「第二章 『科学技術コーディネータ』・データベース ニーズ調査(事前調査)」のまとめ(6−5)にあるように、企業や大学教官の多くがコーディネータの協力を得たいと考え、また、コーディネータについても多くが連携することを重要視しており、コーディネータ情報について提供されれば積極的に活用したいというようにコーディネータ情報へのニーズは高いと考えられる。一方では、特に、企業についてはコーディネータの認知度が低く、コーディネータがどこにいて、どのような活動を行っているのかなどの情報も含めて、企業や大学教官、コーディネータそれぞれの希望を満たすようなコーディネータ情報を提供する必要がある。
そこで「科学技術コーディネータ」・データベース ニーズ調査(事前調査)の結果およびJSTが開催した外部有識者による検討会(「コーディネータ活動支援情報検討会」(第1回))において出された意見について検討を行い、コーディネータ・データベースに必要とされる項目をとりまとめた。
1.「科学技術コーディネータ」・データベース ニーズ調査(事前調査)
「コーディネータ・データベースへの掲載」を希望する項目に関するアンケート結果(「第二章『科学技術コーディネータ』・データベース ニーズ調査(事前調査)」 6−4コーディネータ・データベースへの掲載項目)では、下記表のとおり、企業、大学教官、コーディネータともに、「専門・得意分野」、「コーディネート可能な分野」「コーディネートの実績」、「プロフィール」というように「提案公募型技術プロジェクト情報」、「特許情報」などのような対外的な情報よりも、コーディネータ個人に付随する情報の掲載が特に望まれていることが明らかである。また、この場合に、企業では「研究シーズ情報」の要望が高く、「企業ニーズ情報」については企業や大学教官、コーディネータともに比較的要望が高いことから、この点への配慮が必要とされる。
コーディネータ情報について提供を要望する項目 (%)
項 目 企 業 大学教官 コーディネータ 専門・得意分野 62.3 67.6 84.6 コーディネート可能な分野 53.2 67.6 64.1 研究シーズ情報 44.2 27.0 30.8 プロフィール 42.9 56.8 61.5 コーディネートの実績 40.3 62.2 43.6 企業ニーズ情報 40.3 45.9 38.5 提案公募型技術プロジェクト情報 32.5 43.2 35.9 特許情報 23.4 29.7 28.2 特に望むものはない 6.5 8.1 5.1 その他 1.3 18.9 12.8
さらに、第二章の「6−5 まとめ」で述べたように、「コーディネータ・データベース」の作成においては、以上のことに配慮して作成するべきである。
- 特に、企業においてはコーディネータの認知度が低く、またコーディネータがどこにいるか等わからないため、企業にコーディネータ活動について知ってもらうことが重要である。
- コーディネータは他のコーディネータとの連携を非常に重要と考えている。
- コーディネータの専門・得意分野或いは所有する研究シーズ・企業ニーズを知り、目的に合致するコーディネータに相談するという活用方法が考えられる。
- コーディネータの協力を得る場合に、「情報・機密性が不透明」という問題点が指摘されているため、扱う情報について制限を加えるなど、不安を取り除くための仕組みが必要である。
また、「コーディネータからの『蓄積したネットワーク、ニーズ、シーズを次世代のコーディネータに移転したい』との意見より、次世代へ継承できるシステムを構築する方法や「ライセンスでのスタンス等」や「コーディネータの抱負」などコーディネータの考え方のようにデータベースに取り上げることが難しいものやそれだけでは十分に意図の伝わらないと思われるものについては別の方法についても検討をする必要がある。
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2.「コーディネータ活動支援情報検討会」(第1回)における意見のまとめ
JSTが組織する外部有識者による検討会(「コーディネータ活動支援情報検討会」(第1回))において出された意見について、以下のように整理される。
(1)「コーディネータ・データベース」の内容
- 実績情報については、本人の申告はあてにならないので、JSTがバックデータ(実績などの裏付けとなるデータ。公開しない部分も含めて)を充実させ、それを慎重に編集して公開するようにしなくては信用が得られない。また、情報については常に更新をしていくことができる仕組みをつくるべきである。
- データベースの信頼性を高め、使ってもらうためには、コーディネータの実際の活動実績や最近手がけた事例をのせるべきであり、その場合、関係者がチェックをする必要がある。件数などは載せても役に立たない。
- コーディネータを特定するキーワードが整備されていないとたくさん書く人と書かない人により、内容にばらつきがでてしまう。また、検索を行いやすくするために、キーワードを充実させて欲しい。
(2)「コーディネータ・データベース」の仕組み
- 最初はボリュームがなくても、有効な(信頼度の高い)情報を集めたものをつくるべきである。
