高品質h-BN膜とその製法
~MOCVD法による結晶性・膜厚均一性の高いh-BN薄膜合成~
吾郷 浩樹(九州大学)
発明のポイント
六方晶窒化ホウ素(h-BN)薄膜は2次元トランジスタの絶縁層として有望な材料。
本発明では、FeNi合金を触媒とするCVD法により、高品質な多層h-BN薄膜を作製可能。

グラフェン(G)

六方晶窒化ホウ素 (h-BN)

MoS2

発明の概要
- ・従来技術によるh-BN薄膜の製法は、以下の2方法があった。
- ・h-BN結晶粒から粘着テープによる剥離
- ・Cu,Fe箔上にボラジンを原料とするCVD法で成膜
- ・本発明は、単結晶基板上に成膜したFeNi合金上にボラジンを供給するCVD法による成膜であり、該FeNi合金にB,N原子が固溶し、冷却によりh-BN膜が表面に析出する(下図上)。
- ・本発明のh-BN薄膜を下地にすることで、グラフェンやWS2等の2次元材料の特性が向上する効果が認められている(下図下)。


従来技術との比較・優位性
従来技術 | 本発明 | |
---|---|---|
剥離法 | 簡便に高結晶性のh-BN薄片を得られるが、非常に小さい(mmレベル)。 | 比較的高結晶性のh-BNを大面積(原理的にはウェハースケールで)に得られる。 |
CVD法 (単層) | Cu箔、Cu薄膜が主に用いられる。単層は薄過ぎて、SiO2基板表面の電荷不純物や凹凸の影響を遮蔽できない。 | h-BNが多層で十分に厚いため、SiO2基板の影響を効果的に遮へいすることが可能。 |
CVD法 (多層) |
Cu箔は、N原子が固溶せず、原料の分解物の堆積によりh-BN膜が生成するため結晶性が著しく低い。 Fe箔は、N,B原子が固溶し、冷却により結晶性の良いh-BN膜が表面に析出するが、層数均一性に劣る。 |
Ni-Fe薄膜にすることで、均一性を高めた多層h-BNを合成できる。 NiとFeを組み合わせることのメリット
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想定される用途
- ◎ 主たる用途として、グラフェン薄膜の下地(グラフェンの移動度を向上させる効果を有する)
- ◎ その他の用途として、TMRなどのスピン素子の絶縁層、有機EL等のガスバリア層、絶縁性放熱材料
ライセンス可能な特許
発明の名称:六方晶窒化ホウ素薄膜とその製造方法
国際公開番号:WO2018/128193(移行国:日本、米国、欧州、韓国、中国)
登録番号:特許第7136453号(1.48MB)、米国11352692(6.34MB)