資料4

開発課題名「多人数教育用その場観察MUST−SEM
(Mobile Use See-Through SEM)の開発」

プロトタイプ実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  橋本 良夫【新日本電工(株)生産事業部 技術部 部長】
サブリーダー :  井上 雅彦【摂南大学工学部 教授】
中核機関 :  新日本電工(株)
参画機関 :  摂南大学
大阪産業大学
(株)アプコ
T.開発の概要
微細加工、ナノ加工の製造現場でのオンマシン評価用チャンバーレス超小型SEMをプロトタイプとして、小学校でも学習利用でき、野外での活用も可能なバッテリー駆動で、無線データ転送を行い、多人数が携帯型端末によって同時に観察できる「多人数教育用その場観察SEM(走査型電子顕微鏡)」を開発する。透明強化樹脂を極力採用したSee-Through 構造にして、理科教育推進を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)電子顕微鏡のSee-Through 化
 理科教育用に内部構造が見えるよう、鏡筒の透明化、透明電極の多用を計画したが、協力企業探しやコスト面及び安全面から、鏡筒の一部のみの透明化に留まった。なお、試料室の装備と装置全体の軽量化については実現させた。
(2)電子顕微鏡のモバイル化及びワイヤレス化
 装置全体を「コントローラ(表示機付)」・「鏡筒(ターボポンプ付)」・「バッテリー・粗引きポンプ・他」の3個に分割し、各々アタッシュケースに収納して(各々は8Kg以下)、可搬できるようにした。使用電源は、24V、2.5Ahのリチウムイオンバッテリーで、1本のバッテリーで約1時間の運転を可能にした。本電源では2本のバッテリーを搭載して使用可能であり、当初目的の教育用としては、十分な能力をもつ。さらに、長時間の連続使用を可能とするために、商用交流電源用のアダプターも製作した。加えて、無線画像転送機能も装備し、子機も実現させた。
(3)電子顕微鏡の簡易ツール化
電子顕微鏡の非専門家である教員でも操作できるように、シンプルなユーザーインターフェースを持たせた。具体的には、電源スイッチ1個の操作のみとし、表示はLED数字表示であり、調整は4個で(対物レンズ電圧・画像のコントラスト・画像の輝度・スキャンスピードの切替)いずれも画像を見ながら容易に行える。
(4)倍率及び分解能
最小分解能は1.7μm、観察倍率は、電気的に20-1000倍、機械的に3倍連続ズーム観察可能を実現した。分解能は目標の1μmに満たなかったが、観察に耐える像を得ることができた。
(5)その他
本機器は児童が触れることも想定し、安全対策のため高電圧ケーブルと鏡筒との結線部の改造により、感電防止を徹底させた。また、得られたデータのPC転送、プロジェクタ直結による画像の外部出力を実現させた。
V.評 価
「仕上げ面粗さその場計測SEM」を基礎に、主として学校教育現場で理科教育用に教員が利用可能なツールとすることを目的とした開発である。当初、鏡筒全体の透明化を企図したが、ユーザーのコメント等を重視して一部の透明化に止め、教育用目的として重要な「計測機器の中身を見せる」ための主要部の透明化は実現された。また、分解能に関しては、目標の1μmには僅かに及ばなかったものの、目的とする教育用の観察に耐える像は得られている。理科教育用教材をターゲットしたことは、将来の人材育成という観点から有用と考えられ、教材として、より広く普及させるためには低コスト化が求められるがこの点はさらに開発チームの努力を期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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