1*事業進捗状況及び今後の見通し
事業総括の強い意思の下で事業が推進されていると認められる。また、浜松ホトニクスを中心として、LD励起技術を核とする高出力レーザーの製造分野において、日本における技術基盤形成拠点として研究が進んでいる。技術蓄積も進んでおり、今後の進展が期待される。
中核機関である光科学技術研究振興財団が次世代レーザーシステム開発と先導的探索研究を、浜松工業技術センターが地域産業育成のレーザー応用研究を実施しており、相互補完的に研究実施体制が組まれている。今後は成果の共有化やオープン化に十分配慮する必要がある。
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2*研究開発進捗状況及び今後の見通し (総論)
システムを全て国産で作るという目標に対し、研究開発内容の進捗状況は概ね順調と認められる。本研究開発分野は海外で先行している分野であるが、レーザー技術の今後の発展と産業への展開を考えると、国内に高密度フォトン用のレーザー製造基盤技術を確立させておくことは意義がある。進捗の遅れの懸念のあったフェムト秒レーザー開発も、目標通りフェーズ・で、1TW・10Hzレーザーの開発が出来る見込みとなっており、今後も順調な進捗を期待する。
レーザーシステムの開発については、計測制御技術等で、新規性、優位性が高く、成果も期待出来る。一方、その産業応用開発については、様々な可能性は認められるものの、大きな成果をあげるには対象の絞り込みと緊密な研究開発の連携、研究体制の強化が求められる。応用展開として、PET開発を主軸に据えているが、これだけでは十分とはいえないであろう。また、非破壊検査については、現時点では実現性が小さく、アイデア的な印象と判断せざるを得ない。
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(サブテーマごとの留意事項)
サブテーマ名 |
留 意 事 項 |
LDを用いた高強度フェムト秒レーザーの開発 |
- プロジェクトの鍵を握る10Hz 100mJ、250mJグリーンレーザーの開発に人的資源を集中し、産業用途に使える安定出力を目指すべきである。
- フェムト秒レーザーの産業応用には、カーレンズモード同期を用いた発振器は振動に弱く不適当と考えられる。この部分はファイバーレーザーが適当と思われる。
- ただし、ファイバーレーザーは10〜20mWと出力が低いので、前置増幅器として再生増幅器が必要である。
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超高密度フォトン反応制御技術の開発 |
- フェムト秒単一パルス内に含まれる多くのスペクトル成分の変化を利 用したフーリエ分光により、単一ショット情報収集計測などへの発展を期待したい。
- 有機非線形結晶によるテラヘルツ波発生は科学研究として一級。若干効率が落ちても、長寿命、安定な材料の追求が望まれる。
- 波長域拡大技術はテラヘルツに集中した方がよい。
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新規産業開発研究 |
- 地域産業育成探索研究では、更なるニーズの掘り起こしと、浜松ホトニクス以外の企業の積極的参加が望まれる。
- 小型フェムト秒高出力レーザーで核変換しPETに応用する試みは独創的。但し、レーザーのエネルギーが不足している可能性がある。
- THzイメージングも更なるTHz波の高出力化が求められる。フェムト秒加工にはAr、真空など加工雰囲気も重要。
- 閾値のない物質改変過程の利用を提案するなど、優れた着想の研究が妥当な研究方向でなされているが、誰も解を持っていない部分の研究領域なので、今後の取り組みに期待する。
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3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
地域振興の観点から新システムの構築は重要と考えられる。完成すればそれ自体で十分に応用展開は付いてくるので、今後に期待する。産業応用開発を見据えた研究開発の連携には、具体的な応用分野を絞り、新技術エージェントの活動による新たな連携先との共同等、積極的な展開を期待したい。
資源配分がレーザーシステムの開発やテラヘルツ発生など高度な応用に偏っている。光科学技術研究振興財団での活動がシーズ先行開発で、浜松工業技術センターでの活動との連携が十分ではない印象を受ける。浜松工業技術センターで光技術の人材育成事業を実施していることは評価できる。
地域に共同する企業を確保していることは評価出来るが、実用化、企業化に向けて、特許出願件数がやや少ない印象を受ける。
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4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
県として、レーザーを核に地域活性化を図る戦略は評価出来る。県の支援も十分認められる。
フェーズIの研究成果を地域産業育成に結びつけてゆくには、県の積極的な働きかけが欠かせない。さらに県のリーダーシップを発揮されることを期待したい。浜松ホトニクスが中心になって研究が進むことは良いとしても、応用技術開発で浜松工業技術センターとの連携を深めるのために、県のイニシアティブは欠かせない。研究場所の整備などに県の一層の支援が望まれる。 |