粗い予測値を使って精密な制御をする技術
~予測ガバナ~
南 裕樹(大阪大学)
発明のポイント
システム制御を実現するにあたり、必要な情報をリアルタイムに取得しようとすると予測(推定)した精度が低い、一方、高い予測(推定)精度を得ようとするとリアルタイムには取れない、
というトレードオフの課題があります。
当特許はこの課題を解決する技術です。
- 自動車のレーンキープ制御
- ⇒白線の位置から経路を予測
白線検出の精度とリアルタイム性にトレードオフがある。
- 画像処理1はリアルタイムであるが、白線検出精度が低い。
- 画像処理2は白線検出精度は高いが、リアルタイムではない。

発明の概要
- 「予測ガバナ」
- 予測値を用いて制御対象を制御する際、予測の粗さが制御対象の振る舞いに影響を与えます。
- 本技術は予測値をそのまま用いるのではなく、
- ①制御対象の動特性
- ②過去の実績情報
- を考慮し、積極的に予測値を整形することで、制御対象の振る舞いを望ましいものに近づけるというものです。

実験結果
電力システムや自動運転システムなどでは、AI予測技術を利用して意思決定・制御に必要な情報を予測します。
しかし、現実には完全な予測はできず、間違うこともあります。
従来
- 予測が不確実だと,システムの意思決定・制御の信頼性が低くなる.

本研究
- 予測ガバナをアドオンするだけで,システムの意思決定・制御の信頼性が高くなる.

電力システムの需給バランス制御のシミュレーションを行い、制御の精度が約55%向上することを確認しました。

(周波数変動が小さい方が電力システムの信頼性が高い)
想定される用途
- 自動運転分野
- 自動運転実現においては周辺環境の予測が必要であるが、不確かな環境下において、実時間での精度の良い予測は困難→提案技術により予測値を補正することで運転性能が向上
- 電力分野
- 需要量予測値に発電機の特性を考慮した補正を考慮することで性能向上
- 医療分野
- インスリンの投薬制御では採血が患者に大きな負担を与える。非侵襲型センサを利用した血糖値予測があるが予測誤差が投薬の精度に影響を与える→提案技術により、予測誤差による影響を最小化、精度向上
ライセンス可能な特許
発明の名称:予測値整形システム、制御システム、予測値整形方法、制御方法、及び予測値整形プログラム
国際公開番号:WO2016/056176(移行国:日本、米国、欧州、中国)
登録番号:特許第6632538号(271KB)、米国10372089(1.26MB)