[量子効果] 量子効果等の物理現象

戦略目標

大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」(PDF:14KB)

平成9年度採択分

異方的超伝導体の量子効果と新電磁波機能発現

研究代表者(所属)
井口 家成(東京工業大学 大学院 理工学研究科 教授)
概要
酸化物高温超伝導体のオーダパラメータ異方性に起因する異方的準粒子トンネリング、ジョセフソントンネリ ングを検証した。またジョセフソンプラズマ発振現象を準粒子注入による励起法によって初めて捉えた。そして発振、検出薄膜素子をオンチップ集積し、新しい 光超伝導回路の可能性を示した。さらに高温超伝導体の量子効果またその発現の様子を、Tc以下でのフラクショナル量子磁束、Tc以上の擬ギャップ領域での 磁束状態を捉えることにより明らかにした。
 

原子層制御量子ナノ構造のコヒーレント量子効果

研究代表者(所属)
小倉 睦郎(産業技術総合研究所 光技術研究部門 主任研究官)
概要
流量変調法を用いたMOCVDおよび原子状水素添加MBEにより、V溝基板上に選択成長されたGaAsや InGaAs量子細線における原子層レベルでの均一性を改善し、コヒーレンス長が2~3μmに拡張した量子細線における1次元電子や1次元エキシトンの特 異な物性を明らかにした。 GaAsやInGaAs量子細線FETにおいては、10~30K付近の比較的高温においても、実空間遷移に基づく負性抵抗効果 を得るとともに量子コンダクタンスステップやAB効果による磁気抵抗の振動を検出した。 量子細線レーザにおいては、ファブリーペロー型において初めて基 底レベルからの室温発振を達成するとともに、GaAsグレーティング基板上の一回の選択成長のみで形成した高密度量子細線を用いた分布帰還型量子細線レー ザにおいて利得結合モード動作を確認した。
 

自己組織化量子閉じ込め構造

研究代表者(所属)
讃井 浩平(上智大学 理工学部 教授)
概要
有機無機複合型物質は自己組織的に量子閉じ込め構造を形成する。本研究では、有機、無機層を置き換えるこ とにより、様々な次元性を有する自己組織化量子閉じ込め構造を構築し、次元性と励起子物性の関係を系統的に調べた。特に2次元構造物質については、電子構 造,励起子・励起子分子物性、非線形光学特性を詳細に研究した。また、新規薄膜作製法の開発や機能性有機・無機半導体超格子の構築にも成功した。更にその 特徴的な励起子を利用した応用として、発光デバイス、テラビット級光信号のシリアル-パラレル変換、高性能のシンチレータなどを実現した。
 

量子固体と非線形光学:新しい光学過程の開拓

研究代表者(所属)
白田 耕藏(電気通信大学 電気通信学部 教授)
概要
固体水素を光学媒質として用いることにより、従来の非線形光学の限界を超える光変換過程が実現できること を示した。固体水素の振動モード(バイブロン)に生成した強結合コヒーレンスにより、マルチモードレーザー光はもとよりインコヒーレントな蛍光ですら高効 率に非線形波長変換可能であることを示した。また、この方法はサブフェムト秒領域の超短光パルス発生にも拡張可能であることを示した。液体水素液滴により 109を越える超高Q値が実現でき、その結果として紫外から近赤外にわたるコヒーレントなラマン系列の発生を実現した。超高感度・分解能のレーザー分光法 を開発し、光学過程の基礎を与える詳細な分光データベースを作製した。
 

