1*事業進捗状況及び今後の見通し
横浜サイエンスフロンティア(YSF)構想の中で周辺地区整備も進み、研究開発環境は充実しており、全体として科学技術基盤の形成は着実に進んでいる。また、独創性を活かした解析システムの活用によって、新技術の創成も期待できる。また、有力な共同研究企業の含め活発な研究が進められており、新しい成果も生まれている。しかし、実施体制として横浜市大に研究が集約されており、広がりが懸念される。今後、理研・他大学との連携も視野に入れた展開および事業化推進に向けての結果を重視したより具体的で戦略的な企業等へのアプローチを図ることが望まれる。
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2*研究開発進捗状況及び今後の見通し (総論)
難度の高い研究であるにも関わらず、目標に対し、順調な達成状況と判断される。
また、創薬としての重要な基幹技術の基礎を確立しつつあり、多くの企業との連携もすすめ、今後の応用研究・実用化に期待が寄せられる。この実用化の成果を確実にするために、充分なる雇用研究員の確保を含めた産業への応用展開をはかる戦略的な取り組みを強めることを期待する。また、対象とする蛋白質とその機能を絞り込み、さらに、知的財産化に向けて、どのような実験が必要であるかをグループ全体として認識して、研究を進めていくことが不可欠である。
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(サブテーマごとの留意事項)
サブテーマ名 |
留 意 事 項 |
薬物候補低分子化合物とタンパク質の相互作用を網羅的にかつ迅速に解析する新技術の開発 |
- 各プロジェクトとも、基本的なハードがほぼ組み上がり、フェーズIの目的は達成したと思われる。
- 本事業の研究者が独自に開発した蛋白酵素群を所有して、その構造解析では世界的にトップレベルにある。
- 低分子薬物との相互作用などとの解析を進め、創薬におけるタンパク質構造解析との対応付けの重要性などといった具体的な先駆例をしめされることを期待したい。
- 他の方法に比べて極めて高価なNMR装置を使う事の利点が明確になるような研究の展開を望みたい。
- 例えば、開発中のフロー型NMRを疾病に関連する遺伝子産物に適用して結合リガンドのスクリーニングを実行するなど、単に装置周辺機器の開発に止まらない踏み込んだ研究が望まれる。
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細胞機能上重要なタンパク質を網羅的かつ迅速に同定する新技術 |
- ラミニン、SMG1ともに優れた基礎研究成果として高く評価できる。
- 学術的な指向が強い、産業化、企業化の視点をもう少し取り入れる必要がある。
- テーマ1ほどの高額な設備・研究費を要さずに、特許・論文とも成果が出されている。研究の進展が期待される。
- DNA結合タンパク、分泌タンパク、細胞膜タンパク等の総合的呼称に比べて、取り上げている手法がカバーできる範囲は限定的に過ぎるのではないか。
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3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
研究分野の先進性のためにフォローアップ出来る企業が限られるなか、いくつかの企業との共同研究が順調に進められていることは高く評価できる。また、経験豊かな3人の新技術エージェントを配置されており、技術移転に向けた活動の体制は整っている。研究の進捗状況に比して特許出願件数の少ない点が懸念されるので、今後は成果が十分に知的財産化されるよう、新技術エージェントの分担の見直しを含め、知的財産権の確立方策を明確にし、事業推進する必要がある。
併せて、企業連携の拡大、地域企業の更なる活用など事業化を強く意識したネットワーク拡充が望まれる。
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4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
横浜サイエンスフロンティア構想全体を見ると、総合研究ゾーン・産学交流ゾーンの一体整備を進める横浜市の積極的な支援が認められる。また、横浜市のライフサイエンス分野に焦点を絞った産業創造のための力強い研究開発支援体制も評価できる。
今後、YSF全体構想の中で本プロジェクトがもっと色濃く浮き上がるような存在感を示すようにPR活動や新規事業誘致の努力も必要ではないか。
また、市近隣に存在する優れた大学の理系学部とのより積極的な連携に向けての働きかけによりこれらの大学の持つリソースの活用が図られることが望ましい。 |