資料4

開発課題名「生体内反応の定量化をめざしたオプトQCM装置の開発」

機器開発タイプ(領域特定型)
【応用領域】機能材料・デバイスのマイクロからナノレベルに
至る構造と組成・状態のシームレス分析計測

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  岡畑 惠雄【東京工業大学大学院 生命理工学研究科 教授】
サブリーダー :  伊藤 敦 【(株)アルバック 技術開発部 部長】
中核機関 :  東京工業大学
参画機関 :  (株)アルバック
T.開発の概要
細胞表層での認識、細胞内での転写・翻訳などのさまざまな生体内反応を光反射型水晶発振子マイクロバランス(オプトQCM)法を用いて定量的に解析し、医療現場、創薬産業、食品産業などで活用できるバイオ計測装置を開発する。オプトQCMは、QCM金基板表面の反射率測定(ΔR)から吸着物質の質量を、ネットワークアナライザ駆動型QCMの振動数変化(ΔF)から吸着物質の水和量変化を、エネルギー散逸値変化(ΔD)から粘弾性(コンフォメーション)変化を同時に検出できる装置である。本方法を利用すれば、多くの分子が時空間的に関与する複雑な生体内反応を質量変化やコンフォメーション変化として高感度に定量化でき、医療現場や創薬産業、食品産業などで広範囲に活用できる。
U.事後評価における評価項目
(1)ネットワークアナライザ駆動型オプトQCM装置の開発
 水中計測用水晶振動子のカット角を34°〜36°の間で試行し、35°50'の水晶振動子において水中でのノイズ±5Hz以下、ドリフト5Hz/hを達成した。ΔD値についてはネットワークアナライザボードの改良、スキャン領域を発振領域近傍(±2,000Hz)に狭め、ノイズを±1Hzに低減できた。反射率については、TiO2/Ti表面を用いた光干渉式膜厚測定法で±0.01%の反射率(質量変化で±1ng/cm2)を追跡できた。試作機の改良に伴い、最終試作機でΔR、ΔF、ΔDを同時計測可能とした。
(2)フロー型オプトQCM装置の開発
  中間評価後にバッチ式とフロー式の両方で試作機の作製を試みたが、フロー式ではノイズが大きく、フロー式ユニットに光干渉式膜厚測定ユニットを結合できなかった等の問題が発生したため、開発はバッチ式に一元化した。
(3)オプトQCM装置の生体反応定量測定における有用性の実証
開発した装置を用い、脂質二分子膜はほとんど水和していない弾性膜であること、タンパク質は比較的硬いこと、DNA鎖は水和量も多く、柔らかい分子であること等を明らかにした。これら基本的な生体分子の粘弾性測定ができたことから、さらにDNA鎖上、糖鎖上での酵素反応の追跡、DNA鎖の柔らかさにより酵素反応が受ける影響等につき検討した。
V.評 価
生体高分子相互作用測定装置として多用されてきた水晶発振子マイクロバランス(QCM)装置の問題点を克服すべく、従来の共鳴周波数シフトだけでなく、半値幅変化も測定し、ならびに吸着分子層の膜厚の光学測定値を併用して、質量だけでなく、水和量や粘弾性も同時測定しようとする装置の開発である。本開発での最終試作機では、当初計画していなかった光干渉方式の導入によって予定の仕様を満たすものとして完成し、バイオ分野への応用として、この装置ならではの新しい知見をもたらすことに成功した。今後は本装置で得られるパラメータの理論的解釈をさらに精査し、基礎データを蓄積することで、装置の製品化、普及が図られることを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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