評価一覧評価説明報告書 > 地域別評価 福井県

地域結集型共同研究事業

平成12年度事業開始地域中間評価報告書



平成15年3月
科学技術振興事業団地域振興事業評価委員会

4. 地域別評価
4−2 福井県
課題名 光ビームによる機能性材料加工創成技術開発
事業総括: 松浦 正則 ((株)松浦機械製作所代表取締役社長)
研究統括 小林 喬郎 (福井大学工学部教授)
新技術エージェント 進藤 哲次 ((株)ネスティ代表取締役社長)
中核機関 (財)福井県産業支援センター
1*事業進捗状況及び今後の見通し
 福井県として本事業に対する強い意欲がみられ、事業総括と研究統括の両者のリーダーシップも発揮されており、全体としては順調に事業が進捗している。設備的にも、県産業支援センターやコア研究室の整備がしっかりしており、基盤形成は充分と思われる。また、県内、外の10社以上の企業が、事業化に向けて実体を伴った活動を展開している。このようにバランスのとれた連携体制が構築されている中で、フェムト秒レーザとして産業への応用が期待できるYb:YAGの開発とその光ビーム加工への応用に向け技術基盤形成が着実に進展している。
 しかし、レーザ本体の開発に多少の遅れが認められるので、レーザ開発を加速するために研究者を適正に配置してYAGレーザーの開発を急ぐ体制を構築する必要がある。また、新技術エージェントを中心として実用化へ向けた特許戦略策定等の支援体制強化が必要と思われる。

2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 研究開発については、関西地区でのネットワークを生かして多面的に取り組まれている。レーザ製造技術の開発およびその加工への応用技術開発の双方において、新規性、優位性があり、国内産業力強化の意義を持つと思われる。その中でもレーザー光造形技術の開発とその応用展開については大いに評価できる成果が生みだされており、進捗度も順調である。今後とも、新規性・優位性を持つ技術を成長させる研究が継続されることを期待する。
 一方、Yb:YAGレーザー本体の開発には遅れが認められる。米国から類似レーザ商品化の動きがあることや、他テーマでの応用研究のベースとなるものであることから、研究加速が求められる。そのためには、テーマを精査して見直しや絞り込みを行うことや、研究開発に優先順位をつけて実施することが望まれる。
 また、今後の応用開発については実用化をにらんだ絞込みなどの戦略対応が求められる。特に特許に関しては今後とも欧州との連携など継続的な取り組みを行う必要があると思われる。

(サブテーマごとの留意事項)
サブテーマ名 留 意 事 項
高輝度Yb:YAG固体レーザー技術に関する研究
  • Yb:YAGを用いたフェムト秒レーザーに関する研究開発は、国内において唯一の研究拠点であり、また、その研究の進捗状況もフェムト秒発振器や紫外用CdYCOBを除きほぼ順調であるといえる。今後、フェムト秒レーザーの産業応用の国際的な優位性を確保するためにも重要な研究開発になると考えられる。
  • Yb:YAGレーザーに関しては、OPOや紫外化よりもフェムト秒化と高出力化に集中すべきである。
  • フェムト秒レーザの位置付けに留意が必要である。フェムト秒レーザの加工品質は優れているが、ナノ秒レーザと比べて装置・ランニングコストが大幅に高いことを考慮すると、スループットと品質の両者からそれぞれの特徴を生かした応用を見出すことが必要になると思われる。
高輝度光ビーム加工技術に関する研究
  • 多機能フォトマシニングセンタは評価できる成果を挙げている。金型作製への実用化が期待され新規の事業を興す可能性が認められるので、今後はより微細な加工分解能の達成へ向け、加工機および材料の両面からのアプローチを強力に推進すべきと思われる。
  • 応用は総花的に行うのではなく、特許戦略を持ち実用化に近いものに集中すべきである。今後、実用化に対する検討を十分行い、競争力を持つ研究開発にテーマを絞り込む必要があると思われる。
高輝度光ビームによる薄膜形成技術に関する研究
  • 実用化を視野に入れるのであれば、今後より積極的な特許出願が望まれ、従来にない新規的なレーザーによる薄膜形成技術の研究開発を進める必要があると思われる。
  • レーザー照射による表面のナノ加工はユニークな研究であり今後の重点的な研究課題となりうるが、それ以外のサブテーマは、既に国内外の研究機関より報告されている成果と比較し優位性が明確でない。
  • 今後の特許戦略を十分検討した上で実用化可能な研究開発テーマに重点化する必要があると思われる。

3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 フォトンマシニングセンタの開発で既存のレーザを用いながら具体的な産業展開の取組がなされている。また、鏡面精密洗浄技術開発で産業界との連携が具体化しているなど、順調な進捗が見られる。このように特定の分野に集中した実用化を目指す活動は評価できる。
 しかし、地場産業への波及性が高いテーマの割には特許出願が少ないように思えわれる。また、国際特許戦略の視点が足りず、戦略的な取り組みがやや欠けていたように思われる。今後は世界レベルでの特許戦略をもって実用化に向けた積極的な展開を期待する。

4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 県の長期構想の中で本事業を位置づけ、コア研究室の提供や事務スタッフの派遣といった人的支援などの支援を実施するほか、パルスレーザ研究所の構想など地域COE形成にも取り組んでおり、県の支援は十分に感じられる。成果の有効活用を目指した人材育成講座を開設する計画も示され、研究の継続と地場産業への成果の移転を念頭においた中長期的視点に立った支援も行われており、県の前向きな支援体制として評価できる。今後も、地域COE構築と地場産業振興に向けた支援が継続されていくことを期待する。

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

目次に戻る


This page updated on March 18, 2003

Copyright©2003 Japan Science and Technology Corporation.