護・リハビリ・スポーツ
- 適切な負荷の制御
- 運動効果の可視化
- 早期治療の指標
- 骨粗鬆症診断
- 結晶性・配向性,骨質

ライセンス可能な特許
発明の名称:線維化測定装置、線維化測定方法および特性測定装置
国際公開番号:WO2021/039104(移行国:日本、米国)
登録番号:特許第7572063号(323KB)