V-ATPase阻害剤
~Na+ポンプを標的とした新規抗菌剤の創出~
村田 武士(千葉大学)
発明のポイント
- ATP加水分解エネルギーを用いてNa+を排出する膜タンパク質V-ATPaseの阻害剤を開発
- ⇒ 新規メカニズムの抗菌剤として、薬剤耐性菌(バンコマイシン耐性腸球菌;VREなど)へ適用
V-ATPaseとは?
- ・真核生物や細菌の膜に存在するATP駆動の回転分子モーターであり、一般にH+を輸送する。
- ・腸球菌はV-ATPaseを保有しており、Na+を排出することでアルカリ環境下でも生育できる。
- ・真核細胞や乳酸菌、ビフィズス菌はV-ATPaseを持っていない。
発明の概要
V-ATPaseの特徴
Vo(膜内在性サブユニット)とV1(親水性サブユニット)から成る膜タンパク質(図1)で、ATPの加水分解を利用してNa+を排出
- ⇒ V-ATPase保有菌(薬剤耐性腸球菌など)は、抗生剤処理後のアルカリ環境下でも生存可能(図2)


V-ATPaseの阻害により、薬剤耐性腸球菌の増殖抑制が期待
V-ATPase阻害剤の薬剤耐性菌への効果
病原菌感染⇒発症 | |
薬剤投与 | |
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薬剤耐性もしくはV-ATPase保有菌(VREなど) | 感受性菌 |
生存/増殖 V-ATPaseにより生存可能 | 増殖抑制 |
V-ATPase阻害剤投与 | |
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増殖抑制 Na+濃度勾配を形成できず、アルカリ環境下での増殖不可 |
発明の効果
V-ATPase阻害剤

2-アリールベンズイミダゾール誘導体がV-ATPaseの膜内サブユニットの結合部位(a-cの境界面)に結合し、V-ATPaseの活性を阻害


Na+輸送に重要な2残基(サブユニットaとリングc)に阻害剤は相互作用
V-ATPase活性阻害効果
a. in vitro 試験(E. hirae とVREに対する効果)


想定される用途
- ◎ V-ATPaseを保有する薬剤耐性菌に対する新規抗菌剤としての利用
- ◎ 他の抗菌剤との混合による広スペクトラム抗菌剤への応用
ライセンス可能な特許
発明の名称:V-ATPase活性阻害剤、抗菌剤、医薬及び抗菌方法並びにスクリーニング方法
国際公開番号:WO2020/149295
登録番号:特許第7428387号(892KB)