第二章 「科学技術コーディネータ」の実態把握調査

1.調査の目的:

 コーディネータ・データベース作成にあたり、対象とする「科学技術コーディネータ」の範囲を検討するために、コーディネート活動に携わる者がどの組織に所属しており、また、どのような制度のもとに存在しているかなど(所属機関、委嘱されている制度名、コーディネータとしての肩書き、活動内容等)について調査を実施した。

2.調査の対象:

 下記4にて定義をしているコーディネータが所属し、コーディネート活動を行っていると予想される、また、科学技術に関連したコーディネート活動を行っている以下の機関、総数1239機関を「2003−2004 全国試験研究機関名鑑(LATTICE社)」、「2002全国大学職員録(廣潤社)」、ホームページ等より抽出し、調査を実施した。
a. 大学・高専等の産学連携組織・機関
(地域共同研究センター、知的財産本部、
ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーズ、産学連携室 等)
497件
b. 財団法人(都道府県・市の財団法人 等) 198件
c. 社団法人 19件
d. 第3セクター(地方公共団体等) 65件
e. 独立行政法人研究機関(国立研究機関も含む) 43件
f. 公設試験研究機関 144件
g. TLO(技術移転機関) 39件
h. 商工会議所 156件
i. その他
(行政機関、任意団体、その他組織形態の不明なものを含む)
78件

3.調査の手法:

 アンケート調査票(郵送)による調査を実施した。
   調査期間 :平成16年1月28日〜2月12日

4.コーディネータの定義:

 コーディネータの定義は以下のとおりとした。
 「大学や独立行政法人の研究機関や公設試験研究機関等の公的研究機関の研究成果を発掘して商品化するまでの段階においてさまざまな支援を行う人材、または、その研究成果をもとにベンチャー企業の設立および育成の段階において経営支援も含めて支援を行う人材(養成中の人材も含める)とし、勤務形態は常勤、または、非常勤とし、活動の対価として謝礼を活動毎に支払う方等は除く(非常勤の場合でも週何日、月何日というように勤務形態が決まっていること)。なお、対象とする業種は、製造業および情報サービス業(通信・ソフトウエア等)に限る。
 例:「地域研究開発促進拠点支援事業(RSP事業)」科学技術コーディネータ、「研究成果活用プラザ」科学技術コーディネータ(JST)、「都市エリア産学官連携促進事業」科学技術コーディネータ、「大学地域共同研究センター」産学連携コーディネーター(文部科学省)、「TLO(技術移転機関)」、特許流通アドバイザー(工業所有権情報総合情報館)、「NEDO養成技術者」(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))など」

5.アンケート回収率:

 アンケートを回収した件数:749件(送付総数1239件、回収率 60.5%)
a. 大学・高専等の産学連携組織・機関 297件 (59.8%)
b. 財団法人 137件 (69.2%)
c. 社団法人 12件 (63.2%)
d. 第3セクター 38件 (58.5%)
e. 独立行政法人研究期間 26件 (60.5%)
f. 公設試験研究期間 101件 (70.1%)
g. TLO(技術移転機関) 20件 (51.3%)
h. 商工会議所 68件 (43.6%)
i. その他 50件 (64.1%)

6.調査結果:

6−1 科学コーディネータの人数

 回収した749件のうち、317件より該当する「科学技術コーディネータ」がいるとの回答があった。その中で、「科学技術コーディネータ」該当者は延べ1,022名である。

 また、科学技術コーディネータ」がいるとの回答があった317件の内訳は、
a. 大学・高専等の産学連携組織・機関 87件 29.3% 274 名)
b. 財団法人 72件 52.6% 381 名)
c. 社団法人 10件 83.3% 11 名)
d. 第3セクター 19件 50.0% 47 名)
e. 独立行政法人研究期間 8件 30.8% 51 名)
f. 公設試験研究期間 24件 23.8% 38 名)
g. TLO(技術移転機関) 18件 90.0% 66 名)
h. 商工会議所 48件 70.6% 94 名)
i. その他 31件 62.0% 60 名)
 