- データベースに一番アクセスしたいのは、現場の第一線で働いている人であり、誰でも見られる情報を収録したデータベースと、面接等で取得したシーズ/ニーズ情報を収録し、利用対象を制限したコーディネータ・データベースとがあってよい。
- 企業はこのような情報を必要としていると考えられ、地域にどのようなコーディネータがいるのかを知ってもらうことが必要である。そして、コーディネートの実績よりもどのような分野を担当しているのかの情報がわかれば、そこから企業がコーディネータ・データベースに連絡をしてコーディネート活動を行ってもらうことが可能である。
- すでに、政策や地域をユニットとしたデータベースができているので、新たにデータベースをつくるのであれば、それぞれのユニット・データベースとリンクする形でインターフェイスを作り、全体が見られるようにすればよいのではないか。
(3)「コーディネータ・データベース」の対象
- コーディネータに関するデータベースは世の中にいろいろあるので、誰を対象にしたデータベースとするかが大切である。
- コーディネータについては、「制度依存型」、「自治体促進型」、「研究機関型(産学連携コーディネーター、産総研、公設試にいるコーディネータ等)」、「民間営業型」の4つに分類できると考えており、その中で「民間営業型」を入れない、公的に認められたコーディネータを対象とすればよいと思う。
(4)その他
- コーディネータの活動を紹介する刊行物として、季刊ジャーナルを印刷物として出すことは意味がない。Weeklyにするか、あるいはしっかりしたものを1つ作って出した方がいい。
- JSTでは、コーディネータに関連した事業を古くから行い、よい成果もたくさん出ているので、これを捨てないように、事例をデータベース化しそのネットワークをつくることが先決である。
- 過去に、知的財産本部やTLOがなかったときからコーディネート活動を行ってきたRSP事業が行ってきた経歴、事例を残すことが必要である。コーディネート活動は行動してから結果が出るまでには時間がかかるので、現在、いろいろなところで行われているコーディネート活動が同じ失敗を繰り返さないようにするためにもRSP事業で行ってきた成功事例に倣うのは、非常に大切なことである。
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以上の結果を踏まえると、一般的に必要とされる項目も含めて「コーディネータ・データベース」作成するにあたり必要とされる項目および内容は以下のとおりとなる。
No. 項 目 内 容 1 氏名 漢字+ふりがなで記入 2 所属 コーディネータとして活動する時の所属先名称 3 役職名 コーディネータとして活動する時の役職名 4 関連事業 コーディネータとして国家事業等に関わっている場合、その事業名(事業概要へリンクを張る) 5 業務内容 コーディネータとして活動する時の主な業務内容
例)マッチング、特許化支援、企業ニーズ調査6 専門分野、得意分野 本人が専門としている科学分野、もしくはコーディネート活動において得意としている科学分野 7 活動地域 主に活動している地域(エリア) 8 経歴 大学卒業から現在に至るまでの主な経歴 9 所属先の連絡先 所属先のTel、Fax、E-mail 10 所属先HPのURL コーディネータとして活動する時の所属先のホームページアドレス 11 コーディネータ以外の役職名 コーディネート活動以外の業務を行う時の役職名 12 実績 主な活動実績
例)海洋深層水による藻類の培養技術の開発を育成試験し、アオノリの商品化を実現13 シーズ情報 把握している大学の研究シーズ情報(概要)
例)360度画像合成システムを使った立体ウォークスルーシステムの開発(詳細・個人名は秘密にする(JSTのみ把握))14 ニーズ情報 把握している企業のニーズ情報(概要)
例)地域農産資源を利用した野菜系飲料の開発(詳細・企業名等は秘密にする(JSTのみ把握))15 生年月日 西暦で記入 この「コーディネータ・データベース」では、信頼性を高めるため、登録する内容に対するチェック機能をもうけるなどの工夫をし、各個票についてバラツキがないように均一にするとともにデータを登録するコーディネータについても対象を絞るべきである。また、はじめから全部のコーディネータを網羅するようなことは考えずに、例えば、JSTの事業のみに限定してでも、なるべく早い段階での公開を目指すべきである。さらに、この「コーディネータ・データベース」はアンケート調査等においても強い要望のあった情報の機密性などにも考慮をする必要がある。
なお、「科学技術コーディネータ」・データベース ニーズ調査(事前調査)や「コーディネータ活動支援情報検討会」(第1回)において意見のあった、今まで培ってきたコーディネータとしての経験の蓄積を今後のコーディネータの活動に活かすことやコーディネータの抱負やスタンスなどデータベース上だけでは十分に思いの伝わらないものについては、この「コーディネータ・データベース」と相互補完をするような関係をとりながら、例えば、刊行物やメールマガジンなどの活字として流通をさせる方法について、今後検討をしていく必要がある。
以 上
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