サイクル時間域光波制御と単一原子分子現象への応用

研究代表者(所属)
山下 幹雄(北海道大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
極限時間域での新しい光波束技術とその関連物理分野を開拓した。即ち、誘起位相変調による700 THz帯域幅の超広帯域高出力コヒーレント光波発生、空間光位相変調チャープ補償法によるモノサイクル台光波束発生、光電場波束の高感度計測とフィード バック制御、波長多重光波整形とそれを活かしたSi脱離過程の1原子レベル選択制御を実現すると共に、ファイバー中のモノサイクル光波束の非線形伝播現象 を解明した。さらに光STMの研究を行い、光変調下でトンネル電流の変化を分光まで含めて安定に測定するシステムを開発した。加えて、光パルス対励起のパ ルス間隔を変調する仕組みを導入することにより、原子スケールの空間分解能を維持したまま、フェムト秒領域の時間分解能での測定を実現した。
 

平成8年度採択分

微細構造におけるスピン量子物性の開拓

研究代表者(所属)
家 泰弘(東京大学 物性研究所 教授)
概要
量子ドットを埋め込んだアハラノフ・ボーム(AB)リングにおいてファノ干渉効果を観測した。周期変調を 付加した2次元電子系における量子輸送を調べ、電子電子散乱効果、量子ホールスピンギャップの抑制効果、複合フェルミオンのスピン偏極、高次ランダウ準位 におけるストライプ相の安定化など、を明らかにした。Ⅲ-Ⅴ族希薄磁性半導体の低温熱処理効果を発見し、それを利用してこの系における磁場誘起金属非金属 転移の詳細な研究を行った。窒素吸着銅表面に自己形成されるナノ構造を利用して磁性ドット規則配列を作製し、その磁性を明らかにした。
 

金属微細トンネル接合システムの物理と素子応用

研究代表者(所属)
大塚 洋一(筑波大学 物理学系 教授)
概要
ナノスケール伝導の基本原理の一つである単電子トンネル現象を総合的に研究し、以下の成果を得た。微小 ジョセフソン接合では、粒子数の異なる2状態間の量子重ね合わせの観測及びその制御に成功した。散逸による巨視的量子現象の古典化を観測した。さらに、強 磁性微小トンネル接合における磁気クーロン振動及び巨大TMRの発見、金属微粒子中の1電子準位の観測、抵抗結合型SET及び室温動作SETの開発などの 成果も上げた。ランダム行列理論を外場がある場合に適用し新しいユニバーサリティクラスを見出した。
 

ナノ構造磁性半導体の巨大磁気光学機能の創出

研究代表者(所属)
岡 泰夫(東北大学 多元物質科学研究所 教授)
概要
磁性イオンを含むII-VI族半導体のナノ構造を設計作製し、このナノ構造に起因する巨大磁気光学機能を開拓した。直径4~6nmのCd1-xMnxSe、Zn1-xMnxSe量子ドット、20nm幅のCd1-xMnxSe、Zn1-xyCdxMnySe量子細線およびCdTe/Cd1-xMnxTe、Zn1-xMnxTe/ZnTe 系2重量子井戸、多重量子井戸の作製に成功した。量子ドット励起子発光強度の磁場による増大、量子細線中の励起子の1次元量子閉じ込め効果と発光の直線偏 光性、量子井戸におけるスピントンネル、スピン注入やスピン分離など次元性により生じる量子磁気光学機能を創出し、ナノ構造における電子スピン制御技法を 確立した。
 

量子構造を用いた遠赤外光技術の開拓と量子物性の解明

研究代表者(所属)
小宮山 進(東京大学 大学院 総合文化研究科 教授)
概要
単電子トランジスター(SET)素子を用いて、磁場中および零磁場で動作する2種類の遠赤外・サブミリ光 子検出器を開発し、従来型検出器に比べ共に数桁程度優れた感度を実現した。SETの高周波動作により光子検出速度を10倍高めるとともに、走査型遠赤外顕 微鏡を開発して半導体量子素子に応用し、非平衡電子の画像化に成功した。これにより、開発した検出器の応用可能性を拓いた。分数量子ホール電子系の端状態 スピンと核スピン間の相互作用を見いだし、核スピン操作による量子ビットの可能性を拓いた。
 

