非ウィルス性遺伝子治療
~新しい遺伝子ベクターの設計と医療への応用~
長田 健介(量子科学技術研究開発機構)
発明のポイント
非ウィルスベクター(高分子pDNA複合体)を用いた遺伝子治療用技術を開発
非ウィルスベクターの特長
- ・高い安全性(免疫原性やゲノムへの組込みリスクが低い)
- ・静脈投与可能(ウィルスベクターは静脈投与が困難)
- ・運べる遺伝子サイズに制限なし(アデノ随伴ウィルス:4800残基まで ⇐ ヒト遺伝子平均:8446残基)

発明の概要
【高分子pDNA複合体の高次構造】
高分子(PEGブロック共重合体注))の種類を変えて様々な高次構造を実現






二本鎖DNA
解く(熱融解@95℃)
一本鎖DNA



治療戦略によって使い分け
注)PEG:ポリエチレングリコール
発明の優位性
【膵臓がん治療への応用】
- ・一般的な固形がん
- 100 nm程度の粒子が血管の隙間を抜け、がん組織に集積(EPR効果)
- ・膵臓がん
- 血管とがん巣の間に繊維性の間質 ⇒ がん組織へ到達するには50 nm以下の粒子が必要

- ① ロッド体(76 nm)により、血管/間質で血管を作らせないタンパク質を発現させる治療法
- ⇒ がん増殖を間接的に抑制
- ② 極小球体(26 nm)により、がん細胞に遺伝子を発現させる治療法
- ⇒ がん細胞を直接的に殺傷
膵臓がん組織周辺の環境(模式図)

非ウィルスベクターを用いた膵臓がんの遺伝子治療効果(マウス)
Biomaterials 2017

- 注)cRGDペプチドをPEG末端に導入
- がん血管に出ている『インテグリン』に結合
ACS Nano 2019

非ウィルスベクターによる治療により、膵臓がんの増殖抑制を確認
想定される用途
- ◎ 膵臓がんをはじめとする難治性がん治療剤としての利用
- ◎ 遺伝子疾患の根本的治療への応用(免疫不全疾患に対する治療剤など)
- ◎ 遺伝子編集やワクチンへの応用
ライセンス可能な特許
発明の名称:核酸内包高分子ミセル複合体及びその製造方法
国際公開番号:WO2015/020026
登録番号:特許第6108369号(1.99MB)、米国10046065(2.72MB)