*カッコ内は「科学技術コーディネータ」数

 ここで、今回アンケート調査票を送付した機関が「科学技術コーディネータ」の所属をしているすべての機関を網羅していると仮定して、回答のあった調査票をもとに、回答のなかった機関のコーディネータの数について類推をし、日本全国に存在する「科学技術コーディネータ」の総数について試算を試みた。
 その結果、全国に配置をされている「科学技術コーディネータ」は1,668名と類推される。

a. 大学・高専等の産学連携組織・機関 464 190 名)
b. 財団法人 545 164 名)
c. 社団法人 20 9 名)
d. 第3セクター 80 33 名)
e. 独立行政法人研究期間 84 33 名)
f. 公設試験研究期間 52 14 名)
g. TLO(技術移転機関) 99 33 名)
h. 商工会議所 263 169 名)
i. その他 61 1 名)
 
*カッコ内は無回答であり、今回推定をした「科学技術コーディネータ」数

 ただし、今回、機関内にいるとして回答してきた「科学技術コーディネータ」の中には、例えば、特許電子図書館検索指導アドバイザーなどのように今回対象の「科学技術コーディネータ」として適当ではないと思われる人員も含まれているので、その他も含めてより精度の高いものにするためには、今後、アンケート調査のみではなく、電話等も利用して再度調査を行い、精査を行う必要があると考えられる。

6−2 関連する事業名等

 今回、回答のあったコーディネータに関する事業名は以下のとおりであり、それぞれの機関独自の事業としてコーディネータをもうけているところが多いことが明らかになった。

関連する事業名 機関数 人数
地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業科学技術コーディネータ(JST) 15 47
研究成果活用プラザ科学技術コーディネータ(JST) 2 4
知的クラスター創成事業科学技術コーディネータ(文部科学省) 13 32
都市エリア産学官連携促進事業科学技術コーディネータ
(文部科学省)
26 38
産学連携コーディネーター(大学地域共同研究センター等) 65 119
大学知的財産本部整備事業(文部科学省) 21 58
特許流通アドバイザー派遣事業特許流通アドバイザー
(工業所有権情報総合情報館)
59 86
産学官連携コーディネータ(産業技術総合研究所) 5 44
地域プラットフォーム事業(地域新産業創出総合支援事業)
コーディネーター(経済産業省)
28 68
産業技術フェローシップ事業NEDO養成技術者(NEDO) 6 8
インキュベーションマネージャー(日本新事業支援機関協議会) 19 33
その他政府機関の事業によるコーディネータ 37 84
地方公共団体の事業によるコーディネータ 57 131
各機関独自の事業およびコーディネータ 73 248
その他 28 36

6−3 活動内容

 「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」や「情報収集」、「研究成果の発掘」を担うコーディネータの数が多いことがわかる。しかし、その一方で、研究成果が生まれて、それが製品化され、販売をされることにより利益があがるという一連の流れを考えた場合には、「ビジネスモデル作成支援」や「ライセンシング」、「マーケティング支援」といった製品化に近い部分を担うコーディネータが不足しているといえるかもしれない。

活動内容 人数 割合
研究者、企業等の紹介・引き合わせ 689 67.3%
情報収集 619 60.7%
研究成果の発掘 606 59.5%
交流会・研究会等の開催 476 46.7%
技術の評価 461 45.2%
国や地方自治体のプログラムへの応募支援 412 40.4%
特許化支援 404 39.6%
技術指導 289 28.4%
ライセンシング 268 26.3%
経営支援 262 25.7%
マーケティング支援 259 25.4%
ビジネスモデル作成支援 252 24.7%
金融関係支援 155 15.2%
その他 65 6.4%

