【総括全文ダウンロード】(PDF形式:429KB)
上記は、大学等の研究成果が実用化されるまでにどのようなステップを踏んでいくかについて、本事業の支援内容と関連づけて簡単なフロー図に表したものである。 ここでは、本事業の支援により得られた効果をそれぞれの段階に応じて次のように定めた。
上記は、大学等の研究成果が実用化されるまでにどのようなステップを踏んでいくかについて、本事業の支援内容と関連づけて簡単なフロー図に表したものである。 ここでは、本事業の支援により得られた効果をそれぞれの段階に応じて次のように定めた。
<支援により得られた効果・成果> | |
---|---|
◆情報・データ補強 特許補強、ターゲット市場の絞込み、データ補完 |
支援効果A |
◆事業採択(企業無) 大学等のみで公的資金制度に応募し採択 |
支援効果B |
◆企業とのマッチング 連携合意、公的資金応募検討、簡単なサンプル評価 |
支援効果C |
◆事業採択(企業含) 大学等と企業共同で公的資金制度に応募し採択 |
支援効果D |
◆企業による開発 企業主体の開発を開始(ライセンス・共同研究契約等) |
支援効果E |
◆製品化 最終製品または部品・材料等を製品化し販売開始 |
支援効果F |
<支援内容> |
---|
①目利きレポート、特許調査、市場調査による技術評価分析 |
②データ補完予算措置(300万円程度) |
③新技術説明会等による企業探索支援、企業紹介、仲介 |
④大学等のみで応募する公的資金制度の紹介・応募支援 |
⑤企業が開発開始判断をくだすまでの助言・調整等 |
⑥大学等と企業共同で応募する公的資金制度の紹介・応募支援 |
⑦別のターゲット(市場・製品)への展開を検討 |
⑧部品や材料等の中間製品を利用した展開を検討する企業の探索 |
これらの支援効果が、平成19〜21年度に本事業へ実際に申請のあった課題に対してどれだけ得られたかについて、その実績(課題件数)が上図に合わせて示されている。
すなわち、この期間に申請のあった課題592件を評価分析した結果、有望な課題164件が支援課題として選定され、これらの課題の特許や市場等の詳細な調査を行って
目利きレポートを作成した。これらの課題については、担当の技術移転プランナーが研究者を訪問して相談・アドバイスを実施した他、必要な課題122件にはデータ
追加取得の費用を提供して実験データを補完してもらった。
その結果、164件のうち160件の課題は、有望なデータが得られた、または特許の補正や外国出願につながったり、市場やアプリケーションのターゲットを絞り込むことができたり等、実用化に向けて着実なステップアップが見られた(支援効果A)。
さらに、支援効果Aを受け、大学等のみの研究開発事業(公的資金)に24件の応募を支援し、うち17件が採択された(支援効果B)。また、120件については、技術移転
プランナーによる企業紹介や新技術説明会の開催等を実施し、うち98件はマッチングが成立している(うち49件は企業と連名での申請)(支援効果C)。
企業を含めた研究開発体制で研究開発事業(公的資金)には43件応募支援し、うち採択が確認されたのが10件(支援効果D)、さらに企業が本格的に評価を開始した
課題や共同研究やライセンスの契約に至った課題等、企業独自の資金で開発が開始された課題は38件である(支援効果E)。そのうち、平成22年1月時点で製品化が
確認されているのは7件となっている(支援効果F)。
本事業では、当初より支援効果D・Eを目指して事業推進してきたが、事業開始からわずか2年余りの間の結果であることを考えると、支援効果Dはやや少ないものの、
着実に成果が得られてきたと言える。支援効果DやEに至らないまでも、支援課題に選定されたほとんどの課題については支援効果A・B・Cといったステップアップが
進行中であり、今後さらなる成果が期待できる。
一方、本事業は従来に比類のない事業スキームで初の試みとして実施された。特に注目すべきは、
①公募事業でありながら、研究資金提供以外の支援=実用化に向けた調査・助言・企業探索等に重点を置いている点
②全ての申請課題について特許調査・技術調査を行って、結果的に支援しない課題に対しても調査結果をフィードバックする点
である。これらの効用は、上述の実績の他、支援しなかった課題も含めて6割以上の利用者が調査結果に満足の意を表していることや、"大学の中だけでは得がたい
多角的な評価"が得られる、"研究者に事業化を意識させる良い制度である"、助言を受け"勉強になった"という意見等、利用者の声(アンケート結果)にも表れている。
つまり、本事業に申請した大学等の研究者・産学連携従事者・産学連携担当部署職員の方々の実用化マインドやスキルの向上にも貢献したと言える。実用化の経験の
少ない多くの研究者等にとって、本事業の申請・支援により得られた知見は大きく、今後の研究や産学連携活動にいかされるに違いない。研究開発に関する直接的な
成果ではない、このような副次的な効果も本事業の効果として見逃せない。
支援効果α : 大学等の研究者、産学連携従事者、産学連携担当部署職員等の実用化マインド・スキルが向上した
以上、本事業の実施結果について、実用化までのステップと本事業の支援効果という形で簡単にまとめた。各課題について具体的にどのように支援し、どのような
結果が得られたかについては各事例のページをご参照のこと。