ナノ物質空間の創製と物理・化学修飾による物性制御

研究代表者(所属)
山中 昭司(広島大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
ナノスケールのすき間をもつ新物質の探索と設計、合成を行い、そのすき間の化学修飾と、光励起により、興 味ある物性を誘導すると共に、機能性材料の開発をめざした。主な研究成果として、バリウム原子を内包するシリコンクラスレート化合物超伝導体の発見、電子 ドープによる層状窒化物β-HfNClのエキゾチック超伝導の発現とその物性研究、低次元半導体の超高速非線形光学応答の研究、物質の周期配列化による第 二高調波生成と機構に関する研究、励起子寿命と応答に関する理論的研究がある。
 

有機/金属界面の分子レベル極微細構造制御と増幅型光センサー

研究代表者(所属)
横山 正明(大阪大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
有機/金属電極界面で起こる新しい現象、光電流増倍現象が、界面近傍のトラップに蓄積する光生成ホールよ る電界集中で引き起こされるトンネル電子注入であることを明らかにし、その空間電荷の蓄積を引き起こす界面トラップの実体が、界面極微細領域の不完全接触 に由来する構造的トラップであることを明らかにした。光電流増倍現象の応用展開として、光電流増倍特性の特徴を生かして、有機電界発光(EL)ダイオード と組み合わせて積層一体化することによって、光の短波長化、赤外光の可視化などが可能な光-光変換素子、光増幅素子、光スイッチング素子、光演算素子な ど、新規な光・電子機能デバイスを実例をもって示した。特に、光演算素子では有機材料ではじめて、3つの基本論理光演算デバイスの構築に成功した。また、 増倍電流機構に学び、新しい電荷注入制御型有機トランジスタを提案し、その動作を確認した。
 

平成7年度採択分

人工ナノ構造の機能探索

研究代表者(所属)
青野 正和(大阪大学 大学院 工学研究科 教授、(独)理化学研究所 主任研究員)
概要
新しいナノスケールの情報処理デバイスの開拓を目指し、電導性分子ワイヤーを任意の位置に任意の長さで作 製する技術、新しい概念で動作する量子電導原子スイッチの作製技術、走査トンネル顕微鏡を用いた振動励起による分子操作技術、4探針走査トンネル顕微鏡な どによるナノスケールの電導特性の計測技術、直線/円偏光計測型の光検出走査トンネル顕微鏡によるナノスケールの軌道/スピン核運動量の計測技術、等々の 開発に成功した。また、分子架橋に通電するとき分子内部に巨大渦電流が流れる可能性が理論的に見出された。
 

STM発光分光法と近接場光学分光法による表面極微細構造の電子物性の解明

研究代表者(所属)
潮田 資勝(東北大学 電気通信研究所 教授)
概要
固体表面に物理吸着したC60分子、化学吸着した孤立酸素原子からのSTM発光の 観測に成功した。また、III-V族超格子半導体中のマイノリティ・ホットキャリアーの緩和・拡散現象を解明した。さらに、孤立した微小誘電体球、金属粒 への光の閉じ込め効果と、それらの配列構造が持つフォトニック結晶の性質を明らかにし、光情報処理技術への応用を示した。
 

超構造分子の創製と有機量子デバイスへの応用

研究代表者(所属)
雀部 博之(千歳科学技術大学 教授)
概要
コアとデンドロンとの組み合わせにより種々の高世代ポリアミン系デンドリマーの一段階構築を確立した。C18-Cytを含むジアセチレンを有する重合性核酸塩基誘導体(DA-Ade、DA-Thy)が気水界面において鋳型のオリゴヌクレオチドd(GT)15、d(GGT)10を 認識して配列して重合することに成功した。Au(111)面をSNOM/STM同時測定より、空間分解能が開口サイズによらずλ/100を切る高い値が得 られた。STM探針によりスピン情報の書き込みが可能な、2.8 nmの超微細線状パターンの形成や単分子スピン整流素子とみなせる、ナノスケールサイズのスピン分極分子の合成に成功した。
 