6−4 関連する事業名等と活動内容

 それぞれの事業で活動をしている「科学技術コーディネータ」について、その事業と活動内容の関係についてみてみると、以下のようになっていることがわかる。
なお、それぞれのコーディネータは複数の活動を行っている場合が普通であり、場合によっては、複数の事業等にまたがるコーディネータも存在しており、下記では、同一「科学技術コーディネータ」の場合においても複数の事業にまたがって標記をしている。
 (1) 科学技術コーディネータ
地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業(JST)
→ 当事業採択をされた都道府県において科学技術振興を図っている財団法人に配置

 47名が該当となっており、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(42名)、「情報収集」(37名)、「特許化支援」(32名)、「研究成果の発掘」(31名)が主な活動となっている。

地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業科学技術コーディネータ(科学技術振興機構)

 (2) 研究成果活用プラザ科学技術コーディネータ(JST)
→ JSTが全国7個所に配置している研究成果活用プラザに配置

 上記の科学技術コーディネータと重複等をしているが、活動内容については、ほぼ全員が「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」、「情報収集」、「ライセンシング」、「研究成果の発掘」、「特許化支援」、「技術評価」のみを業務としている。

研究成果活用プラザ科学技術コーディネータ(科学技術振興機構)

 (3) 科学技術コーディネータ
知的クラスター創成事業(文部科学省)
→ 事業採択をされた地域において科学技術の振興を図っている財団法人、第三セクターに配置

 該当者32名の活動の主なものは、「情報収集」(24名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(23名)、「研究成果の発掘」(23名)となっている。

知的クラスター創成事業科学技術コーディネータ(文部科学省)

 (4) 科学技術コーディネータ
都市エリア産学官連携促進事業(文部科学省)
→ 事業採択をされた地域(エリア)において科学技術の振興を図っている財団法人、第三セクターに配置

 38名が該当しており、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(32名)、「研究成果の発掘」(31名)、「交流会・研究会等の開催」(30名)、「技術の評価」(29名)、「国や地方自治体のプログラムへの応募支援」(27名)が殆どの活動になっている。

都市エリア産学官連携促進事業科学技術コーディネータ(文部科学省)

 (5) 産学連携コーディネーター 産学官連携支援事業(文部科学省)
→ 国立大学地域共同研究センター、私立大学産学連携組織等に配置

 119名と実際の該当する事業より多い人数となっている理由は、地域共同研究センター等に配置されている他の産学連携コーディネーターも計上されていることが理由であると考えられる。また、主な活動は、「研究成果の発掘」(81名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(79名)、「情報収集」(77名)などとなっているが、大学に配置されているために「研究成果の発掘」が最も多いことが特徴となっている。

産学連携コーディネータ(大学地域共同研究センター)(文部科学省)

 (6) 大学知的財産本部整備事業のコーディネータ(文部科学省)
→ 事業採択をされた大学・大学共同利用機関、および「特色ある知的財産管理・活用機能支援プログラム」対象大学(複数大学等で採択をされているものもあり)

 該当するのは58名であり、主な活動は「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(31名)、「情報収集」(31名)、「交流会・研究会等の開催」(27名)、「国や地方自治体のプログラムへの応募支援」(27名)となっており、「特許化支援」(20名)、「ライセンシング」(15名)といった知的財産に関する仕事は意外ではあるが僅かである。

大学知的財産本部整備事業(文部科学省)

 (7) 特許流通アドバイザー
特許流通アドバイザー派遣事業(工業所有権情報総合情報館)
→ (社)発明協会からTLO(技術移転機関)および都道府県にある知的所有権センター等に派遣・配置

 該当するのは86名であり、「情報収集」(52名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(49名)などが上位にくる活動であるが、「経営支援」(40名)、「研究成果の発掘」(38名)というように、コーディネータ活動のはじめから終わりの部分までと非常に幅の広い活動を行っていることがわかる。

特許流通アドバイザー派遣事業特許流通アドバイザー(工業所有権情報総合情報館)

 (8) 産学官連携コーディネータ(産業技術総合研究所)
→ 独立行政法人産業総合研究所に所属をしており本部や各地域のセンターなどに独自で配置

 研究機関に所属をしているために「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(26名)、「研究成果の発掘」(24名)、「ライセンシング」(20名)、「情報収集」(19名)といった活動が主なものとなっている。

