GREETING
総合研究センター長白石 隆
科学技術イノベーションシステムを取り巻く世界環境は大きく変化しております。また、世界の主要国は科学技術イノベーション政策にますます多くの資源を投入しており、科学技術イノベーションがこれからの世界の発展に果たす役割ももっと大きくなっていくと思います。
気候変動、感染症など、グローバル課題への取り組みが重要となる一方、デジタル化の加速とリープフロッグ型発展によって、特にアジアでは新興国が台頭し、世界的にも地域的にも、富と力の分布が急速に変化しております。アジア(インド太平洋)は世界のGDP(名目)、研究開発費の4割近くを占め(2021年IMF予測、2017年米NSF)、ハイインパクト論文数の飛躍的増加に見るように、この地域は科学技術イノベーションの世界的中心の一つとして、世界政治、経済、社会に大きな影響を与えるようになっております。
こうした中、日本は少子高齢化の進展、海外への留学生の減少、科学技術研究競争力の低下、食料・エネルギー・資源制約など、多くの課題に直面しておりますが、同時に、安定した民主主義国家として、また(2050年までを見渡しても)世界有数の経済規模の国として、多極化し複雑化する国際社会の中でいかなる役割を果たすか、期待と注目が集まっております。こうした国際情勢、国内事情を考えれば、日本の科学技術イノベーションシステムの変革(refashioning/transformation)は最優先課題の一つであると言えるでしょう。
では、どう舵取りをすれば良いのか。
JSTではこの問いに応えるべく、成長著しいアジア・太平洋地域について、政治・経済・社会・文化的観点を含めた相互理解の促進、科学技術協力加速の基盤整備のため、アジア・太平洋総合研究センターを2021年4月1日に設立することとしました。本センターは、調査研究、情報発信、交流推進を3本の柱として、アジア・太平洋地域における科学技術分野の連携・協力を拡大・深化し、我が国のイノベーション創出の基盤構築に貢献することを目指します。
アジア・太平洋総合研究センターでは、日本の科学技術イノベーションに向けて、活発で透明性の高い活動と確かな実績を積み重ねてゆく所存であります。日本のみなさまにとっても、アジア・太平洋地域の方々にとっても、センターが常に身近で頼りにされる存在であり続けるよう、みなさまのご理解とご支援をお願い申し上げます。