量子場操作

研究代表者(所属)
清水 明(東京大学 大学院 総合文化研究科 助教授)
概要
主要成果は、ボーズ・アインシュタイン凝縮体のマッハツェンダー干渉計、原子波のコヒーレント増幅、原子 ホログラフィー、多原子相関の測定、量子反射現象の観測、新しい量子暗号通信の方式の提案と実証実験、微細な発光ダイオードからの広帯域微弱サブポアソン 光の発生、量子縮退励起子分子波の生成、半導体励起子共鳴での非線形光学応答の原理の解明、引力相互作用する凝縮体の理論、ミクロ物理学からマクロ物理学 へのつながりの理論、等である。
 

自己組織性分子を用いた新規発光機能材料の設計

研究代表者(所属)
筒井 哲夫(九州大学 総合理工学研究院 教授)
概要
液晶構造を持つガラス薄膜、三重項発光材料としての有機金属化合物、有機//無機層状ペロブスカイト化合 物などの新規発光材料を探索し、分子性発光機能材料の新しい可能性を開拓した。特にイリジウム化合物からの三重項発光を利用して有機ELの発光効率の著し い向上を達成した。ミクロ共振器構造を用いた有機ELデバイスの発光特性制御法を確立し、一方ミクロ共振器構造を用いた発光特性の詳細な解析から有機EL の光取り出し効率の向上の新しい手法を見いだした。
 

配列したミクロ空間での新物質系の創製と物性

研究代表者(所属)
寺崎 治(東北大学 大学院 理学研究科 助教授)
概要
配列ミクロ空間を与える良質な単結晶や多数の新型ゼオライトを合成し、構造解析して利用に供した。極微少 ゼオライト結晶やメソ多孔体の電子顕微鏡による新しい構造解析手法を確立し、初めて3次元構造を解いた。これら多孔体の空隙に種々のクラスターを作り、そ の構造と機能を解明した。ゼオライトの配列したナノ空間にアルカリ金属クラスターを配列させて相関s電子系を作成し、種々の物性測定を行った結果、クラス ターの軌道縮退による強磁性と巨大なスピン軌道相互作用の発現を見いだした。また、絶縁体金属転移による特異な現象を観測した。
 

3次元集積量子構造の形成と知能情報処理への応用

研究代表者(所属)
廣瀬 全孝(広島大学 工学部 教授)
概要
モノシラン(SiH4)の減圧CVDを用いて、SiO2膜上にSi量子ドットを自己組織化形成すると共に平均ドットサイズの制御手法を明らかにした。また、走査プローブ技術を用いて、SiO2表面を反応活性なSi-OH結合で局所的に終端させることによりSi量子ドットの形成位置制御に成功した。自己組織化形成Si量子ドットアレーをフローティングゲートとしてSiO2中 に埋め込んだMOSFETを設計・作製し、ドット当り約1個の電子注入・保持によるメモリー動作を室温で確認した。結合量子ドット系における電子輸送理論 を開発すると共に、量子デバイスによる情報処理の為の新システムアーキテクチャを提案し、室温でのシステム動作をシミュレーションにより確認した。
 

スピン計測-スピンSPMの開発とスピン制御-

研究代表者(所属)
武笠 幸一(北海道大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
物質表面のスピン状態を観測する2種類の走査プローブ顕微鏡を開発した。すなわち試料表面の状態に影響を 与えないGaAs劈開(薄膜)探針を用いたスピン偏極走査型トンネル顕微鏡(SP-STM)でF e ( 1 0 0 ) エピタキシャル薄膜のスピン偏極の観測および、非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を用いて反強磁性NiO単結晶劈開面について原子分解能で交換相互作 用の観測(EFM)に成功した。またナノ構造物質における新奇なスピン現象を予測出来た。

 

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