産学官連携コーディネータ(産業技術総合研究所)

 (9) 地域プラットフォーム事業のコーディネータ
(地域新産業創出総合支援事業)(経済産業省)
→ 中核的支援機関に認定をされた都道府県、政令指定都市の財団法人に配置

 該当するのは68名であり、「情報収集」(54名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(51名)が主な活動であり、事業の内容に較べて、比較的技術に近い部分での活動がされていることがわかる。

地域プラットフォーム事業(地域新産業創出総合支援事業)コーディネータ(経済産業省)

 (10) NEDO養成技術者(NEDOフェロー)
産業技術フェローシップ事業(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))
→ 大学、民間研究機関、公的研究機関及びTLO(技術移転機関)等へ配置しているが、養成事業の対象分野を産学連携部門(リエゾン)、TLO(技術移転機関)とする

 該当者は8名とわずかであるが、「情報収集」(7名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(6名)、「交流会・研究会等の開催」(5名)が主な活動となっている。

産業技術フェローシップ事業NEDO養成技術者(NEDO)

 (11) インキュベーションマネージャー(IM)(日本新事業支援機関協議会(JANBO))
新事業育成専門家養成等研修事業(経済産業省補助事業)
→ 主にJANBOで実施しているIM養成研修を終了した人の呼称であり、インキュベート機能等を保有している財団法人、第三セクターその他に配置されている。地域プラットフォーム事業内の事業などにおいて、養成、配置がされている例もある。

 33名が該当しており、「情報収集」(24名)や「交流会・研究会等の開催」(21名)が主な活動と「ビジネスモデル作成支援」が17名となっているものの、インキュベーションに関する仕事はわずかであることが伺われる。

インキュベーションマネージャー(日本新事業支援機関協議会)

 (12) その他政府機関の事業によるコーディネータ
例えば、大学発事業創出実用化研究開発事業(通称:マッチング・ファンド)(NEDO)によりTLO(技術移転機関)等の技術移転を扱う機関に配置や中小企業庁による支援事業等

 該当するのは84名であり、「研究成果の発掘」(62名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(58名)、「情報収集」(52名)、「特許化支援」(46名)、「技術の評価」(43件)などが主な活動となっている。

その他政府機関の事業によるコーディネータ

 (13) 地方公共団体の事業によるコーディネータ
特に、地方公共団体から地域中小企業支援センターへの支援事業が該当をしている。

 該当するのは131名となっており、「研究成果の発掘」(101名)、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(87名)、「技術の評価」(79名)、「情報収集」(78名)、「特許化支援」(75名)などが主な活動となっているが、「技術の評価」などが特徴である。

地方公共団体の事業によるコーディネータ

 (14) 各機関独自の事業およびコーディネータ
各機関による独自の取り組み

 該当者が248名であり、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(167名)、「情報収集」(149名)、「研究成果の発掘」(130名)、「技術の評価」(110名)などが主な活動になっている。

各機関独自の事業およびコーディネータ

 (15) その他

 36名がこの「その他」に該当しているが、「研究者、企業等の紹介・引き合わせ」(32名)、「交流会・研究会等の開催」(29名)などが主な活動となっている。

その他

6−5 コーディネータの種類

 それぞれの種別の機関をみると、下記のような(肩書きの)コーディネータが所属をしていることがわかる。

a.大学・高専等の産学連携組織・機関

  など


b.財団法人(地方公共団体等の出えんにより設立)

  など


c.社団法人


d.第三セクター(国の機関や地方公共団体、地元企業等が主体となり設立)


e.独立行政法人等研究機関

  など


f.公設試験研究機関

  など


g.TLO(技術移転機関)

  など


h.商工会議所(多くの中小企業支援センターが商工会議所内にある)


i.その他(地方公共団体、任意団体、商工会連合会など)

  など

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