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ナノワイヤ水素ガスセンサ
~加熱不要で高速応答・回復~

真島 豊(東京工業大学)

発明のポイント

  • ・従来の水素ガスセンサのようなセンサ素子部分の加熱は不要
  • ・従来の水素ガスセンサと比べ、特に回復特性に優れる
  • ・超小型(2✕2mm2程度)、超低消費電力

発明の概要

ナノ領域では下記のようにナノワイヤの曲率半径が10-8mオーダーなので内部応力は100 MPaオーダーに達する。

内部応力ΔPと表面張力γと曲率半径(R1, R2)の関係

ΔP = γ(1/R1 + 1/R2)

 上記のようにPdナノワイヤに電位をかけると水素吸蔵量に依存した電流が流れる(あるいは抵抗値が変化する)。
 Pdは水素吸蔵金属ではあるがナノワイヤに発生する超高圧の内部応力のため水素原子がワイヤ内部に入り込めずワイヤ表面でのみ吸収、放出が行われる。このため、室温で動作する高速応答、高速回復の水素ガスセンサが実現する。

従来技術との比較・優位性

方式原理応答時間/回復時間消費電流
動作温度
熱線型半導体式金属酸化物半導体表面上での水素の酸化反応による伝導電子の増加を検出20秒/不明・108mA@2V
・480℃
接触燃焼式水素の触媒(Pd,Pt/Al2O3)燃焼による素子温度上昇10秒/不明・98mA@2V
・400℃
気体熱伝導式水素混合に伴う気体熱伝導率の変化を加熱された素子の放熱量(温度)変化としてみる10秒/不明・65mA@2V
・185℃
特表2006-625155Pd合金ナノ結晶の格子が水素吸蔵によって膨張して互いに接触し、短絡状態になるときの電流を検出100秒/100秒・120μA@0.1V
・室温
本発明Pdナノワイヤに自然に発生する100MPaオーダーの内部応力により水素吸蔵・放出がワイヤ表面に限られるため、ワイヤ抵抗が高速に変化24秒/30秒・0.6μA@50mV
(ワイヤ長7mm)
・室温

想定される用途

脱炭素社会実現
国際エネルギー機関(IEA)の水素需要予測の棒グラフ:縦軸に量(0から500万トン)、横軸に年数(2019年から2070年)をとり石油精製、発電、運輸、民生、産業、合成燃料製造、アンモニア製造について積算したもの。右肩上がりである。
国際エネルギー機関(IEA)の水素需要予測
https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1260328_4115.html

2050年カーボンニュートラルの実現のため、今後急速に拡大すると予想される水素利活用、リチウムイオン電池の診断のために、水素ガスセンサへの旺盛な需要が期待される。

ライセンス可能な特許

発明の名称:水素ガスセンサ
国際公開番号:WO2024/177120

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