流線構造のトポロジー表現(TFDA)
~流れの「かたち」を「ことば」に!~
坂上 貴之(京都大学)
横山 知郎(埼玉大学)
発明のポイント
二次元流れの流線のパターンを、数学(幾何学)の一分野であるトポロジーを使って分類し、それぞれに固有の文字列表現を割り当てる手法を世界で初めて開発しました。これによって以下のようなことができるようになりました。”「ながれ」を「ことば」に!“〜これが私たちの技術の合言葉です。
- ○(新しいデータ解析手法)流れに関わる分野の大量の流れのパターン画像に固有の文字列を割り当てます。
- ○(流れの経験知の顕在化)流れに関する「経験知」を、誰もが理解できる「言葉」として抽出します。
- ○(新しい開発基盤)この文字列により各分野での新しいデータ解析の革新基盤とすることができます。
発明の概要
本発明はどのようなデータに使えるのでしょうか?
- 流体方程式のシミュレーションで得られた流線(粒子の軌道でも大丈夫です)のデータや、様々な流体実験の可視化技術で、しばしば得られる「二次元の流線データ(パターン)」に適用できます。また、三次元流れの二次元断面として得られる流れ画像にも適用できるケースもあります。
本発明でどのようなことができるのでしょうか?
- 二次元流線データに対して、その流れのパターンをトポロジカルに区別する固有の文字列が割り当てられます。
- 文字列の違いで微妙な流れパターンの違いが完全に区別できます。これによって以下のことができるようなります。
- (1)文字列の「並び方」が特定の機能を表すことなどがわかるようになります。(流れの“DNA”情報として)
- (2)文字列の統計処理により特徴的な性質を抜き出せます。(流れに関する経験知の抽出)
- (3)将来起こりえる変化をあらかじめ予測することができるようになります。(流れパターンの将来予測)
文字化は簡単にできるのでしょうか?
- 数学理論の詳細がわからなくても、変換ルールの仕組みは簡単ですので、そのルールがわかれば流れの文字化は比較的簡単にできます。また、大量の流線データに一括適用できるよう、自動文字化プログラムを開発しました。
従来技術との比較・優位性
従来技術では見えなかった情報により画像診断/認知の確実性の向上、変化の確実な予測が可能になります。
流れ状態探索の範囲 | 計算の確度 | 画像認識の自動化 | 流れの幾何学情報の抽出 | |
---|---|---|---|---|
従来技術 | × 局所的な探索。 | △ ガイドラインのない繰り返し探索。 | × 経験と勘によって最適状態を探索したり、状態を区別する。 | × 存在しない。 |
本技術 | ○ 漏れの無い網羅的な探索が可能。 | ○ 語表現を通したガイドラインに沿った確実な探索が可能。 | ○ 普遍的な表現による表現、標準化可能。 | ○ これまでに見えなかった流れ情報の抽出が可能。 |
想定される用途
- (1)流体機械設計の指針として
- トポロジー情報をベースに、最適状態の新しい特徴付けと探索が可能になり、従来の設計指針で解決できなかった諸問題に対して、解決の道筋につながります。
- (2)画像診断や状態記述の新しい指針として
- 流れのパターンの違いが文字列として表現されます。それを用いた診断や機能評価に新しい手法を提供。
- (3)あらゆる分野の設計への適用可能性
- エネルギーロスの少ない低騒音ブレード、鉄道パンタグラフ、自動車のトランスミッション、河川・港湾の改修デザインなど。
ライセンス可能な特許
発明の名称:有限型の流れパターンの語表現装置、語表現方法、プログラム、構造物形状の学習方法および構造物設計方法
国際公開番号:WO2021/019883
登録番号:特許第7231284号(779KB)